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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
16歳、隣国篇
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会議の報告は、先行きの不安と共にやってくる

 



 睨みつけて居る筈の私を見ながら嬉しそうな表情でくすくすと笑うロセ様に、少し拗ねたような気分になりながら溜息を吐く。かなり恥ずかしい科白を吐いたことは自覚してるし、未だに笑っているロセ様にも今すぐ辞めて頂きたいのだが、そんな嬉しそうな顔をされてしまうと毒気を抜かれてしまって怒るに怒れない。


 というか、先程まで聞いていた話の所為か、どうにもロセ様の事を甘やかしてしまっている自分に気付き、再度ため息を落とした。


 そうこうしているうちに私を抱き締めたまま頬を寄せたり、額にキスを落としたりと好き勝手を始めたロセ様に流石にそろそろ突っ込みを入れようと視線を向けるのだが、物凄く嬉しそうに笑う視線とぶつかり思わず言葉を飲み込む。口を開いては閉じ、を繰り返してしまう私に、その様子を見ていたロセ様がまた楽しそうに笑う。


「……ねえ、フィリア。何で百面相してるの?」


 理由を問われれば間違いなくロセ様の所為だ。しかし下手に突っ込みを入れるとこの甘やかしの理由とプロポーズもどきの言葉に言及されるのが目に見えていて、結果それが百面相に繋がってしまっているのだが、その説明をする事自体も自分の首を締めてしまいそうでなかなか上手い言葉が出て来ない。


 そんな風に言い淀んでいた私を楽しそうに見ていたロセ様だったが、何か思い出したのか、ああ、と声を出した後言葉を続けた。


「ちょっと話が逸れちゃったんどけど…カラントとクロージアの同盟の事だけどね、ほぼ新しい条件で結び直したよ。」

「新しい条件、ですか?」


 話が逸れてくれた事に内心安堵しながら、ロセ様の言葉に問い掛ける。今までの条件がカラントにとってかなり甘い条件で締結されていた事は聞いていたが、そんなにすぐ条件の変更が出来る物なのだろうか。


「うん。今までの条件は、言うならば父上の用意した撒き餌だからね。食い付いて、餌が貰えないと死んじゃう状態まで追い込んだ上で飼育条件を変える、って訳。」

「…飼育条件とはまた…中々酷い表現ですね…。」

「あー…、うん。でもこれ兄上が言っていた言葉と1字1句違わないからね。多分兄上も父上からそう聞いたんだろうし。」

「……陛下がそう仰られたのであれば、もう本当に何も言えませんわね…。」


 僅かに呆れを含んだ顔で見詰めれば、ロセ様が苦笑を浮かべる。


「まあ…最終判断した俺が言うのも何だけど、タチ悪いよねぇ。今回の件で父上の怖さを痛感したと言うか…王としては先を見据えて動いている賢王とも言えるんだろうけど、理由も知らされず巻き込まれるこっちはたまったもんじゃない。」

「それは確かに…。私がカラントに出立する前に陛下にお会いしてるのですが…その時点で恐らく10年近く間を置く事を決めてらしたのかも知れません。何度も、いつ帰れるか分からないが大丈夫か、と確認されましたから…。」

「そんな事が…。だったらそれとなく教えておけばいいのにあのクソ親父が…。」


 私の言葉に思う所があったのか、乱れた口調で陛下に対する文句を口にするロセ様に苦笑を向ける。鬱屈が溜まっていて、思わず口に出してしまったのだろう。9年間の怨みは恐ろしい。


「実際、これからカラントは大変だと思うよ。一応条件の締結はさせたけど、カラントからしたらかなり厳しい物になったと思うからね。加えて国境地域の税金の着服なんかもあった訳だし、その補償金の為にもカラント国内で税収を上げざるを得ない。うちからの輸入品も今まで程安価では手に入らなくなるだろうし、今の条件じゃ遠からず民の不満が爆発するだろうね。」


 そう言ったロセ様の言葉に、思わず表情が曇るのが自分でも分かった。王族や貴族に責任を取らせるのは当然なのだろうが、民がそれによって苦しむ姿は、偽善だと言われても見たくはない。


「それは…何とかならないのでしょうか…?貴族の方々は兎も角、国民まで泥を被るとなると…。」

「うん、俺もそう思うよ。だから、カラントからの謝罪の為に代表者をクロージアに連れていく事にしたんだ。」

「謝罪、ですか?」

「まあ表向きはね。…王太子をどうするかによっては変わる話ではあったんだけど、クロージアに趣いて誠意を見せる事で条件を緩める事が出来る様に兄上が下準備はして下さってるんだ。だから、内政の交代の前に王太子にはクロージアに来て貰って、父上と兄上に謁見して貰う。」

「うわぁ……。」


  思わず心から声が出た。


 ロセ様1人にも良い様にあしらわれて居たエドが、兄様と陛下が揃った場に1人で立つのだ。思わず声も出ようと言う物だ。そんな私の心情を正確に理解したのか、苦笑を浮かべたロセ様がまあ、と言葉を続ける。


「クロージアには義姉上が居るからね。身内が居ない訳じゃないし、兄上は義姉上に格別に弱いから、お願いされれば悪い事にはならないと思うよ。」

「えっと、陛下は…。」

「それは……まあ……今回俺が持ち帰る成果で満足してくれると良いんだけどなぁ…。……下手したらこっちも巻き込まれそうだ。」


 嫌な事に思い至った、といった表情で、ロセ様がぼそりと言葉を落とす。確かに今回の結果に満足行かなかった場合の陛下の反応を考えると、そんな表情になって当然だろう。

 そう考える私自身の表情も曇っていたのか、ロセ様が苦笑を浮かべながら口を開く。


「うーん…まあ、そうは言っても会議は終わっちゃったしね。この条件を持ってくしかない訳だし、悩むだけ無駄だ。王太子の事も、俺も謁見には出る事になるだろうから…まあ何とか出来るように善処するよ。」


 そう言って笑ったロセ様が、安心させるように私の手を握った。そしてそのまま手の甲に口付け、自分の頬に寄せる。


「だから、王太子の事は心配しないで。フィリアは何も考えなくて良いから婚姻の準備の事だけ考えていて?……クロージアに帰っても俺が守るし、フィリアを悪い様にはさせないから。」

「……分かりました。」


 頬に寄せた掌に何度も口付けを落としながら微笑むロセ様に頬が紅く染まっている事を自覚しながら、辛うじてそれだけ口に出す。



 周りが暗くて良かった。そう思いながら、誰にでもなく顔を隠すかの様に、ロセ様の胸元に顔を寄せた。




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