01 その名は【無駄使い】
とある国に【使い手】と呼ばれる特殊能力を持つ者達がいた。
その能力を極めたものは、各々がある一つのモノを自在に操ったという。
【剣使い】なら剣を、【弓使い】なら弓を。そして…。
「俺は【棒使い】のマサ!」
「俺は【斧使い】のジョー!」
「俺は【槍使い】のトニー!」
「そして俺様が【大剣使い】のガンス様よ!」
「うわぁぁぁぁ出たぁ! "超烈破団"だ!」
超烈破団、それは【使い手】で構成された盗賊集団である。
得意の武器を持つ盗賊達の戦闘力は非常に高く、【使い手】能力を持たない常人にはなす術がなかった。
「そこまでだ! ならず者どもめ!」
「あぁぁぁん?」
「私は『紅蓮の刃』所属、【炎使い】の騎士サーラ! 貴様らの悪行、見過ごすわけにはいかん!」
しかしこの日、襲われた村には偶然一人の騎士が居合わせた。
サーラは【炎使い】で編成された王国騎士団『紅蓮の刃』に所属する若き女騎士である。
「へぇぇ炎の騎士様ってかい? しかしたった一人で俺らと戦うつもりかよ?」
「人数など関係ない! 我が剣技を受けてみよ!」
とはいえ、もちろんこの数を相手にできるわけがない。それならば。
サーラは盗賊のボスと思われる【大剣使い】に切りかかった。
しかしその剣は簡単に弾かれてしまう。
「ははははぁ! 騎士様よォ! もしアンタが熟練の剣士だとしてもフツーの剣技じゃ【大剣使い】の俺様に敵うワケねぇだろ!」
「そうそう! アンタ【炎使い】なんだろ? 炎でこいよ!」
「オラオラ、どうしたぁ?」
「くっ!」
「けっ、ハッタリかよ? ひょっとしてまだ【使い手】能力を使いこなせていないのかぁ?」
サーラは【炎使い】としての力を持っているはずだ。
しかし何故か上手く使う事ができないでいたのだ。
そのため、実際は騎士見習いの身であった。
「まぁどっちでもいいや。お前うぜぇからさ、さっさと死ねや!」
「!!」
【大剣使い】は自慢の得物を構えると、その重量をサーラに叩きつけた。
はずだった。
「無駄だよ」
「な、なにぃぃ!?」
どこから現れたのか。
少年が一人、サーラと【大剣使い】ガンスの間に立っていた。
そしてその右手に持つ刀でガンスの大剣を止めたのだ。
「げえっ、【大剣使い】の剣を止めた!?」
「じゃあこのガキも【使い手】かよ! 【刀使い】か!?」
「ふ、ふざけんな! 俺は【大剣使い】レベル99だぞ! それを止めた!? ガキ、お前が俺より【使い手】レベルが高いとでも……」
「【刀使い】? ふん、違うな。俺は【無駄使い】だよ」