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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
16歳、隣国篇
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転生令嬢、9年振りの帰国準備を始める



あの謁見の日から3日。

ロセ様が帰国する際に一緒にクロージアへと戻る事となった私は、住み慣れた部屋からの引越しの準備に追われていた。


カラントに来た頃は自分の荷物はあまり持って来なかった筈なのに、9年も過ごすとそれなりに荷物も増える。服1つ取ってみても子供のサイズと大人のサイズでは布面積が違うのだから、それは当然と言えば当然なのだけれど、何となく感慨深い気分になりながら鞄に荷物を詰めて行った。



「なあ、リア。この服ってここに来た頃のだよな。まだ持ってたのか?」

「お前誰の許可取ってその服に触ってんだよ。今すぐ腕ごとでいいから服を離せ。寧ろ滅びろ。」

「怖っ!滅びないし気軽に人の腕取ろうとするなよ!お前の心の狭さヤバいからな!?」

「うるせぇな。耳元でキャンキャン吠えてんじゃねぇよ。役に立たないならその辺で尻尾丸めて大人しくしてる位出来ないのかこの駄犬が。」

「はぁ!?お前ホントに少し発言考えろよ?!他国の王太子捕まえて駄犬って問題しかないからな?!」

「……あの、本っ当に邪魔なので他所でやって頂けません?」


荷造りの為に部屋に篭っていた私の所に何故か二人揃って来た挙句ぎゃあぎゃあと騒いでる王子達に対する腹立ちを込めながら、笑顔で声を掛けてやる。


手伝うと言って部屋に来たまでは良いが、エドは畳んだ服を横から広げ始めるし、ロセ様だって別に服が畳める訳では無い。


元々王族の人間に荷造りの手伝いが出来るなどと思っていないが、問題は2人が手伝い始めてしまった為、手伝いの為に来てくれていた侍女の方々がおろおろしながら手も出せず、結局部屋から追い出されてしまった事だ。


正直邪魔しかしない癖に騒ぎ立てている2人に、どんどんと苛立ちが溜まって来ていた所だった。


「いいですか?私は3日後に帰国する為に急いで荷物を纏めないといけないんです。それを2人揃ってくだらない事で騒ぎ立てて……以前にも言った筈ですよ?これ以上騒ぐならお帰りはあちらです。」


以前と同じ様に笑顔のまま部屋の外を指刺してやると、これまた以前と同じく2人で顔を見合わせた後御免なさい、と言う謝罪の言葉が帰って来た。全くもって嬉しくは無い。


「……全く……お二人共、人の上に立つ立場の人間がこんな下らない事で揉めるのはお止め下さい。特にエド、貴方は王太子なんだから、余計によ?」


エドのお目付け役をしていた頃の様な口調でそう注意してやると、エドが神妙な表情で頷く。ロセ様はその様子を無言で眺めていたが、その顔にはありありと『面白くない』と書かれて居た。


「……ねえ、フィリア。騒いだのは悪かったけど、やっぱりコイツに対して気安すぎない?何でそんな事までフィリアが注意してやらなきゃいけない訳?」

「そう仰られましても……」


むすりと頬を膨らませたロセ様に、思わず苦笑が浮かぶ。


大方自覚が足りない訳では無いこの方が不機嫌に騒いでいた理由は、私とエドの関係性の所為だろう。しかしそうは言っても急にエドとの関係性を変える事は出来ないし、これもあと3日程なのだから許して欲しい。


それにこの間ロセ様の弱い部分を垣間見たからか、拗ねている様子が何となく可愛く思えてしまうようになってしまっている自分が居る。その所為もあり、今の私は非常にロセ様に甘い。こんな風に拗ねて甘える態度を見せるのは私にだけだと知っているから、余計にそう思えてしまうのだろう。


そんな私の心情を知ってか知らずか、ロセ様自身も何時もより私に甘える様な態度を取ってきているのだ。今までの何時でも余裕たっぷりだったロセ様からは想像出来ない。


そしてそんな気の抜き方は、婚約者として頼られている様で、少し嬉しい。



「……フィリア?何考えてるの?」


ロセ様を見詰める私の眼差しが何時もより柔らかい事に気付いたのか、少し不思議そうな声で問い掛けられる。首を傾げる様な仕草に、自分でも意識しないうちにまた、笑いが漏れた。


「……いえ。ただちょっと、嬉しいな、と、」

「何が?」


先程まで怒っていた筈の私の言葉に、ロセ様が再度首を傾げる。


公の場で凛と立っている姿は頼り甲斐のある年上の男性にしか見えないのに、一度(ひとたび)その仮面を脱いでしまうと同い年の様な、いや寧ろ年下の男の子の様な錯覚に襲われる時がある。それが今だとロセ様に伝えたら、また複雑そうな、嫌そうな顔をするんだろうか。


そんな顔を想像して、1人くすくすと声を出して笑ってしまった。




「……なあ、お前ら俺が居る事忘れてないか?」


どうやら痺れを切らしたらしいエドの呆れた声に、はっ、と思考が中断される。一瞬本気で頭の中からエドの事が抜けていた。


バツの悪い気持ちでエドに苦笑を送ると、それを見たエドが呆れた顔のままひとつため息を落とした。


「お前な……流石にそれは酷くないか?俺達兄弟同然に育ったんだから、もう少し注意を向けても良くないか?」

「……えっと、ごめんね、エド。」


本気で悪かったと思い謝罪を口にすると、そんな私を見ていたエドがにやりと口元を歪めて笑った。その顔を見て何となく嫌な予感が頭を掠める。


エドのこの顔は、悪戯を思い付いた時の顔だ。


「悪いと思うなら、俺と少し庭園でも散歩しようぜ。勿論、二人きりで。」

「は?何言ってんのお前。」


エドの言葉に私より先に反応したロセ様が顔を歪めて睨みつける。しかしそれよりも、私自身はエドの言った『庭園』と言う言葉に引っかかりを覚えていた。


庭園は、私が何かあると逃げ込んで居た場所だ。

そしてそれを毎回見つけてくれたのは、エドだった。


思わず探る様な視線を向けると、ロセ様と言い合いをしているエドと一瞬視線が合う。苦笑を浮かべたその表情に、私が帰る前に何か話があるのだろう、と思い至った。


「……いいわ、エド。一緒に散歩すればいいのよね?」


そう口に出した私に、エドは満足そうな、逆にロセ様は吃驚したような表情を浮かべた。

しかしこればっかりはきっとロセ様には伝わらないだろうし、口で説明するのも違う気がしたので、どうして良いのか分からずに曖昧な笑みを向ける。


そんな私をロセ様が、複雑そうな顔で見詰めた。



「ごめんなさい、ロセ様。そう言う訳ですから、少しエドと散歩してきます。」

「フィリアがそう決めたのなら。……お前、変な事したら国ごと責任取らせてやるからな。」


私の言葉に苦笑を浮かべながらそう口にしたロセ様だったが、最後にエドに向かって牽制を忘れない。ある意味ブレないなぁ、と思いつつ、ちらりとエドに視線を向ける。

ロセ様の言葉に反応しつつも私に向けて安堵した笑みを向けるエドを見て、どうやら自分の判断が正解だったと内心胸を撫で下ろした。


「……よし、じゃあ行こうぜリア。先に言っておくが着いてくるなよ?」

「阿呆か、行かねぇよ。……フィリアが判断した事の邪魔をする気は無い。」



私に手を差し出しながら言ったエドの言葉に、ロセ様が真顔で言葉を返す。その真面目な表情に私の意志を尊重してくれている事が伝わってきて、自然とロセ様に向けて笑顔を返す。


「……俺は此処で待ってるから。行っておいで。」


そう言って頭を撫でてくれたロセ様に行ってきます、と返してから、エドにエスコートされて自室を後にした。



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