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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
16歳、隣国篇
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謁見の準備は好奇心と緊張と共にやってくる。




その後暫く相談を続けた2人は、昼近くになると謁見の準備の為それぞれの自室へと戻って行った。するとそのタイミングをずっと見計らっていたのか、入れ替わる様に侍女らが入室してきて、急かされる様に謁見の為の支度が開始された。


彼女らの好奇心の籠った視線を考えるに噂は充分広まっている様だ。それ自体は思惑通りで有難い事だが、然しこの視線に耐えながらの支度は中々きつい物がある。

ようやく支度の終わった頃には、すっかり疲れきってしまい昼食も喉を通らなくなってしまった。



その後、迎えに来て下さる予定のロセ様を待つ間、せめてお茶だけでも、と用意された紅茶を飲みながら先程説明された段取りについて考えを巡らせる。



噂を鵜呑みにする人物が居れば、必ずエドの耳に入れようと接触をして来る筈だ。陛下への謁見前にそれをロセ様に伝える為、エドが控えの間に不自然じゃない理由で訪れてくれると言う事だった。


不自然でない理由、の中身も聞いてはみたがロセ様の不機嫌そうな顔とエドの恥ずかしそうな顔が帰って来るだけで結局教えて貰えなかった。まあエドのことだからそこまで無茶な理由付けをする事は無いだろう。


それよりも、謁見の場でどの様に陛下に話を付けるのか、だ。




ふう、と自然に口から出た溜息を吐きながら、先日ロセ様に頂いた兄様からの手紙の入った文箱にちらりと視線を送る。


書簡の体を取ったその手紙には、3年前の返信とでも言わんばかりに日本語でこの3年間の謝罪と今回の対応についての兄様の見解が書かれていた。そして、3年前に私が書いた走り書きに対しての返信も。


3年前私が送ったメモ書きは、ロセ様からの返信や連絡が6年来なかった事、そしてその時期凄く夢見が悪かった事が原因で少し疲れてしまって、誰かに弱音を吐きたい、しかし吐けない、と言う葛藤の中で兄様ならあるいは、と藁にもすがる思いで書いた独白の様な物だった。


実際の所兄様宛に手紙をだした後で前世でも同じ様なメモを書いた事を思い出し、次の返信で謝罪しようと思っていたのにその後全く連絡が取れなくなってしまったので結局此方から兄様に謝罪する事は出来なくなっていたのだ。




『気付かなくて悪かった、昔も、今回も。』


こちらが謝罪するつもりだったのに、逆にそんな風に書かれて始まった手紙は、色々と手を打ってくれていた事、それでも時間がかかり過ぎてしまった事、連絡が取れなくなっている事に気付いた後に行った行動やその内容等か簡潔に、しかし細やかに書かれていて、やはり前世でも今世でも相当心配をかけてしまったのだと思うと、チクリと胸が痛んだ。



そしてその中の一文に、恐らくロセ様がエドに見せていたであろう書類について言及した部分があった。


その書類にはどうやって調べたのかは分からないが、カラントの有力貴族の国内での汚職やその他都合の悪い部分、そしてクロージアに対しての貿易を含む部分で税金の改竄(かいざん)や虚偽の申告等を行った貴族のリスト等が事細かに記載されていて、それは多分話し合いの決め手になる物だろう、と書かれていた。


正直クロージアの調査技術に愕然としたが、私と連絡が取れなくなってから今回の対応を取ると兄様が決めたのが2年前で、そこからずっと準備を進めてきた結果らしく、それだけの下準備を重ねれば確かにこれだけ大掛かりな調査は可能だったのかも知れない。


そして手紙の最後には、ロセ様自身は私に余りそう言った書類や対応の内容を教えたがらないが、それも含めて恐らくそれはロセ様の弱さであり私に対する愛情の表れであるから心配するな、少し待ってやれ、と結ばれていた。


『俺に覚悟が無いのかも知れないけど』と言って笑ったロセ様の顔が、頭の中をちらりと掠める。



ロセ様の中で、私は小さな子供のままのイメージなのかも知れない。だから大人の汚い部分、戦略や対応などを教えて下さらないのだろう。


正直今回の噂だって、その内容でからかわれはしたがロセ様は実際にそれを事実にするつもりは一切なかった。ベランダに降り立ち、多少からかわれながら部屋の中に送られて、また明日朝来るね、と言って笑って去って行ったのだ。


それは信用されてない様な、私自身を見て貰えていない様な少し寂しい気持ちにもなるのだが、だからと言って直ぐに大人扱いして欲しいのかと言われれば、それは今度は私の方が受け止めきれない。


「中々難しい所よね…。」

「何が?」

「え?」


ぽつりと吐き出した独り言に唐突に返答が帰って来て、慌ててそちらに視線を向ける。

見れば謁見用に正装をしたロセ様が、入り口の方から何となく苦笑を浮かべながらこちらを見ている所だった。


一瞬何時入って来たのかと思うがふと、ロセ様や兄様が昔から突然現れる事が多かった事を思い出す。


「ロセ様、もしかして昔から何か魔法で突然現れる様な事、してらっしゃいます?」

「ああ、言ってなかったっけ?俺は基本的には魔力感知で周囲を探ってから隠密魔法を掛けて部屋に入る様にしてるんだよ。何があるか分からないからね。フィリアの部屋に入るのにそれは必要無いんだけど…まあ、癖みたいになっちゃっててね。驚かせたならゴメンね。」

「…長年引っ掛かってた事がやっと理解出来ましたわ…。」


通常ならそれをするだけでもかなりの魔力を消費しそうだか、そこは魔力量の多いクロージア王族のやる事だ。その程度は雑作ない事なのだろう。


「…と、言う事は兄様もですか?」

「うん、そうだね。兄上も同じ様にしてる筈だよ。だから、俺達兄弟には基本従者が付かないんだ。同じ事が出来る人間が他に居ないからね、正直足でまといになっちゃう。」

「成程…それも少し疑問だったのですが、理解出来ました。」


今回カラントに来る際も何人か人を連れて来ては居るみたいだが、実際ロセ様と一緒に居る姿は殆ど見ていない。恐らく今日の謁見で決まった内容を締結する際に必要になる人員なのだと予想出来た。


「まあ、どの道謁見自体は人数指定されちゃったからね、向こうの人数は分からないけど、こっちは俺とフィリアだけだよ。」


そう言いながら私に近づくと、片手を取り手の甲に口付けを落とす。


「今日の格好も可愛いね、よく似合ってる。」

「ありがとうございます。」


いちいち照れるから恥ずかしいのであって、もうロセ様のコレは挨拶として受け取っておけば良い気がする。そう思いながら返答をし、微笑んでいるロセ様にこちらも笑みを返した。


それで正解だったのか、ロセ様からはそれ以上の言及も無く手を引いて席を立たされる。


「じゃあ、行こうか。…フィリアは何も心配しなくても大丈夫だからね。」

「ええ。…ロセ様、程々でお願い致しますね。」

「その言葉、誰かにも言われたなぁ…。」


微笑むロセ様に一応、と言った風情で注意を促せば、苦笑と共に返答を返された。


本当は緊張はするが、表に出したら誰に付け入られるか分からない。


心の中で気合いを入れ、ロセ様のエスコートを受けながら自室の扉を潜る。長い廊下を緊張を隠して歩きながら、控えの間へと向かった。





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