第二十二話 冷たい雰囲気
殿下との昼食。そしてその後のおしゃべり。
楽しい時間だった。
ただ楽しいだけではない。フィーリングが合っていると思う。
殿下の方はどう思っているかはわからない。
でも殿下の方も多分わたしに好意を持ってくれていると思う。
そうでなければ、わたしにその素敵な微笑みを向けてくれたりはしないだろう。
殿下は明日からも一緒に昼食をとろうと言ってくれた。
わたしにとって、何よりもうれしい言葉だ。
殿下と毎日接することができるようになったので、これからの学校生活は楽しく過ごせそうだと思っていたのだが……。
放課後。
教室で、わたしが家に帰ろうと準備をしていると、
「ちょっといいかしら」
と声をかけてくる女性がいる。
「なんでしょう?」
その女性は、数人の取り巻きだろうと思われる人達とともに近づいてくる。
冷たい雰囲気。
「あなた、セリフィーヌさんと言ったわよね」
「そうですが」
「わたしはノーナ。名門リントノン公爵家の令嬢よ」
お高くとまった顔立ちをしていて、ゴ-ジャスな服装をしている。さすがは名門貴族の令嬢というところ。
「この学校に入ってきたばかりだというのに、ちょっと生意気なんじゃありませんか? 昼休みに殿下をお食事に誘うなんて!」
ノーナさんがそう言うと、他の女生徒も、
「ノーナさまは、ゆくゆくは殿下の婚約者になるお方。あなたのような人が近づける相手ではないわ。殿下に近づかないで!」
と言ってくる。
なるほど、言いがかりをつけに来たってわけだ。
わたしが殿下と昼食を一緒に食べ、楽しそうにおしゃべりをしたのが気に入らないのだろう。
それにしても、このノーナさんという人は、殿下の婚約者になりたいと思っているとは。
こういう人がこの学校にはまだまだいそうだ。
「食事は殿下に誘われたのです。殿下は楽しそうにしておられました」
「何を言っているのです。あなたなどと一緒にいて楽しいわけがないじゃないですか。でたらめなことを言わないで!」
「話はこれだけでしょうか?」
「これだけって?」
「それじゃ、わたしは帰らせてもらいます」
わたしは教室から出ようとする。
「待ちなさい。まだ話は終わっていない」
ノーナさんがわたしに言う。
「何の話があるのでしょうか?」
「殿下とは一緒に食事をしないでほしい。殿下はわたしと婚約して、結婚する予定なんですから、関係のないあなたには、殿下といっさい接してほしくないの」
「そうよそうよ。殿下に接しないでほしいわ」
取り巻きの女生徒たちも言う。
「わたしは殿下がお誘いしてくださる限り、殿下と一緒に行動をさせていただきます」
ノーナさんは殿下の婚約者を目指していると言った。
しかし、わたしだって、まだ恋というところまでは到達しているとはいえないけれど、殿下のことが好きになってきている。
もっとおしゃべりをしたい。仲良くなっていきたい。
それなのに、なぜ接しないでくれというのだろう。
しばしの間の沈黙。
やがて、
「あなたがそう言うなら、それ相応の対応をさせてもらうわ」
とノーナさんは、冷たい笑いを浮かべながら言った。
「面白い」
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