03 終わりの炎
「三日三晩ね……そんな無駄に付き合うつもりはないな」
「おぉ、いいぜ! ここからどうするんだ? もっと面白くしろよ!」
「面倒だ。さっさと終わりにしてやるよ盗賊ども」
「はぁ? まさかもう諦めるとかなしだぞ?」
「諦める必要があるのか? ミルルル! 来い!」
「はい! お呼びですかお兄様!」
「!?」
少年が呼びかけると、その背後から女の子が顔を出した。
まだ幼さの残る表情の、愛くるしい少女である。
「なんだ!? ガキが増えたぞ!」
「あ、あのガキ、今どこから?」
少年の隙をうかがっていた盗賊達だ。
もし少年のそばに誰かがいたのなら、気が付かないはずはない。
「あぁ、考えるだけ無駄だよ。これはそういう能力なんだ。俺が呼んだ。だから来た」
「はい! 来ました!」
「さてミルルル、【お使い】だ。あのおねーさんから【炎使い】の力を借りてこい」
「……【お使い】内容を確認……了解ですお兄様!」
少年の言葉に頷くと、少女は走り出した。
「何だか知らねぇが、逃がすかよ!」
ヒュードラは少女にも氷の弾を放つ。
しかしその氷弾はミルルルの体をすり抜けていった。
「な、なんだぁ!?」
「それも無駄だよ。俺の【お使い】を実行中のミルルルには一切の攻撃が通用しないのさ」
「おねーさん!!」
「え? 何? なにーーーー?」
ミルルルは走る勢いのまま、サーラに飛びついた。
そして。
「おねーさん、失礼します!」
「!」
サーラの唇にキスをした。
「!!!!!!?」
「ふぅ……お兄様! バッチリです!」
「よし、戻ってこい」
「なんだ? ガキが一瞬で移動して……ど、どういう状況だ?」
ヒュードラも盗賊達も混乱している。
「お、女の子にキスされた……私の初ちゅー……!」
サーラはもっと混乱している。
だが次の行動にはもっと驚いた。
少年の元に戻ったミルルルは、今度は少年の唇にキスをしたのだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
「な、なんなのこいつら!? 兄妹じゃねぇのかよ! 最近のガキはみんなこうなの!? 俺たちが古いの!?」
「……よし、これで【お使い】は完了だ。ご苦労だった」
「はい、お兄様!」
「おいヒュードラ」
「……あぁ?」
「終わりだよ」
少年が両腕を突き出す。
すると左右の手から激しい炎の波が飛び出した。
圧倒的な火力と圧倒的な熱量が盗賊達に向かって疾る。
「なっ……!!」
「ひいっ! ボス!」
反射的に氷の壁を作るヒュードラだったが、その程度で防げるような炎ではなかった。
「そん……な…………!!」
「さすがにちょっと暑いな」
「そうですね、お兄様!」
炎の波はヒュードラも、盗賊達も、あっという間に焼き尽くしてしまった。