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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
16歳、隣国篇
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謁見の時間は、緊張と笑顔と共にやってくる





「クロージア国第2王子、ロセフィン=ブルト=クロージア様、並びにフィルリア=アルフリア=リンドノート嬢、御入室されます!」


先触れの騎士の声と共に重厚な謁見室の扉が開く。入室前にロセ様が添えてくれた手をそっと握って、改めて気合いを入れ直した。


「フィリア、取り敢えずもし何か聞かれる事があれば、素直に答えて大丈夫だから。」


小声で囁かれた声に、頷いて肯定する。そのまま手を引かれて入った室内には、何時もより少し機嫌の悪そうな顔をした陛下とエド、そしてこの国の要人であろう貴族の方々が顔を揃えて居た。


長年この国に滞在しているが、ここまで多くの貴族がこの部屋に揃っているのを見るのは初めてかも知れない。


この状況に僅かに不安になりながら、ちらりとロセ様に視線を向けると、そんな私の視線に気付いたロセ様が安心させるかの様に微笑んで下さった。そしてそのまま陛下に向き直り、礼を()る。


「カラント王陛下、この度はお時間をお取り頂き感謝致します。先ずはこの度の王太子殿下の成人、誠に目出度く存じ上げます。」


外交用の笑みを浮かべてそう口にしたロセ様を見て、普段よりも不機嫌そうな陛下が口を開く。


「ロセフィン殿、此度は我が息子の成人の儀に参列頂いた事に礼を言おう。…然し…」


そこまで口にした陛下がちらりと私に視線を向けた。その視線にどきりと心臓が跳ねる。9年間この城に居たけれど、陛下にこんな眼で見られたのは初めてだ。


「クロージアには我が国からの書簡は届いておらんかったかな?そこにおるフィルリア嬢には我が国の国母となって貰うべく書簡を出していたと記憶しているが。」

「陛下は御冗談がお得意の様ですね。…書簡に関しては、カラントとクロージアの間ではよく行方不明になる様ですからね、今回も届いて居ないのかも知れません。」


笑みを崩さずそう言ったロセ様の言葉に揶揄する意図を感じたのだろう。陛下の顔が明らかに不機嫌に変わる。


「貴君は我が国を愚弄しておるのかね?」

「いえいえ、その様な事は。私は真実を述べただけですよ。…フィルリア嬢に関しては、彼女は私の婚約者です。そこはどうお考えを?」

「貴君は国に愛妾を抱えていると聞き及んでおるが?それが悪いとは思わんが、その様な環境に幼い頃から面倒を見て来た彼女を戻す事をカラントでは良しとしておらんのだ。望まれぬ婚姻を結ぶ位なら我が国で祝福された国母となる方がフィルリア嬢の為にもなると思うが如何かな?」


不機嫌そうに話す陛下に毅然とした態度で笑みを崩さないロセ様を見て、こちらの方が内心冷や汗が出る。

私と同じ気分なのだろう、視線の隅に居るエドの顔が固く強ばっているのがちらりと見えた。


「…それは、随分な物言いですね。相変わらずカラントはクロージアを蔑ろにしたいと見える。」


視線を合わせ挑発的に笑うロセ様に、陛下の顔がぴくりと引き攣る。そんな陛下を眺めながら、ロセ様は更に言葉を紡いだ。


「陛下、私は今回我が父から書簡を預かって来ております。ここに居るフィルリア嬢を我が国に帰国させる旨と、この9年間のカラントから我が国に対する対応について、我が国からの正式な書簡です。どうぞご確認頂きたい。」


そう言って笑い、ロセ様の言葉に慌てて寄ってきた騎士に書簡を手渡す。騎士が陛下に書簡を差し出すと、不機嫌な顔で書簡を手に取りそのまま眺める様に読み始めた。


段々と機嫌の下降して行く陛下に周りの貴族達の空気がどんどん緊迫して行く中、ロセ様だけが、笑う。


「まあ…其方にも書いてありますが、この9年、我が国はカラントに対して最大限に譲歩を重ねて来ました。それは新しく同盟を結んだ貴国に対しての誠意であり、善意です。…然しその結果は如何でしょう?」

「……この書簡に書いてある事は事実かね?」


恐らく、報告すらされていない案件だったのだろう。苦々しい表情で陛下がロセ様に問い掛ける。


「それは其方に列席されている方々の方が詳しいのでは無いでしょうか?…ねえ、アラステア伯とクレイトン公、でしたか?是非とも只今陛下に報告させて頂いた案件について、お聞かせ願いたい。」


笑顔を浮かべたロセ様に唐突に指名された2人が、揃ってぎくりと固まった。然し直ぐに開き直ったのかロセ様を睨み付けながら口を開く。


「陛下!この様な戯れ言お聞き届けになる必要は無い!クロージアからの客人だと聞いて来てみれば、虚偽の申告など何たる無礼か!」

「そうです!…王族と言えど第2王子風情が陛下にこの様な口を聞くなど、有り得ない…!」


勢い良くロセ様を責め立てる2人を興味無さげに眺めたロセ様が、陛下に向き直る。当の陛下は2人の主張が耳に入って居ないのか僅かに顔色を悪くしながらじっとロセ様を見詰めていた。


「と、言う事の様ですが、如何ですか?陛下。」

「……すぐ様この案件に関しては、調査させよう。…聞いていたな?宰相。」


陛下の声がけに、宰相が慌てて書簡を受け取りに動く。その様子をじっと見詰めていたロセ様だったが、徐ろにああ、と今思いついたかの様な声を上げる。


「宰相閣下にもお聞きしたい案件が有ったのです。陛下、直接の質問をお許し頂いても?」

「構わん。」

「ありがとうございます。…それでは閣下、先程少し申し上げましたが、我が国からフィルリア嬢に宛てた手紙や書簡が、どうやら長い物で9年間行方不明になり続けていた様なのです。この件に関して心当たりはありませんか?」


笑顔のまま吐き出された言葉に、今度は宰相閣下が固まる。

恐らく兄様の調査でこの件の黒幕が宰相閣下である事は把握しているのだろう。ロセ様の追い立て方に、遠慮が見えない。


「いえ、把握されていないのであれば仕方ないのです。それでも書簡が行方不明になる、しかも1度や2度では無く9年間もだ。その様な事、わざとやっていたとしたら同盟破棄と言う事にもなりかねない案件でしょう。その様な事は避けたいですし、是非とも知っている事があれば教えて頂きたい。…当事者以外には責任を問わないとお約束しますよ?」


その当事者本人に対しての言葉だと思うと、本当に容赦が無い。ある意味お前に全ての責任を取ってもらうと言う宣言に他ならないであろうに。

そんなロセ様の言葉を聞いた宰相閣下の顔色が、酷く青く見える。


「…まあ…もし、ですが。此方でご報告させて頂いた内容が全て事実だとすれば、クロージアとしてもこのまま済ませる訳には行かない。何方かに責任を取って頂かなくてはいけなくなるのです。」


集まった貴族達をちらりと眺めながら、ロセ様が笑みを浮かべる。ロセ様がクロージア王の名代も兼ねて居ると書簡で知った陛下が、顔色を悪くしたままロセ様に視線を向け、その後宰相に向き直った。


「宰相よ、何か把握しておるか。」


既に逃れられない事を理解したのか、力なく問い掛けた陛下の言葉に宰相閣下が頭を垂れる。


長年侮られ続けたクロージアとカラントの立場が逆転した、そんな瞬間だった。








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