第三十八話 婚約破棄と新しい婚約者、そして新しい恋人 (フレナリックサイド)
セリフィーヌの継母の話は続く。
「これからのわたしは、殿下にもっと尽くしていきます。わたしのことをこれからもよろしくお願いします。そして、わたしとラフォンラーヌ公爵家は、二人の為に、もっと尽くしていきます。わたしたちのことをこれからもよろしくお願いします」
と言って頭を下げた。
彼女の言うことを聞いている内に、わたしは少し嫌な気分になった。
セリフィーヌがかわいそうということではない。
セリフィーヌの継母のことだ。
ついさっきまでは、好意さえもっていた。
しかし、今日の言動を聞いていると。自分本位の度を超し過ぎているような気がして、その好意はしだいにしぼんでいくような気がする。
「これからのわたしは、殿下にもっと尽くしていきます。わたしのことをこれからもよろしくお願いします」
という言葉。
いい言葉のように思えるが、今までの言動からすると、殿下に尽くすので、その分わたしのことをもっと大切にしてほしい、と言う言葉が意味として含まれているように思う。
今までは、イレーナを婚約者にしたい、というところで利害が一致していた。
そういうところで、好意を持っていたところもある。
しかし、その目標は、今達成しようとしている。
これからは共通の目標がなくなっていく。
些細な感情の行き違いが、対立の芽生えになりそうだ。
イレーナともそう。
婚約者がいて、浮気をしていたから盛り上がっていたという面もある。
今は好きでたまらないが、婚約者となったら、その熱は冷めていくかもしれない。
まあ、とにかく今は明日のことに集中するしかないだろう。
「じゃあ、明日のパーティーの打ち合わせを始めよう」
わたしはそう言った。
翌日。
わたしは、セリフィーヌとの婚約を破棄し、追放した。
セリフィーヌは、つらそうで涙を流していたが、それについてはなんとも思わなかった。
追放した後のことも、全く思いやることはなかった。
パーティーでイレーナを婚約者として紹介した時は、一瞬、静寂が訪れて、困惑したわたしだが、その後、大きな拍手が会場を包んだのでホッとした。
まあ、これで対外的なお披露目も終わったので、誰がどう思っていても関係はない。
それから一週間ほどは、イレーナと仲睦まじい日々をおくった。幸せな時間だった。
これなら結婚生活に入っても大丈夫だと思った。
しかし……。
わたしは、ファッツストーン公爵家令嬢のマドリンを紹介された。
ゴージャスな女性だった。イレーナよりもゴージャスだった。
わたしは一目惚れをした。それだけ魅力的だった。
この女性と婚約したくなるほどだった。
話を聞くと、もともと王妃の候補としてあげられていたそうだが、家格のところで婚約者になれなかったとのことだ。
フィーリングも合うし、好みのタイプだ。わたしはなんでこの人と今まで出会うことができなかったんだろう……。
それほどの思いをするほどの出会いだった。
わたしは、心が沸騰してきて、
「明日から、わたしの部屋に来てくれ」
と言った。
マドリンは恥ずかしそうに、
「こんなわたしで良ければ」
と言った。
それからのわたしと彼女は逢瀬を続けた。
キスをし、それから先の世界へも入っていく。
イレーナが来るまでのわずかな時間だったが、それは楽しい時だった。
それと同時に、イレーナへの愛は弱まり始める。
ただ婚約者というところは維持しようと思っていた。嫌いになったわけではないからだ。
イレーナは婚約者として、マドリンは遊びとして。
そういうすみわけをしていたつもりだった。
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