第三十九話 婚約者の嫉妬 (フレナリックサイド)
二人との仲が順調に進んでいたと思っていた時。
わたしはいつも通り、マドリンを自分の寝室に呼んでいた。
二人だけの世界から戻った後、わたしたちは、別れの口づけをしていた。
「殿下、もう少しこのままでいたい」
「わたしもだ」
最近、わたしはますますマドリンの魅力に染まっていた。
もう少しマドリンと一緒の時間を過ごしたいと思っていたのだが……。
いつもより逢瀬の時間が長くなっていたようだ。
もうイレーナが来る時間になっていた。この寝室にイレーナが入ってきていて、
「殿下、これはどういうことです……」
と怒りながら言った。
それから始まったイレーナの嫉妬。その嵐はすさまじかった。
イレーナは、わたしに従順だと思っていた。そういうところも好きだったのだが……。
イレーナから、わたしの心がさらに離れるきっかけになったと思う。
この日は、なんとかイレーナをなだめることができた。
最後は、二人だけの世界に入ることもできた。
しかし、こう嫉妬心が強いと、これからが思いやられる。
それにしても彼女を婚約者としてきちんと待遇しているのに、なぜ浮気ぐらいであれほど怒らなければならないのだろう。
こんなことがもし続くのであれば、イレーナの婚約を破棄し、マドリンと婚約することも検討しなければならない。
ただそれは、より一層貴族たちの反発を呼ぶかもしれない。
ただでさえ、わたしの人気はまた下がり始めている。
今回の婚約破棄と新しい婚約についての反発は予想以上に強い。
これ以上の反発は避けたいところだ。
イレーナが嫉妬をしなければ、今のままの関係でいくべきだな。
わたしはそう思った。
しかし、わたしの思い通りにはなかなかいかない。
それから数日後。
またマドリンとの逢瀬が長くなり、イレーナが寝室に来てしまった。
二度目ということで、イレーナの怒りがもっと大きくなっていた。
そして、
「不満も不満です。一度ならず二度も浮気されたのですから」
と怒りを爆発させてきた。
わたしの方もイレーナの嫉妬に、だんだん腹が立ってきていた。
その時にこの言葉だ。もう我慢ができない。
俺はイレーナも好きなんだ。これからもマドリンと浮気をさせてもらう。イレーナに言われる筋合いはない!
わたしは、
「わたしにたてつくと、きみも姉と同じことになるぞ」
とイレーナに言ってやった。
胸のすく言葉だった。
そうだ。婚約破棄など、わたしが決断すればいつでもできるのだ。
イレーナはその言葉を聞いて、
「殿下、申し訳ありません。わたしが言い過ぎていました」
と頭を下げてきた。
さすがに婚約破棄はされたくないのだろう。おとなしくなっている。
わかればいいんだ。わかれば。
イレーナとの婚約を破棄したいとは、現時点では思っていない。
マドリンに気持ちが傾いているとはいうものの、イレーナのことが好きな気持ちは、まだまだ残っている。
嫉妬をしなければ、わたしだって怒ることはないのだ。
彼女だって、それは理解をしていると思う。
今日は厳しいことを言って、彼女の嫉妬を抑制しようとした。
しかし、三度目、四度目、五度目になった時、彼女は嫉妬をしないでいることができるのであろうか?
難しいかもしれない。
いくら今日のように抑制しようとしても、マドリンに対する対抗心は抑えきれないようだ。
まあ嫉妬が続くようだったら、その時は本気で婚約破棄を検討するしかないだろう。
わたしはそう思った。
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