表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
7歳、婚約篇
9/88

強制的なお茶会は、否応無しにやってくる。


抱かれたまま室内に入ると、待ち構えていた侍女の方々に引き渡される。

そして、あれよあれよとお風呂に入れられ、新しいドレスと薄い化粧を施されると、先にお茶を飲んでいたロセ様の前に戻された。


新しいドレスは私の瞳の色と同じ綺麗なスカイブルー。因みに何枚か用意されていた中からロセ様自ら選んだ物だった。


「やあ、フィリア。綺麗にして貰ったね。とっても可愛いよ。」


優雅にお茶を飲みながらそう褒めて下さるロセ様に、ありがとうごさいます、と礼をする。

相手は完璧超人である英雄様だ。この程度の褒め言葉、息をするより簡単に吐くのだろう。

本気にしていてはキリがない。


だからモテるんだろうなぁ、と他人事の様にぼんやりと思った。


おいで、と促されてソファーの対面に着席すると、程なく温かい紅茶が運ばれて来た。

紅茶のサーブが終わると侍女の方が頭を下げて退席していき、パタン、と言う小さな音と共に部屋の中にはロセ様と私の2人だけになる。


少し緊張しながら喉を潤しながら盗み見ると、ニコニコと笑うロセ様の視線とぶつかった。


(本当に……何でこうなったの……)


今日何度目か分からない問いを頭の中で思い浮かべる。そんな私の様子が楽しかったのか、ロセ様はクスクス笑いながらお茶を飲んでいた。


(さて……どうすべきかしら?)


少し悩んだがやはりこんな機会は滅多に来ない。聞きたい事はこの際聞いておくべきだろう、と思い、意を決して口を開いた。


「……あの、伺ってもよろしいですか?」

「ん?どうぞ?」


何だろう、と次を促す言葉を受けて、慎重に言葉を選んで質問したつもりだった。


「あの方とは、恋人どうしではないのですか?」

「え?」


私の質問が予想外過ぎたのか、その言葉にきょとん、とした表情を向けるロセ様を見て、しまった!と思う。これでは私が違う意味でロセ様の事が気になっている様ではないか。


「あ、いえ!ちがうのです!そう言う意味ではなく……! 」


慌てて否定するが、一瞬呆けた後何故か嬉しそうに笑うロセ様を見て、一気に顔が赤くなる。


「ちがうのです!だからそうではなくて……!」


一生懸命弁解するが、すればする程更に恥ずかしさを煽る。

真っ赤になってしまった私を見て、ロセ様がクスクスと笑いながら分かった分かった、と宥めて下さった。本当に違うのに…と拗ねたように呟けば、分かってるよ、と笑いながら質問に答えた。


「恋人かどうか、だっけ?違うよ、彼女じゃないい。」


きっぱりと告げるロセ様に意外だ、と思いながら視線を向けると、僅かに苦笑しながら紅茶を口に含んだ。


「普段はあんなにあからさまじゃないんだけどね、リリーも。」


今日はちょっと、色々と分かり易すぎたね、と笑うロセ様の顔に、少し申し訳無い気分になる。

擬態に騙されるなんてとんでもない。寧ろ擬態に気付きつつ操縦しているのだ。

騙されていたらそこまで、なんて上から目線で考える間でも無い。


「……まあ、色々と事情があってね。余りやりたくもないお守りをさせられてる。生徒会で一緒に働いているのも本当だし、その点は多少助かっては居るんだけどね……。如何せん彼女、割とトラブル体質なんだ。だからプラスとマイナスを比べると、マイナスの方が少し多いかな?って感じ。」

「それなのに、何故お茶会によばれたのですか?」


私は1番の疑問を口にする。今日の態度云々よりも、態々学園から同行させて参加させた時点で、恋人なのかと思ったのだ。


「それねぇ……フィリアは気付いてたか分からないけど、実は今回のお茶会には生徒会メンバー全員が招待してあったんだよ。最初に行きたいって懇願してきたのは彼女だし、あそこまで派手に立ち回るとは思わなかったから放って置いたんだけどね。今考えると辞めておけば良かったよ。」


そうすればフィリアのドレスも汚れなかったのにね、と拗ねたように言われると、反応に困ってしまう。結局大丈夫です、と言うに留め話を進める。


「生徒会メンバー、とおっしゃると、男性の方もおられたのでしょうか……?私ぜんぜん気付きませんでした。」

「まあ、他のメンバーは僕と一緒に会場に行ったからね。考え事してたフィリアは気付かなかったと思うよ?」


アレだけ近くに行っても気付かない位だし、とからかうように言われて思わず頬が赤くなる。


あれは出来れば忘れて欲しい。あの会場に居た、全員に。いや、ホント切実に。


「だから、フィリアが気にする様な事は何も無いんだ。……彼女だなんて、フィリアに思われたくない。信じて?」


ね?と首を傾げながら僅かに甘さを含んだ声で言われて、気を付けている筈なのにドキリと心臓が跳ねる。

こういう所、勘違いしそうになるから早々に何とかして欲しい。只の知り合いにそこまで必死に弁解しなくても良いのに。


「わ……わかりました。こちらこそ申し訳ありません、ロセ様のプライベートなお話にたちいってしまいましたわ。」


そう、素直に詫びると、ロセ様から複雑そうな視線を向けられる。

フィリアは手強いね、なんて言いながら、苦笑いを浮かべたロセ様に、思わず自分の首を傾げた。



「ねえフィリア?今日のお茶会の目的は、何だったと思う?」


暫く和やかな雰囲気でお茶を飲み進めた後、ふと思い付いたかのように口にしたロセ様に、伺う様な視線を向ける。

正直に言って良いのか迷うが、多分誤魔化しても無駄だろう。


「……ロセ様の婚約者選び、ですか?」


思った事を口にすれば、正解、と笑いながらロセ様が話の続きを促す。


「正直私がよばれた理由がよく分かりませんが……ほかのお姉さま方は覚えている限りで侯爵家以上の家柄の方ばかりでした。リリーシアさまは分かりませんが、家格のもんだいで言えば、あそこにいた方がたは全員クリアしていたかと。」

「あの短時間でよく見てたね。リリーはまあ、お茶会が嫌で抵抗した僕の我儘の一環だから、置いておいて……確かにあそこに居た御令嬢方は王族と婚姻を結んでも問題ない、と判断された家柄の子ばかりだよ。……でも、ねえフィリア?」


そこで言葉を切って、ロセ様はにやり、と何処か人の悪そうな笑みを浮かべる。

こんな顔で、笑う方だったろうか?



「……本当に君が呼ばれた理由が理解出来ない?」



そう言って見詰めてくるロセ様を、思わず息を止めて見詰め返した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ