04 新たな決意
「……少々やりすぎたかな」
「そんなことないです! お兄様のなさる事に無駄はありません!」
炎の波は盗賊だけでなく村の家々も巻き込み消滅させてしまっていた。
少々どころか明らかにやりすぎなのだが、村人の命には比べるべくもなかった。
「き、キミ…!」
「あぁ、おねーさん。ご覧のように盗賊は片づけたよ。もう心配ない」
サーラが駆け寄ってきた。
その表情には警戒の色が浮かんでいる。
伝説級の使い手【無駄使い】の事はサーラも当然知っている。
その【使い手】が眼前の少年だとは信じがたいが……しかしあの超烈破団をあっという間に殲滅してしまっては認めるしかない。
「まずは礼を言おう。助かった。ありがとう」
「あぁ、気にしないでくれ。あんなやつらのせいで無駄に命を散らすことはない」
「というか……あの炎! なんなんだ!? キミの能力は【無駄使い】じゃないのか!?」
「そうだよ。俺の【無駄使い】は無駄を操る能力。相手の能力を『無駄にする』だけじゃない。自分の能力を『無駄に使う』ことで威力を一気に高める事もできるのさ」
「そんなことが……いや、それだけじゃ炎の説明が……!」
「それは私の【使い手】能力です。おねーさま」
「え!?」
「彼女はミルルル。【使い手】能力は【お使い】だよ」
「お、【お使い】!? 聞いた事が無い能力だな」
「そうだろうね。世界中で多分ミルルルしか使えないレア能力だからな」
「はい!」
「この力は俺が【お使い】だ、と言う事で発動する。効果は指定した相手の【使い手】能力を借りてくるというものだ」
「はっ……それが先ほどの……!」
「そう、相手にキスする事で借り受けて、俺にキスすることで貸り渡すのさ」
「では、あの炎は……私の【使い手】能力!」
「ああ。威力こそ俺の【無駄使い】で増強したが、元はおねーさんの力だよ。おねーさん、いい炎を持ってるよ」
「そう……か」
能力を上手く使えない事がコンプレックスだったが
自分には確かに炎の力が宿っているのだ。
サーラは少しだけ、己の力に自信を持つことができた。
「申し遅れた。私はサーラだ」
「俺はキャズマ」
「キャズマ。改めて礼を言おう。超烈破団を倒してくれて本当にありがとう」
「構わないさ。俺の目的のついでだ」
「目的?」
「うん。とある【使い手】を探して旅をしている。この村には手掛かりを求めて立ち寄っただけだ。もう行くとしよう」
「そうか。キミ達に何か礼をしたいのだが……」
「いや、言葉だけで充分だ。それ以上は時間の無駄だ」
「分かった。気を付けてな。探し人が見つかるといいな。」
「あぁ。ありがとう」
キャズマの探し人。
それは【無駄使い】に匹敵する伝説級の【使い手】。
その名も【魔法使い】。
「こんな所で【氷使い】に会うなんてな。ヤツは近いぞ。待っていろ【魔法使い】!」
「行きましょう! お兄様!」
キャズマの旅は続く。
~完~