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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
7歳、婚約篇
21/88

転生令嬢、王太子殿下と先の展開について考察する。






婚約発表があった夜会の数日後。



久々に自室でゆっくり過ごしていた私の元に、王家の封蝋のついた手紙が届いた。


ロセ様だろうか、と確認すれば、何故かルカ兄様からの手紙だった。

要約すると未来の義妹と、是非お茶が飲みたい、と言った内容だ。


手紙の内容はごく当たり前な、差し障りの無い物だったが、共に届いた雛罌粟(ひなげし)の花に大体の用件を察する。



雛罌粟(ひなげし)は前世で私の名前の由来だった花だ。

兄様はゲームの話がある時は雛と呼ぶ、と言っていたのだから、ほぼ間違いなくゲーム関係の要件だろう。


その場で是とする手紙を書いて、すぐに届けさせる。忙しい兄様から指定されたのは、ロセ様が学園の人間と共に研修と言う名の合宿に行くと聞いていた日付だった。


この人は、また面白がってるんじゃ無かろうか。


そんな考えが浮かぶが、それを兄様に問うても多分まともに回答は得られないだろう。

あの、人を食ったような、にやにやとした笑みが思い浮かび、思わずため息が口をついて出た。






「待たせて悪かったな、フィリア」


数日後、指定の日時に城に赴くと、何時もの中庭とは違う王族区の一角にあるバルコニーに通される。先に席に着いて待っていると、程なくして兄様が済まなそうにしながら姿を見せた。


「いえ、お気になさらず、王太子殿下。本日お呼び頂き、光栄でございます。」


誰が聞いてるか分からない為、立ち上がって頭を下げる。それを見ていた兄様が、苦笑しながら私の横に立った。


「フィリア、此処は俺の私的な場所だから気にしなくて良い。それに、此処に入って来た段階で防音魔法を施してあるから、話も漏れない。問題ねぇよ。」


そう言って兄様は私の頭を撫でながら、まあ、座れよ、と促した。





暫くすると紅茶が運ばれて来て、それを入れた使用人が居なくなるのを見計らって、兄様が口を開いた。


「早速用件なんだが…まあ、雛が察している通り、イベントについて1つ、話しておこうと思ったんでな。」

「イベントですか?」


そう言った私に、兄様は頷いて肯定する。


「そうだ。実は今回あの女を城に招いたのには訳があってな。夏休み中のイベントを潰したかった。」

「そんな物があったのですか。」


兄様曰く、夏休み中にお泊まりイベントと称するイベントが発生する予定だったのだそうだ。

生徒会の合宿で、学園が所有する邸に泊まり数多くの好感度を左右する行動を起こし、その上で宿泊である事を利用した各人に、合わせたイベントと言う物が発生するらしい。


その人によって肝試しだったり朝デートだったり色々だそうだが、ロセ様との場合は夜デート。


眠れなくて抜け出した先にロセ様が1人佇んで居て、トラウマだったり過去の後悔だったりをヒロインに吐露した後、2人で空を見上げると流星群が見える。

小さい頃見た星を、君と見れて良かった、とか何とか言いながら、最後にキスをする。


そこ迄がロセ様とのイベントらしい。


成程、乙女ゲームの王道っぽい。乙女ゲームやった事無いけど。


と、言うか。


「……兄様、良くそこまで詳細にイベント覚えてますね……。」


少し呆れながらそう問えば、俺は頭が良いからな、とか言う悪びれない返答が返って来た。

全く、なんと言うか本当に兄様は変わらない。

但し自信と同様に実力も有るので、文句を付ける事も出来ない。

1つため息を吐きながら紅茶を飲むと、そんな様子を楽しそうに見ていた兄様が、まあ、と一声漏らして話を続ける。


「俺は今回そのイベントを潰す為にあいつらを城に招いた訳だが、結果イベントは潰せなかった。あの女の態度を見る限りロセの事を狙ってるのは間違いないだろうし、それであればイベントを起こそうとする筈だ。」

「……その可能性は高いでしょうね。」


少し、胸に痛みを覚えながら、肯定する。

確かにアレだけあからさまに言われれば、誰を狙ってるかなんて聞かなくても分かる。

ロセ様自体は回避したがっている嫌いがあるが、そ

れでも結果としてゲーム通りの展開になって行っている事は事実だった。


「……強制力、と言うやつなのでしょうか。」

「俺はあんまり認めたく無いんだかな、それ。でもまあ、ここ迄ゲーム通りの道筋と違う事をやっても戻ってしまう以上、何らかの力が働いている可能性は否定出来ない。」


強制力。

ゲームでそんな表現が有るのか良く分からないが、それを題材にした小説等ではよく見た単語だ。


ゲームと違う展開にしたくて動くのに、結局ゲーム通りの展開になってしまう。

成程、現在の状況は正に強制力が働いているかの様だった。


「まあ、夜デートが実行されるかどうかは分かんねぇけどな。取り敢えず実行されると仮定して、その後の展開を潰す準備をしなくちゃならねえ。」

「その後、何か展開があるのですか?」


ああ、と兄様が肯定して紅茶を啜る。

一息吐いて、また徐に口を開いた。


「星祭が、あるだろう。」

「……王都で行われる、あれですか。」

「ああ。彼処で再びデートイベントが起こる。悪役令嬢であるフィリアと公式に見る予定だったのが、初めての星祭にはしゃぐヒロインに心を惹かれて抜け出して一緒に回る、だったかな。」

「それはなんと言うかまあ……責任感に欠けるお話ですね。」


少し呆れ気味に呟けば、兄様が全くその通りだ、と同じく呆れ顔を見せた。

王太子としては、公式行事を自分の都合のみで抜け出すその行動は、有り得ないのだろう。

しかも理由が彼女とデートをしたいから、だ。

巫山戯ている。


「……ロセ様が、そんな状況に乗るでしょうか…?」


確かに、ゲームのロセ様はそう言う行動を取るのだろう。然し私が今接しているロセ様がそんな行動を取るようには、思えなかった。


「……そうだな、俺もそう思うよ。強制力、ってヤツが働かない限りな。」

「そうですね……。」


確かに、強制力が働けば理由は違えどロセ様が公式行事を抜け出す可能性も無くはない。

実際この間の夜会だって、理由は違うかも知れないがファーストダンスから二曲続けて踊り、周囲の認識を変えさせたのだ。


そこ迄考えて、ふと気付く。


「……兄様、もしかしてロセ様にリリーシア様に近付く様に仰ってます?」

「ん?ああ、アイツにそこ迄は言ってないがな。あの女を探らせては居る。」


やはりそうか。この間、ロセ様は理由は言えない、としきりに仰って居た。

それは、ロセ様より上の立場。

陛下か、兄様が命令してる事である以外、他ならない。


「因みに王家の転生者の話は、トップシークレットだ。陛下と、次期王である俺以外は知らない。勿論ロセにもおしえてない。」

「……は?」


一瞬、言われた意味が分からなくて目が点になる。王子すら知らされないトップシークレットを、何故私にさらっと教えたのか。


「いや、一応相手が転生者であれば教えて良い事にはなってるから安心しろ。ロセに伝えられない理由は、アイツが王太子でない上に転生者かどうか分からないからだ。」

「そうなのですか?」


兄様が、そうなんだよ、と肯定しながら、少し考える様な仕草を見せる。


「例えば、このままロセがフィリアと婚姻を結んだ場合。国の中枢に関わる様な立場になるのであれば、限定的ではあるが転生者については説明する事になる。お前が転生者である以上、余計に説明は必要だ。」


ここまでいいか?と問う兄様に、頷いて肯定の意思を示す。それを見て兄様が話を続ける。


「……考えたくは無いがヒロインとくっ付いた場合。この場合、俺は俺の権限を持ってあの二人を国外に追放する予定だ。まあ、強制力があるとしたらどの程度有効かは分からんが、あの女が一緒にいる以上、幾らロセが優秀でも周りの輪を乱す原因になる様な者は、要らない。」


兄弟なのに中々思い切った対応だが、兄様の性格上恐らくそれは実行されるだろう。

…恐らくロセ様がリリーシアとくっつけば、その場合は私の婚約破棄と断罪イベントがセットで行われる展開の筈だ。


王太子としても、兄様としても。

容赦をする理由は、多分何処にも存在しない。


「まあ、そうなって欲しくないからこそ、まずイベントを潰したいんだ。ロセの事はそれなりに気に入ってるし、弟として大事にも思っている。…自分の手でアイツを潰す様な状況は、出来れば回避したい。」


少し寂しげな顔を見せながらそう言う兄様に、私も哀しくなってくる。


若しかしたら、強制力の所為でロセ様はリリーシアと付き合うのかも、知れない。

……私に、冷たい目を向けながら彼女を選ぶ。


そんな展開が、現実になるかも知れない。


そう考えると、胸が痛い。あの優しい瞳が自分以外に向けられる事を考えると、涙が出そうになった。



「……悪い、泣かせるつもりは無かった。」


そんな声と共に、兄様の手が私の涙を拭った。

涙が出そう、とは思ったが、実際出てしまうとは。


……私は、そこ迄ロセ様を好きになっているのだろうか。


自分の気持ちが理解出来なくて、兄様に大丈夫です、と返して俯く。

早く涙を止めたい。

そう思ったが、兄様が優しく頭を撫でてくれ、余計涙が溢れてくる。


涙の止め方の分からない私に、兄様はずっと頭を撫で続けてくれた。


その暖かい手に、ロセ様の事を思い出して、また少し、泣いた。






「取り敢えず、俺は星祭のイベントを潰したい。」


暫く泣き続け、やっと涙の止まった私を膝の上に抱き上げていた兄様が、そう、口を開く。


「私も、異論は有りません。……ロセ様の為にも、回避して差し上げたい。」

「確かに、ロセ自身はあの女とイベントを起こす事は本意では無い筈だ。ただ、強制力と言う可能性がある以上、アイツの意思だけに任せて置く訳にも行かない。何か保険が、欲しいんだ。」


頭を撫でながらも、きっぱり言い切った兄様が、此方に視線を向ける。


「だからな、フィリア。」

「……はい……?」


その次の瞬間、兄様がにっこりと、笑う。


「ちょっと、ロセを誘惑してデートに誘ってやってくれ。」

「……はぁ!?」



有無を言わさない笑顔で笑う兄様に、頬が引き攣るのを、感じた。





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