第十五話 浮気されたわたし (イレーナサイド)
婚約者になったわたし。
得意満面だった。
王宮では王室以外の人には頭を下げる必要はなくなった。
今までは、執事どころか王室付きの侍女にまでも頭を下なければならず、苦痛だった。
それがなくなったのは気分がいい。
殿下との仲も良好。
婚約の前から高価なプレゼントをしてくれているし、何でも言うことを聞いてくれる。
このまま結婚して、この王国を思うままに動かしてやるんだ!
そういう野望まで持つようになってきた。
しかし……。
婚約成立から十日ほどした時。
いつものように殿下の寝室に入ろうとした。
するとドアが開いている。
どうしてドアが開いているんだろう?
と思ったが、構わずに入ろうとした。
するとそこには……。
別の女性と唇を重ね合う殿下がそこにいた。
貴族令嬢の一人のようだ。くやしいが、かなりの美人で、服装もゴージャス。
わたしは、唇を震わせながら、
「殿下、これはどういうことです……」
と言った。
「何って? あいさつだよ。あいさつ。愛のあいさつ」
全くもって普通の対応。
「唇を重ねることがあいさつなんでしょうか? しかも愛のあいさつだと言っているし」
わたしは腹が立ってきている。
「愛のあいさつだよ。わたしはこの人を好きになったのだ」
「好きになったんですって? わたしという婚約者が目の前にいながら、どうして浮気するんでしょうか?」
「婚約したから安心して他の人を好きになれるんだよ。なんでそんなこともわからないのかね」
わたしはめまいがしてきた。
もともと女性についての噂が絶えなかった殿下。
捨てられた女性も多いという。
わたしが婚約者になれたのも、殿下のそういう性格のおかげというところはあると思う。
もしこういう浮気なところがなかったら、婚約者は異母姉のままだったかもしれない。
しかし、わたしが婚約者になった以上は、わたし以外の人に心を動かすことを許すわけにはいかない。
「ここを出ていきなさい」
わたしは、その女性に言った。
「なぜ出て行かなくてはならないのですか。わたしは殿下に呼ばれたのです」
「わたしが出ていきなさいと言っているのです」
「殿下の命令以外は聞きません。殿下はわたしのこと『好き』だと言ってくれたんです。わたしも殿下のことが好きです」
胸を張って言うその女性。
「『好き』ですって! よくもわたしの前でそういうことが言えますわね」
わたしの怒りは増してくる。
「殿下、本当にそういうことを言ったのですか?」
「言ったとも、わたしは彼女のことが好きだから『好き』だと言ったんだ。それの何が良くないというのだね」
「わたし以外の人に好意を寄せること自体です。それ自体が良くないと言っているのです。殿下はわたしのことだけ愛してくださればいいんです。今すぐこの女性をこの部屋から追い出してください」
わたしは泣きそうな声で言った。
「仕方ないなあ……」
そう言うと殿下は、
「申し訳ない」
といいながら、その女性の手をとる。
女性は殿下にエスコ-トをされながら、寝室の外に出て行く。
そして、殿下は彼女に二言三言、話をした後、寝室に戻ってきた。
「面白い」
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