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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
7歳、婚約篇
22/88

デートのお誘いは、勢いと共にやってくる。






星祭、とは。



前世で言う様な七夕の様なお祭りで、毎年同じ日王都で行われる。

私は参加した記憶が無いが、町中に出店が溢れパレードが行われ、大変な賑わいを見せるのだ。そして、夜には宮廷魔術師の先導の元、魔法で星を降らせる様な演出がされる。


街中で見える流星群の様な光景に、家族や恋人と眺めながら願いを祈る、そんなイベントだ。



と言うのが、王太子殿下による星祭の説明だった。



**************




「いや、無茶だから!無理だから!何考えてんの兄様!!」


思わずフィリアの口調を忘れぎゃんぎゃんと兄様に詰め寄れば、その様子をみて兄様が可笑しそうに笑う。


「おお、その感じ久々だな。令嬢言葉で話すのしか見た事なかったから、そのキャラ何処置いてきたのかと思ってたんだ。そうやって喋ってると雛っぽいな。」


楽しそうに笑いながらそう言う兄様を睨み付ける様に見詰める。

本当に、何でそんな事思い付くのか。理解出来ない。


「私のキャラとかそんな細かい事どうでもいい!大体誘惑って、私7歳だから!ロセ様だって普段あのナイスバディのヒロインにベタベタされてたらこんな幼女に誘惑されたって何とも思わないでしょうに。ロリコンか!寧ろ何かあった?熱でもある?とか言って心配されちゃうわよ!」

「いや、誘惑をメインに会話を進めんなよ。デートの誘いに注目しろや。」

「余計に誘えるわけないでしょ!?こんな子供から男子高校生に相当する美形王子をどうやってデートに誘えって言うのよ。」

「いや、お前に誘われればその時点で即答でOKだすだろ、あいつなら。別に既成事実作って来いって言ってる訳じゃ無ぇんだから、頑張れよ。」

「軽く言ってくれるー!どうして兄様はいつもそうなの!少しは私の気持ちを考えてよ!」

「いや、これ以上無いくらいに考えてると思うけどなぁ。」


暖簾に腕押し、とはこの事だ。

私ばかりが興奮して、兄様は何時も冷静で。


怒る私を楽しそうに揶揄う兄様に、過去の自分が顔を出した。


そして、はっ、と気付く。

そうだ、いつもこんな感じだった。


兄様に揶揄われて、その度に反論して、呆れて。それでも優しくて、何時でも味方だった。


そして冷静に考えれば、その味方の兄様が唯の無茶振りをする筈は無いのだ。その程度には、信頼している。


ならば、それに応じた態度で接するべきだろう。

今の彼は、兄様であって兄様では無いのだから。


目を閉じて思い切り深呼吸をして、息を吐き出す。

そして、目を開ければ、次の瞬間には気分を切り替えた。


思わず出てきた昔の自分から、今の自分へ。



「……失礼致しました、ルカ兄様。」


そう口にして謝罪すれば、その様子をじっと見ていた兄様が問題ない、と笑った。







「で、だ。誘惑は……まあノリで言っただけだが、デートに誘って欲しいのは本当なんだ。と、言うか他に上手いイベントの回避方法が思い付かない。」


ノリとかしれっと言わないで欲しい。

……いや、もう突っ込まないけど。


「……先程も申し上げましたが、私から誘ってロセ様が乗ってくれるかどうか……。」

「俺もさっき言ったと思うが、お前に誘われればその時点で即答でOKだして来るだろうから安心しとけ。」



きっぱり言い切る兄様に、私は思わず困惑の表情を向ける。




好かれている自覚が無い訳ではない。


ただ、この間の様な事もあるのだ。

此方を見ずに背中を向けヒロインを選んだと言う事実が、私の中に重く伸し掛る。


本意だろうが強制力だろうが。


何かの理由で断られる、なんて事が無いとは言い切れない。


「大丈夫だ、フィリア。だから俺はこの間アイツに駄目押ししたんだ。お前を泣かすな、ってな。アイツだってやり方が不味かった事は理解してるんだろうから、二度と同じ轍は踏まないだろ。」


その言葉に、兄様が一切折れる気がない事を悟り、ため息を吐く。

これ以上の討論は、時間の無駄だ。


「……誘ってみるだけ、で宜しいのであれば。」


ロセ様にどう声を掛けたら良いのか、憂鬱になるが、それをぐっと呑み込む。

確かにそれでフラグが回避出来るのであれば、やらない手は無いのかも知れない。


「それで十分だよ、悪いな。」

「悪いと思っている様には全く見えませんが。」

「まあ、思ってねぇからな。それはしょうがない。」


しれっと言う姿に、ため息しか出てこない。


「……本当に、兄様はその性格なんとかされた方が良いと思います。」

「いい性格だろう?ロセから俺に乗り換えてみるか?それならそれでデートに誘わずに済むぞ。」

「……謹んで遠慮申し上げておきます。それでしたらロセ様をデートに誘う方が、余程マシですもの。」

「それは残念。」


全く残念じゃ無さそうに笑う姿に、何となくロセ様の姿が重なる。兄様とロセ様は余り似ていない筈なのに。


今頃、合宿イベントが進んでいるのだろうか。

リリーシアがロセ様に腕を絡ませていた姿を思い出し、胸の中に痛みが走った。




「まあ、昼間から夕方に掛けてははどの道公式行事がある。どのタイミングで誘っても良いが…事前に誘う様ならアイツが戻り次第お前を城に召喚出来る様に準備しといてやるよ。」

「……恐らく、お願いする事になるかと思います。」


流石に当日これからデートして!とは誘えない。

そこ迄心臓は強くないのだ。


「了解した。後、聞いておきたい事はあるか?」

「聞いておきたい事……」


僅かに考え、口を開く。

と言うか大前提で夜、と言う点に問題がある。


「私、先程も言いましたがまだ7歳なのです。父様と母様が夜遅くに外出など許して下さるとは思えないのですが、その辺はどうしたら宜しいですか?」


そう伝えれば、ああ、と今思い至ったと言わんばかりの反応が返ってくる。少し考えた後、兄様が口を開く。


「それなら、当日は城に滞在出来る様に取り計らっておこう。実際公式行事が終わるともう宵闇の直前位だ。それならば、泊まって行っても何の不思議でもない。リンドノート公も奥方も、城からの提案なら断らないだろうしな。……ただ、フィリア。」


兄様がそこで言葉を切って、私の顔を覗き込む。

何か重要な事が有るのだろうか。


「……朝まで泊まっていくんだ、襲われるなよ。」


そう言ってにやり、と笑う兄様に、一瞬言われた意味が分からず、固まる。


襲われるなよ?誰が?誰に?


そして、理解した瞬間、一気に頬が朱に染まる。

何か言おうと口を開くが、何も喋れずはくはくと、空気だけが出ていく。


そして、やっと言葉が出てきた瞬間。




「……っ!兄様!いい加減にしてください!!」


冷静に、と思っていたのに、思わず怒鳴った私は、多分、悪くない筈だ。



そんな私を見て、兄様は楽しそうに笑った。


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