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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
16歳、隣国篇
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責任の取り方は思わぬ提案と共にやってくる。





「確かに思い上がりなのかも知れないが、他にどうしたらいい?俺の為に行われていたのだとしたら、それを無視するなんで出来ない。そこに責任が無いなんて、言える訳がないんだ。」


それが自分の為に動いた事である以上、全ての責任を持つ立場の人間としては無視する事は出来ない。それがエドの出した結論だった。

根が真面目で、真っ直ぐなエドらしい答えだと思う。しかし暫し悩みながらエドが出した答えに、ロセ様は更に呆れた顔を向ける。その表情には、悩むだけ無駄なのに、とありありと書かれていた。



「お前、何か勘違いしてないか?確かに下の者が行った事の責任を取るのが王族だ。それは間違いない。だけどな、今回フィリアに対して動いたのはお前より立場が下の者なのか?元々お前の正妃に俺の婚約者を据える事を企んだのは、誰なんだよ。」


静かに口に出されたロセ様の言葉に、思わずエドが息を飲む。

そんなの、一人しかいない。全てに許可を出し、裏で人を動かした人物。それができるのは、陛下だけだ。


「…親父が全て企んだとしても、それでも俺は…」

「だから阿呆だっていうんだよ。」


エドが更に吐き出した言葉に被せるように、ロセ様が辛辣な言葉を投げ掛ける。


「いいか?責任は上のやつが取る。それは当たり前だ。ただ、それであればお前より前に責任を取るべき人間が、他に居るだろう。そいつが取らない責任を、お前が全て取る意味が有るのか、って聞いてるんだよ。」

「それは……」

「大体責任取るってどうするつもりだ。お前の国は9年間俺の国に虚偽を伝え続けてたんだ。俺の事だけでなく、公式訪問やウチの王太子からの正式な書簡に対してまでだ。それは同盟を取り止めるに充分な理由にまでなって来ている。その責任を、お前が、取れるのか?」

「…っ…」

「実際の内容はフィリアの事だがな、今回問題にされてるのはそこじゃ無いんだよ。そんな事も分からず責任を取るなんて言うな。まだ王太子でしかないお前が他国に対して取れる責任なんてたかが知れてる。思い上がるな。」



ロセ様の言葉一言一言が、エドを抉る。苦々しい表情のまま文句も言えず聞き続けるエドが、不意に私の方を見た。

私に対して申し訳無いと言う気持ちと、ロセ様の言う事に納得はしているが認められないと言う気持ち、色んな感情が綯交(ないま)ぜになった、不安そうな瞳が揺れていた。


「…お前が責任を取らなきゃいけないのはな、フィリアを泣かせた事ぐらいだ。それだけで万死に値するが、それ以外の責任は親に取らせろ。」


そう言いながら、ロセ様がエドの方にばさりと書類を投げた。

それを視線で眺め見たエドが、一瞬目を見張る。


「…これは…」

「俺が今回、名代として来た意味がこれだ。…お前の事だけ、対応を考え(あぐ)ねてた。どの程度噛んでいるのか、積極的に関与してたのかが分からなかったからな。…それでもフィリアが懐いている以上、それを無視して行動したらフィリアに嫌われかねない。」


面白く無さそうな表情のままエドを見ていたロセ様が、私に向けて苦笑を浮かべる。


「…それで昨日エドを煽ってたのですか…?」

「そう。煽れば煽るだけボロは出やすいからね。本当にコイツも悪人なら、いっそ滅ぼしてもいいかなー、なんて思ってた。」

「滅ぼ…?」

「まあ、冗談だけどね。」


本当に冗談なのか分からない様な顔でにこりと笑ったロセ様の横で、顔色を悪くしたエドが書類に目を通す。

相当カラントにとって都合が悪い事が書いてあるのだろう。読み進めるうちに更に顔色が悪くなって行き、今では顔面蒼白と言った風情だ。


「本当に、これを親父に伝えるのか…?」

「当たり前だ。俺は今回カラントに対してのクロージアの全裁定権を持って此処に来ている。国王の言葉と同意だと取って貰って構わない。」

「……こんな事伝えたら、同盟だってどうなるか分からないぞ?」

「別に構わん。フィリアさえ取り戻せれば、いっそ同盟を破棄した所でクロージアは痛くも痒くも無い。この9年譲歩し続けたのは、ウチの父の思惑に他ならないからな。」


混乱するエドに対して、冷静にロセ様が言葉を返す。この国に来る前に既に対応は決まっていたのだろう。後は現地の人間を(かんが)みて、どのカードを切るか決めるだけだったのだ。


苦々しい表情でロセ様を見ていたエドが、おもむろに口を開く。


「…この書類を俺に見せた意図は何だ。」

「察しが良いな、王太子。お前にはこっちの意図に協力して貰う。責任を取りたいんだろう?拒否はするなよ。」


訝しげな視線を向けたエドに対して、ロセ様が笑顔を向ける。一見温和な顔だが、見事に目が笑っていない。有無を言わせぬ物言いにげっそりとしたエドが私に視線を向けた。


「…お前の婚約者はいつもこんな感じなのか…?」

「私も9年振りに会ったんだもの。分かりかねるわ。」

「さっきから随分と分かりあってるみたいな会話してた様に見えたけどな…?」

「それはそれ、これはこれ、よ。」


笑顔でそう言い切ると、エドが嫌そうな顔を向けてくる。

分からない、と言いつつ意訳するなら『こっちに振るな』だ。兄様もそうだが、この状態の人間に巻き込まれてろくな事は無い。

早々に離脱を決め込んだ私に大きな溜息を吐いた後、エドが観念したかの様にロセ様に向き直った。


「お前の思惑に乗れば、最悪の状況にはならないのか?」

「まあ、責任を取る本人に関しては保証しかねるが、他の事に関しては最大限譲歩すると約束しよう。」

「本当にそうして貰えると言う保証は?」

「一筆でも書くか?それでも構わないが、その場合はお前にも書いて貰うからな。」


エドの出す疑問に対して元々予測していた事なのか、ロセ様がすらすらと答えを返す。少し考え込んだ後、しょうがない、とばかりに1つ溜息を吐いた後再び口を開いた。


「…俺は、何をしたら良い?」

「決断が早いのは良い事だな。…そんなに難しい事を頼む気は無いから安心しとけ。」


そう言い切ったロセ様の笑顔は、今日1番の物だった。


そんなに難しくない、は嘘だろうなぁ、と心の中で思い、その笑顔を眺めつつ冷めた紅茶を啜った。







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