第二十六話 殿下の心づかい
一月下旬。
まだまだ寒い日が続いている。
わたしはいつものように、殿下と一緒におしゃべりをしていた。
「セリフィーヌさん、一ついいかな」
殿下は改まった様子で言う。
「なんでしょうか?」
「あなたから、『困ったことがあっても、よほどのことがない限りは、自分の力でなんとかしょうと思っています』と言われていたので、言わなかったのだが、ここで一回話をさせてくれ。クラスの人たちとはうまくやっているのかな? イジメとかはない?」
わたしは、殿下とこういう話はしたくなかったし、なんといっても、殿下が今言ったように、自分の力で解決していきたかった。
「普通にやっています。これからも、困ったことがあっても、よほどのことがない限りは、自分の力でなんとかしょうと思っています」
わたしは力強く言った。
「それならいいんだけど」
「心配してくださってありがとうございます」
「いや。心配するのは当然のことだから」
クラディナさんと友達になり、おしゃべりをするようになったわたし。
しばらくの間は二人だけでおしゃべりをしていたが、やがてクラディナさんの紹介で、クラディナさん以外の人とも、あいさつやおしゃべりができるようになってきた。
まだまだその数は少ないが、クラスでの孤立状態からは脱却しつつあると言えると思う。
うれしいことだ。
まだまだノーナさんのグループを中心に、わたしのことを無視している人は多いが、それはもうこちらも慣れてきていると言っていい。
「これも言いたくはなかったんだけど、あなたについての嫌な噂も流れていて……。わたしはもちろん普段からあなたとこうして話をしたりしているから、でたらめなことだとすぐ理解できるんだけど、こういうことを信じちゃう人がいるからなあ……。腹立たしいし、なんといっても、あなたがもしかすると傷ついているんじゃないかと思って、心配になっていたんだ」
こちらの方はなかなかおさまる気配がない。
「ご心配ありがとうございます。でもわたしは平気です。なにしろわたしは、それと比べ物にならないくらいの経験をしていますから」
「セリフィーヌさんは強い。しっかりしているね。わたしだったら心が折れてしまうかもしれない。尊敬するよ」
殿下は感動しているようだ。
少し恥ずかしい気持ちになる。
「いえ、殿下が思われているほど強い人間ではありません。ただ、厳しい経験をしてきたので、少し忍耐力がついたところはあるということはいえるのかもしれません」
「その若さで忍耐力を持っているのはすごいことだ。そういうところもいいと思う」
「殿下はわたしのことを買いかぶりすぎです」
「そんなことはない」
殿下はそう言った後、小声で。
「わたしはだんだんあなたが……」
と言った。
最後の方は聞こえなかった。
恥ずかしそうな表情をしている。
なんと言ったのだろう。
わたしに対する好意の言葉だったらいいのだけど……。
「それにしても、こんな素敵な人なのに、なぜ嫌な噂をする人がいるのだろう?」
殿下は、そういう人がいること自体、信じられないようだ。
素敵な人と言ってもらえるのはうれしい。
「とにかくわたしは、いつでもあなたの力になりたいと思っている。もちろんあなたは、つらいことがあっても自分の力で乗り越えていこうとするだろう。その力は十分あると思っている。でもあなたがもし救けを求めてくるのなら、いつでも救けたいと思っている。わたしはあなたの為だったら、全力を尽くすことができる。わたしがそばにいることをいつも忘れないでほしい」
と力強く言った。
「ありがとうございます」
わたしは頭を下げた。
殿下のことがどんどん好きになっていく。
「面白い」
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