第四十五話 殿下のお願い
ノーナさんと話をした翌朝。
よく晴れた日。まだ寒いが、これから気温は上がってくるだろう。
教室に入ると、わたしはノーナさんたちが来るのを待った。
ノーナさんが来ると、わたしは、
「おはようございます」
と言って、いつものように微笑みながら頭を下げた。
いつもは、気難しそうな表情をしていて、全くわたしを無視しているのだが、今日は。
「おはよう」
と返してくれた。
笑ってくれればいいのに、と思うのだけど、それは望み過ぎというものだろう。
取り巻きの人たちもやって来たので、いつもの通りあいさつをした。
ノーナさんと同じく、気難しい表情をしているが、こちらも、
「おはよう」
と返してくれた。
わたしは、朝からいい気持ちになった。
その翌日。
いつものようにわたしは、殿下と昼ご飯を一緒に食べていた。
その後は、おしゃべりの時間。
いつものように楽しんでいると、殿下は。
「そう言えば、セリフィーヌさんは、ラフォンラーヌ公爵家でお父様に内政の助言をしていたそうだね」
と言った。
わたしは、殿下に初めて会った時、そういう話を少しした。
ただ、細かいことは話をしていない。
「そうです。十歳になる頃からしていました」
「それはすごい。幼い頃からその才能を発揮していたなんて……。前は、助言をしていたという話ししかしていなかったから」
「いえ、それほどたいしたことはしていません」
わたしの助言があったとしても、それを実行するのはお父様だった。
そして、お父様の指示に従って、一生懸命働いた皆さん。
お父様を中心とした皆さんの功績と称えられるべきものだろう。
「でも公爵家の人々はみな、『領地が豊かになったのは、セリフィーヌ様のおかげです』と言っているそうだ」
「それはわたしのことを褒めすぎです。父を中心に皆さんが一生懸命努力したから、豊かになってきたのです」
「そうは言っても、やはりあなたがいたら、豊かになったんだと思う。そういう、自分以外の人を立て、自分の成果を誇ることがないところ、わたしは素敵だと思う」
「殿下……。なんか恥ずかしいです」
「わたしは、あなたのそういう……」
後の言葉が小さい声になり、うまく聞き取ることができなかった。
「す」とか「き」という言葉が使われていた気がする。
つなげると「すき」という言葉になるが、殿下はわたしのことを「すき」と言いたかったのだろうか?
そうだといいんだけど。
わたしがただそのように思い込んでいるだけなんだろうか?
「好き」とはっきり言われたら、それだけで心が沸騰してしまうような気がする。
しかし、殿下はすぐに切り替えた。
そういうことを言ったとは思えないぐらいの切り替え方。
先程の言葉は、やっぱりわたしの思い違いだったのだろうか?
うーん、ちょっと寂しい。
「ラフォンラーヌ公爵家の令嬢の名声は、この王国にも聞こえていたんだ。そうしたあなたが婚約破棄をされ、追放され、行方不明になってしまった。あなたの名声を聞いていた人たちは、みなあなたに同情している」
と殿下は言った。
今わたしがグッドランド公爵家の養女になっていることは、ほとんどの人が知らない。
「そこにあなたが傷ついてこの地へ来た。まず心身に受けてしまった傷を治してもらうのが先決だと思っていた。ある程度傷が癒えてきたら、あなたの名声を聞いていたわたしは、あなたと内政についての話をしたいと思っていた。今までは話しづらかったので、話はしてこなかったんだ」
「そうだったんですか……」
「話をするだけではなく、あなたにお願いをしたいことがある」
殿下は真剣な表情で言う。
わたしは殿下の次の言葉を待った。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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