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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
16歳、隣国篇
38/88

閑話.その時自国の王太子は何を思うか 3






「…チッ…巫山戯やがって…。」


フィリアに送った手紙が突き返される様に戻ってくる様になって、半年。どうやらあちらの国は本気でフィリアを囲い込み始めたらしい。

流石に俺の手紙を突き返して来るとは思いもしなかった。自分が動けば事態が好転するだろう、なんて甘く考えていた自分にも腹が立つ。


フィリアは体調が芳しく無く返事が書けない上に王家の避暑地に移動している為手紙を届ける事が出来無い、なんてそんな都合のいい話、誰が信じると言うのか。言い訳に穴がある癖に此方が折れると確信して書かれた書簡を睨み付け、机の横に放った。





椅子にどさりと音を立てて座り、宙を仰ぐ。


ロセと色々と話をして分かった事は、強制力は恐らく存在している、と言う事だけだった。そうでなければ説明出来ない様なイベントの成れの果ての様な出来事や、余りにリリーシアに都合のいい出来事、逆にロセやフィリアにとっては余り都合の良くない出来事が重なって行き、それがロセの身動きを取れなくしていた。



話を聞いて1番最初に感じた事は、『気持ち悪い』だった。まるで全ての結果が見えない糸でひとつの筋道に向かって束ねられている様な、強烈な違和感。あの、フィリアに最初に会った夏休みにイベントを潰そうとして潰せなかった時に感じた不快感と同じ、いやそれ以上のぞわりとした感覚が身体の中を這った。


まるで神の意思とでも言わんばかりにゲームに沿って進んで行く状況。


ロセがそれに6年間振り回され続けていた事に正直反吐が出るが、それ以上に疑問が多い。ゲームのシナリオが現実に影響しているとして、ロセに対する影響と同じ攻略対象者である筈の俺に対する影響が違い過ぎる。


ロセの場合は行動、周囲、全てにおいて影響がある様に見える。元々キャラクターとして定められている設定に忠実になるべく後付で行動させられてる、とでも言えば良いのだろうか。設定資料に辺境を数年回っていた、と一言書かれていれば現実にそれを実行すべく行動させられる。しかも一見ロセ自身がその状況になるべく行動してる様に見える、と言うオマケ付きだ。


それに比べて俺はリリーシアとの絡みはほぼ存在しない。元々2週目以降の隠しキャラだった筈の俺は、設定的にも向こうから来なければ接点は余り無いのだから、当然と言えば当然なのだが。


俺とロセの違いは何処から来るのか。


そこまで考えて、思い至る。


俺とロセの決定的な違い。それはリリーシア自身だ。

恐らく、強制力が働く原因はヒロインであるリリーシアが攻略中かどうか、と言う事だろう。ルートに入られた事でより強固に設定に縛られる。然しそれでも疑問は残った。


今現在、ゲーム期間は終わっている筈なのに、それでもロセに対する影響は変わらない。まるでフィリアとロセの関係を阻害する様にじわりじわりと周りが埋められて行く。


やはり、俺の知らない情報が何か有るのかも知れない。


「リリーシア=ノエル…。」


ぽつりとその名前を口に出して溜息を吐く。フィリアに聞いた話から、彼女自身も転生者だ。そして確実にゲームの内容を知っている。俺の知らない何らかの情報。その中には今の状況を打破する情報が含まれてるかも知れない。


正直、彼女から何か情報を引き出せるとは思わないが、それでも現状手詰まりな以上それに掛けるしか方法が無いのだ。

幸い末端とは言え貴族である以上、何らかの理由を付けて行儀見習いとして城に召喚する事は可能だ。本人から聞き出せなくても、迂闊な彼女の事だ。四六時中探らせれば何か分かるかも知れない。




「後は、ロセ自身とフィリア、か…。」


ロセには暫く動くな、とは伝えてある。あいつ自身が動いたところで今は事態が好転するとは思えないし、俺の手紙が帰ってくると言う事はロセの手紙なんてどうやったって届く事も返事が来る事も無いだろう。それであれば、これ以上影響が出ない様に大人しく過ごしてもらった方が良い。


正直にそう伝えた時苦虫を噛み潰したような顔を向けられたが、そこは知った事じゃない。



それよりも問題は、フィリアの方だ。



全く伝える手段が無い、と言うのは痛い。

ただでさえフィリアから最後に来たのは、あのメモが書かれた手紙だ。あの状態のフィリアが既に半年俺からも放置されてるとなると、精神的にはかなり参ってる事だろう。


「…何とか…連絡が取れると良いんだがな…。」


溜息を吐きながら吐き出した声は、誰にも聞いて貰えず答えが帰ってくる事も無い。思った以上に苦々しく響いた自分の声が、深刻さを物語っていた。


全く関係の無い他国なら、間者なり何なり送り込めばいい話だ。然し問題は自分の妻の母国だと言う事実。下手に揉める訳には行かないし、その上強制力の影響か、父がカラントと揉める事を極端に嫌がっている節がある。カラントからの書簡が妙に強気なのも、それを向こうが知っているからだ。


「…あとは直接行く位しか方法が無い、か…。」


自分の立場は理解している。俺自身が動くとなれば大義名分が必要にはなるが、それでもまだ王太子と言う立場のうちならば動く事が出来ない訳では無い。このままフィリアを放置する位なら多少強引にでもコンタクトを取るべきだろう。それもなるべく、早急にだ。



先程投げ出した書簡を見詰めながら、用紙を二通分用意して必要な事を書き込む。すぐ様完成させると出来る限り早急に、と言い置いて呼び出した文官にそれを託した。


一通はリリーシアの召喚状。

もう一通はカラントへ。



それぞれの手紙の行先を思い、俺はそのまま目を閉じた。

神が居るなら邪魔してくれるなよ、と柄にも無く思いながら。






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