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ちょっと疲れた現代の人々へ

作者:

「辛いよ苦しいよ、死にたいよ……」

 目の前で泣く彼女は苦しいんだろう、辛いんだろう。死を渇望するくらい追い詰められているのだろう。世界を呪いたくなるくらい全てに憎しみを抱いて、どうしようもなくて泣き叫ぶのだろう。慰めてほしいんじゃなくて、誰かに話を聞いてほしいんだろう。うんうん、そうだねって優しく頷いてほしいんだろう。分かったような口を聞くのではなく、アドバイスをしてほしいのではなく、ただただ同意してほしいのだろう。そうして孤独を紛らわせたいのだろう。

 分かる。分かるよその気持ち。痛いほどに分かる。

 苦しいよね、辛いよね。泣きたいよね。死んだ方が楽なのかなって、思うよね。自分なんていない方が世界にとって良いことだと分かってても、幸せになりたくて生きていたいんだよね。どうしようもなく、生きていたいんだよね。

 だけどそれを、周りが許さないんだよね。

 分かる。分かるよ。いくら世界が広くて美しいと知っていても、自分にとっては周りが世界だからね。美しさを知っていたとしても、その美しさですら自分を責めているような気がして、苦しいよね。

 そんな軽い気持ちで、死にたいって言っているわけじゃないんだよね。

 世界にはもっと苦しんでる人がいる。私たち、日本人はとても恵まれていて、飢えることはないし社会福祉だってちゃんとしてるから、親がいなくても生きていかれるから。私たちは幸せなんだよね、きっと。

 でもそうじゃない。そうじゃないんだよね。そんなことは分かってるんだよね。分かってるけど、自分のことで精一杯なんだよね。だって苦しいことは苦しいもの。辛いことは辛いもの。

 何も知らない大人が「死にたいなんて言うな。もっと不幸な人が世界にどれだけいると思ってるんだ」って責めてくるんだよね。それでだんだん追い詰められて、本当に死んでしまうんだよね。心が壊れて、何も出来なくなっちゃう。


 私には分かる。分かるんだよ、その気持ち。

 だから私は、望まれていなくても貴方を励ますね。だって私がそうしたいから。

「大丈夫大丈夫。大丈夫だよ。あなたはよく頑張ってるよ。すごいね、えらいね!!本当にすごいね。でもね、ちょっとだけ、サボってみようか。逃げていいんだよ、目を逸らしていいんだよ。そんなに頑張らなくていいんだよ。休んで休んで、休んで、休んでる合間にほんのちょっぴり頑張ってみない?そんなあなたを、誰も責めないよ。大丈夫、大丈夫。私はいつでもあなたの味方だから。大丈夫だよ」


 私がそう言って彼女を撫でると、彼女はさらに勢いを増して泣き叫んだ。

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