第三十七話 前日の打ち合わせ (フィレナリックサイド)
イレーナとセリフィーヌの継母と明日についての打ち合わせが始まった。
まずはパーティーの前についての打ち合わせ。
「パーティーの前に婚約破棄をセリフィーヌに伝える。その後、あなたたちに部屋に入ってもらって、イレーナと婚約したこともセリフィーヌに伝えることにしている。これが今まで話したことをまとめだ」
「ここで婚約破棄が成立し、わたしの婚約が成立するのですね」
「やっとここまで来たわね」
二人は手を取り合っている。
「その後は、パーティーに向かうわけだ」
わたしが、パーティーでのことを打ち合わせしようとすると、
「その前に、お話したいことがあります」
とセリフィーヌの継母が言ってきた。
「お話したいこととは?」
もうパーティー前の打ち合わせは終わったものと思っていたが。
「セリフィーヌのことです」
「セリフィーヌは婚約破棄をするのだが、それ以外に何かしたいことがあるのか?」
「それだけだと、ラフォンラーヌ公爵家の中で揉める可能性があります。現在、セリフィーヌはラフォンラーヌ公爵家の当主です。その状態でイレーナが婚約すると、『当主のセリフィーヌさまの婚約が破棄されたのに、イレーナさまを婚約者にするとは』と言ってセリフィーヌ側の勢力が我々に対し、攻撃をしかけてこないとも限りません」
「あなたは以前、わたしたちの力でなんとかします、と言っていたと思うが。なんとかできなくなりそうなのか?」
「そうではありません。なんとかしようと思っています。しかし、念の為です。殿下のお力をお貸し願いたいと思っています」
わたしの力が結局必要だと言っている。この間の自信ありげな話は何だったのだ。
少し腹が立ってくる。
「面倒な話だな。で。わたしにいったい何をしろと言うのだね」
「セリフィーヌをラフォンラーヌ公爵家から追放し、イレーナを当主にしてほしいのです」
これはまた面倒なことを。
「そうすれば、ラフォンリーヌ公爵家は、内紛を抱えることもなくなり、安泰に向かうと思います。どうか我々の願い、お聞き届けくださいませんか。このことについて、権限があるのは殿下と国王陛下しかおられません。その殿下にお願い申し上げているのです」
「そうは言っても、ただ婚約破棄しただけでは、追放するのは無理だと思うが」
「それは簡単です。セリフィーヌは、婚約破棄をされても納得しないでしょう。そこで、殿下の言うことに逆らったということで、追放してしまえばいいのです」
「さすがに強引すぎないか?」
「いいえ。ラフォンラーヌ公爵家の内紛を避けるにはそれが一番です。それに、ラフォンラーヌ公爵家の内紛が防げれば、王国全体の安定につながります」
言っていることはもっともらしい。でも結局、自分の利益の為に動いているだけの女性だ。
ラフォンラーヌ公爵家の安定を願っているのも、家そのものではなくて、自分の生活基盤を安定させたいだけのことだ。
それにしても、セリフィーヌに全く同情しないというのは、すごいと思う。
いくら母親が違う娘だからと言っても、ここまで痛めつけるようなことをするだろうか?
とはいうものの、わたしも特にセリフィーヌには同情していない。
むしろ、窮屈さから解放されていい気分になれそうだ。
「あなたの進言の通りにすることにしよう。セリフィーヌがわたしに逆らった時点で追放することにする」
わたしがそう言うと、セリフィーヌの継母は、
「ありがとうございます。これでラフォンラーヌ公爵家は安泰です。王国も安泰です」
と言って、冷たく笑った。
「面白い」
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