表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
7歳、婚約篇
8/88

転生令嬢、王子との関係を考察する。


カツンカツン、と廊下に靴の音が響く。



抱き上げられまま、一般区画を通り抜け更に執務棟も通り過ぎて行く。てっきりお父様の執務室まで送って下さると思っていたのに寄る気配も無く、黙ったまま歩き続けるロセフィン様に思わず困惑の表情を浮かべた。


何度か声を掛けては居るがその度にうん、としか返事をして下さらない為、何処まで行くのかも分からない。


このままでは王族区画に入ってしまうし、いい加減降ろして欲しい。


少し強めにロセフィン様!と声を掛けると、ぴたりと足を止めたロセフィン様が、私と視線を合わせた。

抱き上げられている為思った以上に顔の距離が近く、少し顔が赤くなる。


「ロセ。」

「……は?」

「前に会った時にロセでいいよ、って言ったでしょ。覚えてない?」


少し面白くない、と言わんばかりの顔で見られながらそんな事言われ、こちらの方が混乱する。

それに前と言われても3年も前の話だ。覚えている方が稀では無いのか。


「……そうはおっしゃられましても、ロセフィン様は王族ですし、私の方がだいぶ年下です。おそれおおすぎてそんな風にはよべませんわ。」


少し考えながらそう答えると、ますます面白くない、と言わんばかりに顔を顰める。


「気にしなくて良いよ。僕とフィリアの仲だろう?」


ね?と首を傾げて言われても、こちらは困惑するばかりだ。

大体僕とフィリアの仲、と言われても、一体どんな仲だと言うのか。


「ロセフィンさ」

「ロセ。」

「いえ……あの」

「ロセ、だよフィリア。」


多少食い気味で言われ、思わずため息が漏れる。

どうして久々に会った子供にそこまで拘るのか、全く理解が出来ない。


「簡単だろう?言ってごらん?」


顔を覗き込まれながらそう言うと、さらに距離が近くなる。

余りに近くになる綺麗な顔に更に顔が赤くなった。ホントにこれ以上は勘弁して欲しい。


「……ロセ、様。」


辛うじて視線を逸らしながらそう呟けば、僅かに不満そうにしながら、それでもロセ様が頷く。


「まあ、許容範囲、かな?」


そう言いながらロセ様は、にっこり笑った。

満足そうなその顔に、苦笑が漏れる。


「で?何だいフィリア。」


抱き上げられたままそう問い掛けられて、色々と気になるがまずこれだけは先に言わなければならない。


「……とりあえず降ろしてくださ」

「却下。後は?」


意気込んで言ったのに、どうやら答えは最初から決まっていたらしい。再び食い気味で却下され、もうこれ以上は無駄だと悟り、そこに対する抗議は諦める。


「……では、どこに向かっているのかおしえてくださいませんか?私お父さまがお迎えにきてくださる予定になっていたのです。中庭にいない上に執務室に寄らないとなると、心配させてしまいます。」


至極真っ当な抗議をすれば、ロセ様はふむ、と頷いて近くに居た騎士に声を掛ける。


「ああ、悪いがリンドノート公の所に行って、ご令嬢を私が預かっている事を伝えて来て貰えないか?帰りに私の部屋に寄る様に、と。」


承知しました!と敬礼して去って行った騎士が見えなくなると、ロセ様は私に向き直り、にっこり笑って言葉を続ける。


「と、言う事でフィリアは何も心配しなくて良いよ。着替えも用意してあげるから、僕の部屋でお茶でも飲もう?」


ロセ様はそう笑いながら、そのまま再び足を進め始めた。



降ろしてくれる気も無い以上、これ以上の抗議は無駄なのだろう。まあ王子にそう言われてしまえば、断る事など出来る筈も無いのだか。


思わずため息を吐くと、今度はそれが面白かったのかロセ様がクスクスと笑った。


「それ、フィリアの癖なの?ため息。今日も何度も吐いてたでしょ。」

「……予想外のことがおおすぎましたので、つい。」


素直にそう答えれば、そうだねぇ、と言う呑気な返事が帰ってくる。

お前が言うな、とは思うが、流石に本人に今この状態が1番の予想外です、とは言えない。




「まあ、お茶会が始まる前から突き飛ばされてドレスを汚されるなんて誰も思わないよねぇ。僕も予想外だったよ。」

「……は?」


続いて聞こえてきた言葉に、一瞬意味が分からず固まる。今、この王子は何と言った?


固まる私が可笑しかったのか、イタズラが成功した様な顔で笑うロセ様は更に言葉を紡ぐ。


「いや、だって舐め過ぎだよね。幾ら年下とは言え公爵令嬢に対してあんな騒ぎを城内で起こして知られないと思う方がどうかしてる。気安い態度も生徒会の仲間ではあるし、学園の中だから許して居たけれど城内でまでやられるとは思わなかったしね。と言うか、僕フィリアが来た時からずっと見てたからね?フィリアの事を2度も突き飛ばして、僕の前でまであんな視線を向けて。アレで隠せてると思っているのなら、余程侮られてるのかね、僕は。」


一気に話すロセ様に、口を挟む隙もない。

寧ろ笑顔が崩れないのが恐ろしい。


「……もしかして、怒ってらっしゃいます?」

「うん、もしかしなくても怒ってらっしゃいますよ?」


にこにことした顔を崩さないままそう言われ、何ともコメントに困る。


「大丈夫、フィリアに対して怒ってる訳じゃないから。僕は今日君に会うのを楽しみにしてたんだ。」


それを邪魔されちゃったから、ちょっと、ね。と言いながら笑顔を向けられ、少しリリーシアに同情的な気分にすらなる。ああ、この人は、怒らせてはいけないタイプの人だ。


「ああ、でもそう言われれば、フィリアにも少し怒ってるんだよ?」

「え?」


ふと、思い出したかの様な声で言われ、思わず間抜けな声が出た。


「だって君、ドレスが汚れたのをこれ幸いと僕とのお茶会抜けようとしたでしょ。僕だって別に行きたくてあの場に行ってる訳じゃ無いのに、1番帰って欲しくない人が1抜けしようとするんだからさ。」

「……えっと、それは申し訳ございませんでした……?」


確かに抜けようとした事は事実ではあるのだか、何か色々と爆弾発言されている気がするのは気の所為なんだろうか?突っ込んだら負けな気がして、取り敢えずの謝罪を言葉にする。


語尾が疑問形なのは許して欲しい。

本当に謝らなきゃいけないのか分からない時の謝罪なんて、こんなものだ。



そんな、私の様子を楽しそうに見ていたロセ様は、だからね、と言葉を続ける。


「罰として僕の部屋で一緒にお茶会をしよう?3年前のあの時のように。きっと、楽しいよ?」


にこりと、笑いながら言われれば、もう否とは言えなかった。




その前に着替えだね、と笑うロセ様に抱き上げられたまま、私はロセ様の部屋へと連れて行かれれるのだった。






皆様お忘れかも知れませんが

フィリア7歳、ロセ16歳です。


ロセ様犯罪です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ