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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
7歳、婚約篇
27/88

転生令嬢、自分の恋心について考察する。






転移の魔法の感覚が落ち着き、そっと目を開ける。まず見えたのは、煌めく星空。

魔法の煌めきとは違う、でも夜空を埋め尽くす程の光に目を奪われる。

そっ、と手を握り直された感覚がして其方を向けば、ロセ様が優しく笑って私を見ていた。



きらきらと光る星に、思わず見蕩れる。

辺りが暗いと言う事は、王都の街中とは少し離れている、と言う事だろうか。柔らかな緑の草原が足元に広がり、風に乗ってふわりと草の匂いがした。


「素敵…」


思わず漏れた感嘆の声にロセ様が笑みを深くする。取り敢えず座ろうか?と促されて、草の絨毯の上に腰を下ろした。


「綺麗でしょ?この間合宿の時に来た場所なんだ。」

「合宿…と言うと先日の学園の方々とのですか?」

「うん。いつか一緒に見に来たいな、って思ってたんだけど…意外と早く機会が来たね。」


ロセ様がにこりと笑いながら星に向かって手を伸ばす。本当に、掴めそうな星空。


「…元々ね、フィリアと星を見たかったんだよ。此処は王家の避暑地で、小さい頃から何度か来てた。小さい頃、星を見る度に何か落ち着かない気分になってたんだ。何かが足りない、何故か満たせない。そんな気持ち。だから、少し大きくなってからは此処には余り来なかった。でも、3年前、僕の前で恥ずかしがりながらも笑ってくれたフィリアに、此処を見せたくなったんだ。」


手を伸ばして、まるで星を掴むように。

そんな仕草を見せながら、ロセ様は話を続ける。


「本当は、今までその事は忘れてたんだ。でも今日、星流れの魔法を見てまるで宝物を見る様に目をきらきらさせているフィリアを見て、本物の星を見せてあげたくなった。偽物の魔法じゃなくて、本物の空を埋め尽くす様な星を。」


気に入って貰えれば嬉しいんだけど、と笑うロセ様に、自然と私も笑みを返した。




そうして、ふと、思い出す。



むかし、むかし。遠い、むかし。

夜中に家を抜け出して見た、星空。


余り自由のなかった私を連れ出して、海岸を2人で歩いた。

その日は流星群が見える日で、自分の手柄の様に笑う彼に、私も笑みを返したのだ。

その時、彼はこう言った。


「『君のためなら、星だって手に入れてあげるよ。』」


過去に引き摺られていた思考に、急に現実の声が重なる。

ロセ様の声と、彼の声。

はっ、として目を見開けば、目の前でロセ様が綺麗に笑っていた。


「ねえ、フィリア。僕は君が好きだよ。本当に、本当の意味で君以外要らないくらいに。」


そっと私の頬を撫でたロセ様の手から、魔力の温もりが伝わった。視界の隅で茶色からプラチナブロンドに変わっていく髪が見える。


「その綺麗な金の髪も、空を移したような青い瞳も。君を創る何もかもが、愛おしい。いつもの澄ました顔も、兄上と言い合いをしている顔も、僕に呆れてみせる瞳も。…時折見せるとびきりの笑顔も。」


ロセ様が、私の頬を撫でながら静かに語る。

止まらない言葉に顔が赤くなって行くが、それでもロセ様から目が逸らせない。


「君が望むなら、空だって星だって手に入れてあげる。何だって、どんな事だって僕の全てを持って、叶えてあげるから。」


だから、と言ってロセ様が少し言い淀む。綺麗な紫が、不安そうに揺れる。


「お願い、フィリア。僕から離れないで。…兄上にだって、他の誰にだって、譲らない。僕は君を手放せない。離してあげられない。」

「ロセ様…。」

「君が僕を見て誰かを思い出しているのは、知ってるよ。でも、それで良いんだ。」


ロセ様が微笑んで言葉を続ける。それでいい、なんて、良い筈無いのに。


「君の年齢も、周りの視線も。何もかもが、関係無い。僕の全てを持って、君を愛すると誓う。何年経とうが、僕が何処に居ようが、君の為なら何処にだって、どんな時だって駆け付ける。」


もう、逢う筈も、逢える筈も無い相手。

それに引き摺られて宙ぶらりんな私に、全身全霊で愛していると告げてくれるロセ様。


思わず涙が出そうになるが、ぐいっ、と乱暴に拭う。

私が此処で泣いてはいけない。


溢れ出る涙が止まらなくて、乱暴に拭い続けるとそっとその手をロセ様が握る。そのまま、胸元に抱き留め頭を撫でてくれた。


ロセ様の少し高い体温が、私を包む。


「ごめんね、でも、大好きだよ。フィリア。」


額に、柔らかな感触が落ちてくる。ロセ様は角度を変えて、何度も何度も、キスを落とす。


「学園に戻ったらまた暫く会えなくなるからね、今の間に伝えたかった。フィリアが、僕が居ない間に僕から離れない様に。」


ぎゅっ、と抱きしめて、離れない様に。


「まだ好きになって、とも言わない。でも、僕が好きな事は忘れないで。」


そう言って笑ったロセ様は、酷く寂しそうだった。

その笑顔に胸が痛む。確かに彼は忘れられない、忘れられる気がしない。でも。


この優しい人に、私も何か、返したい。

同じ強さじゃなくても、愛とは呼べなくても。


それでも、この胸の内は、伝えなくてはいけないのだ。



「…私も」

「え?」

「私も、多分、ロセ様が好きです。ロセ様が言う様に、心に他の人が居て、忘れられない事は否定出来ない。ロセ様とその方を重ねている事も。でも……」


ロセ様が目を見開いて、じっと私を見詰めている。

私の事を誰より考え、行動して、甘やかしてくれる優しい人。


「…でも、私も、貴方と居たい。年齢も、周りの目も、何もかも私では役不足かも知れない。でも、今の私は、ロセ様とずっと一緒に居たい。…それが正直な気持ちです。」


精一杯微笑んで、少しでも伝わる様に。



私の言葉を聞いていたロセ様が、不意に泣きそうな顔で笑った。

掠れた声で、ありがとう、と言って私の肩口に顔を埋める。


「……本当に、泣いても喚いても、一生離さない。」

「望む所です。」


泣き笑いのような声でそう言うロセ様に、私も笑顔で答える。

私の言葉が意外だったのか、驚いた顔で顔を上げたロセ様が笑顔に変わった。




きらきらとした魔法の星と、夜空一面の煌めく星空。


その日から、星祭の日は大切な、忘れられない日となった。





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