02 氷の散弾
【無駄使い】!
それは『無駄』を操る【使い手】能力!!
対象の力を『無駄』にする、つまり『役立たず』にする力である!!!!
「このガキが【無駄使い】!? あの無敵の……最強の……幻の【使い手】能力……!!」
「いや、それこそハッタリだろ?」
「だけどガンスの大剣を止めたぜ!?」
さわぐ盗賊達など見向きもせずに、刀をもった少年はサーラに話しかけた。
「おねーさん、大丈夫?」
「あ、あぁ……大丈夫だ」
「そうか、良かった」
「へぇ、おもしれーじゃん?」
「ああっ! ボス!」
「なに!?」
見ると、盗賊達が一斉に道を開ける。
そこに白いマントに身を包んだ男が姿を現した。
「お前がボスだと……!? あの【大剣使い】がボスじゃなかったのか……!」
「あぁ、そうだよ騎士様。まぁアンタにゃ用はないからそこで寝てな。俺が興味あるのはそこのガキだよ!」
ボスと呼ばれた男は少年に向かって左腕を伸ばした。
広げた手のひらが青白く輝き、そこから何かが飛び出す。
「!」
それは鋭い刃のような氷の柱だった。
氷柱は投げられた槍のごとく、少年に向かって飛んでいく。
しかし氷柱は少年の体に触れる直前に消滅してしまった。
「おぉぉ、俺の技が消されちまったぞ! ガキ、お前ホントに【無駄使い】なのか!?」
「……同じ事を二度言うのは無駄だよ。そういうアンタは【氷使い】だな」
「その通り。俺はヒュードラ! 【氷使い】さ!」
「あーらら、ボス名乗っちゃったよ。テンションあがってんなぁ。」
「あの人、珍しい【使い手】を見ると戦ってみたくなっちゃうからな。困ったもんだぜ」
「ガキ! お前の名前を聞いておこうか」
「いや、名乗っても無駄だよ」
「ははは! いいねその余裕! 無敵だ最強だと言われる伝説級の【無駄使い】、この俺が倒してやるよ!」
ヒュードラの左手が再び青白く輝く。
手のひらには小さな氷の塊が複数生成されていた。それを一気に放つ。
「いくぜ! 氷塊散弾!」
「……」
「ははは! すげぇな! こいつも効かねぇか! だがお前も防ぐ事しかできねぇだろ?」
ヒュードラは途切れることなく氷の散弾を生成し、飛ばし続けた。
「ガキ、お前の能力は1対1バトルの防御には最強かもしれねぇが、他はどうだ?」
「……」
「【使い手】能力といっても無限じゃねぇ。お前が能力切れを起こした所で、俺の部下たちが一斉にお前を襲うってわけだ!」
「へへへ、そういうこと!」
周囲の盗賊達はそれぞれの武器を構え、少年の隙をうかがっていた。
確かに【使い手】能力はずっと発動していられるわけではない。
能力が切れた時に盗賊達に一斉に攻撃されたらどうしようもない。
「ちなみに俺の能力切れなら心配いらないぜ? この氷の散弾は燃費がいい技でな。その気になりゃ三日三晩でも撃てるからよ!」