第三十話 わたしを褒めてくれる友達
「でもわたし、殿下にふさわしい女性ではまだまだない気がする。そういう女性になれるかどうかもまだ自信がない。それに、もし殿下と相思相愛になれたとしても、他に魅力的な女性がいたら、その女性の方に行ってしまうかもしれないし……」
わたしはクラディナさんにそう言った。
「殿下にふさわしい女性になれるかどうかわからないという気持ち。それはわからなくはないわ。でもセリフィーヌさん、今でも魅力的だし、殿下にふさわしい女性だと思う。それでいて、さらに毎日、殿下にふさわしい女性になろうと努力している。そういうところもわたしは好きだし、尊敬してるのよ」
「褒めてくれるのはうれしいけど、自信がなかなかなくって……」
「自信をもっと持った方がいいわ」
「うん。それはそうだと思っている」
「まあ、セリフィーヌさんは毎日努力しているから、今よりもっと魅力的な女性になれる。殿下にふさわしい素敵な女性になれるわ」
「ありがとう」
クラディナさんの言葉で、わたしも少し自信が持てた気がした。
クラディナさんは紅茶を飲んだ後、
「セリフィーヌさんは殿下と相思相愛になって、恋人どうしになっても浮気されるかもしれないと思っているのね」
と言った。
わたしは、
「今から言ってもしょうがないことだけど、そこも少し悩んでいるところ。殿下はあれだけ素敵な方だから、その内、わたしよりもっと素敵な方が現れて、その方に殿下を奪われてしまうんじゃないか、って思ったりするの。お付き合いもしていないのに、なにを悩んでいるんだろうと思うんだけど。我ながら、恥ずかしい気持ちになる」
と言った。
親しくない人だと、
「何、この人」
と言われるかもしれないことだが、クラディナさんなら理解してくれると思う。
「セリフィーヌさんは、以前、付き合っていた人に浮気されたと言っていた。さっき、『殿下のことを恋という意味で好きなのかどうかは自分でもわかっていないんだ……』と言っていたけど、そういうこともあって、恋というところまで進めないのかもしれない」
この王国では、王室の限られた人とラフォンラーヌ公爵家の人々ぐらいしか、わたしがリクサーヌ王国でどういう仕打ちを受けてきたかということは知らない。
学校でも、グッドランド公爵家の養女であることくらいしか知られていない。
養女であろうと嫡子であろうと、その家の子供であるかどうかが重要になっている。
それ以外のことは特に気にされていない。
わたしは、リクサーヌ王国での仕打ちについて、他の人に知られたとしても別に構わないと思っていた。
わたしはもうフローナドリーム王国のグッドランド公爵家の人間であって、リクサーヌ王国の人間ではないからだ。
ただ、この仕打ちは、心の傷となっていて、思い出す度につらい気持ちになるので、自分から話すことはしない。
ただクラディナさんとは仲良くなってきていたので、
「わたし、男性と付き合って、浮気されて、別れざるをえなかったことがあるの」
という話をした。
クラディナさんならこの心の痛みを理解してくれそうな気がしたからだ。
婚約破棄ではなく、「別れ」という言葉を使ったのだが、わたしが苦しんでいるというところは伝わったと思う。
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