表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔も恋していいですか?  作者: しみしみ
3/12

3話

「きっと、怒られるね」


 夜遅く、まだ家には帰らずルークスと話し込む私に、彼……いや、彼女が言う。


「怒られるどころの騒ぎじゃないと思う」

「そうだろうね」

「みんな私が拐われたって思うかも」

「ほんとに拐っちゃおうか?」


 えっ、と思い彼女に目を向ける。

 コップをじっと見つめたあと、こちらに向ける彼女の目は、本気のようにもみえた。


「……ほんとに……いいんですか」

「もちろん」

「きっと本当にみんなが私を探しますよ」

「わかってるよ」

「もしかしたら、ルークスさん殺されちゃうかも」

「それでもいいよ」

「……なんで、ですか」

「きっとこの関係がばれたら、私達は会えなくなる」

「そうですね」

「それならいっそ、関係が途切れるまで一緒にいたいじゃない」


 私、この人を好きになってよかった。

 冗談のようで、本気を感じさせる声に私は、甘えたくなってしまった。

 どうせ家に戻っても部屋にこもるだけ。

 そんな退屈な日々ならば、いっそ。


「さて、準備はいいかな」

「えっ?」


 一瞬なんのことかわからなかったけど、すぐに察した。

 私を、拐う気なんだな。


 彼女は大きなリュックサックを背負って、焚き火を消す。


「直にここはばれるから、いこう」

「……はいっ」


 差し伸べられた手を握り、暗がりの中へと進んでいく。



 ざく、ざくと小枝や落ち葉を踏んで、時に隆起した木の根につまずきながら、彼女の温かい手から流れる安心感を頼りに進んでいく。


「大丈夫? ここらで休もう」

「また火を起こすんですか」

「ううん、それじゃばれちゃうから、ほら」


 彼女が指差す先には、小さな洞穴があった。


「私、探知魔法が得意なの、だからあの穴の中にはなにもいないのがわかる」

「道に迷わなかったのも、そのお陰ですか?」

「そのとーりだよ、さぁ、こっち」


 くっと引っ張られた腕。

 足音はざくざく、からこつこつへと変わる。


「見張りは任せて、サキは休んでいいよ」

「それじゃあルーさんが倒れちゃうよ」

「ルー……さん?」

「あっ、あのすみません、馴れ馴れしかったですか」

「ううん、嬉しい」

「……よかったです」


 ぽっと芽生えた恋の芽が、少し育ったような。

 あなたとの幸せを浴びて、さ。



「あ、おはよう」


 気づいたら、私は寝てしまっていたみたいだった。


「ご、ごめんなさい、私……」

「いいのいいの、私寝ないのに慣れっこだから」


 それでも罪悪感は拭えなかった。


 洞穴をでて、また歩きだす。

 青く晴れた空が綺麗で、木々の隙間から漏れる光が気持ちいい。


「これから行くところだけどさ、私のお家に招待しようと思うんだ」

「は、はい」

「その角、ばれたら困っちゃうだろうからこれ」


 そういって渡されたのは手編みっぽいバンダナ。

 幸い私の角は小さいからこれで隠せるな。


「このバンダナ、ルーさんが編んだんですか?」

「うん、君が寝てる間にね」

「……えっ!?」

「びっくりした? 私器用なんだ」

「器用どころの話ではなくないですか……!」

「そうかな?」


 今までとは違う、少年のようなにししっと笑う笑顔。

 こんな表情ももってるんだ。

 素敵だ。

 それでもって好きだ。

 この人に、出会えてよかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ