第四十三話 続くノーナさんとの対決
「こういうふうに、わたしは殿下の婚約者になる為に一生懸命だったのに、あなたの登場でそれがすべて無駄になりつつある。わたしだけでなく、他の女性も寄せ付けなかった殿下があなたをお誘いしているとは……。どうしても信じられない」
ノーナさんの話は、まだまだ続きそうだった。
それほどわたしに対する敵意があるのだろう。
「それで、今日わたしをここに呼んだのは、改めて、『殿下のお誘いは受けないでほしい』と言う為ですか?」
本題に入ってもらう為、わたしはそう言った。
ただ自分で言っていて思ったのだが、もしそれを言うだけだったら、取り巻きも一緒にいていいはずだ。
その方が集団で威圧をすることができる。
いないということは、少しわたしに対する態度が柔らかくなるのかな。
そんな気持ちは少しだけあった。
しかし……。
「そう思う気持ちは今でも強い。あなたには、殿下と一緒にいる時間を一秒たりとも作ってほしくない。それが本音よ」
わたしは少しガックリした。
それはそうだ。
そんなに簡単に気持ちは変わるわけはないだろう。
ただ今日のノーナさんは、いつもよりは聞く耳を持っているところがあったり、言い方自体も少しではあるが、わたしに対する態度が柔らかくなっている。
変化があることを信じたい。
「ただ最近、殿下の表情が明るくなってきていると思っているの。これはあなたとの出会いが影響している。あなたと毎日学校でおしゃべりをしているのが、いい影響を与えていると思っている。悔しいけど、そこは認めざるをえないわ」
「ありがとうございます」
「別に御礼を言われる為に言ったんじゃないわ。ちょっと認めた発言をしたくらいで頭に乗らないでほしい」
わたしは苦笑いをせざるをえない。
「認めたくはないけど、もうここまで来てしまうと、あなたの方が殿下の心をつかみつつあると思わざるをえなくなってきている。今のところ、あなたが殿下の婚約者の一番手ね」
そう言うと、ノーナさんは、少し寂しそうな表情をした。
殿下の心はどうなんだろう。
もう出会ってから二か月以上になるが、好意は増してきていると思っている。
しかし、それ以上となると……。
お互いが恋というところに到達するということは、とても難しい気がしている。
一つ目の理由は、ノーナさんの言っている通り、殿下がもともと女性に対して奥手のような気がすること。
フレナリック殿下のように、次々と女性と交際し、婚約者がいるのに浮気をするような男性は困る。
わたしは、それで苦労した。
こういう苦労は二度としたくない。
しかし、奥手の男性もそれはそれで困る気がする。
もう少し、わたしのことを誘惑してもいい気がするのだけど。
あら、わたしたら、なに恥ずかしいことを言っているのだろう。
でもわたしの方も人のことは言えない。
二つ目の理由は、わたしの方も、殿下と親しくなっていくことを躊躇しているところ。
殿下のことはますます好きになっている。
それと同時に、これ以上親しくなっていいものだろうか、という気持ちも大きくなっていた。
恋人どうしにはなりたい。でもフレナリック殿下のように、心変わりをして、捨てられてしまったら……。
殿下と楽しく話をしている時も、そのことが心に浮かんでくることがある。
ノーナさんは、恋人になり、婚約者になったとしても、捨てられてしまう可能性があるということを思ったことはないのだろうか?
恋をする人は、本来、そういうことを思う必要はないと思うし、そう思ってはいけないのだろうけど。
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