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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
7歳、婚約篇
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夜会の謁見は、押しの強さと共にやってくる。




ロセ様に手を引かれながら煌びやかなホールに足を踏み入れる。



覚悟はしていたつもりだが、思った以上の厳しい視線に晒されて、思わずため息が漏れそうになった。


まあ、それはそうだろう。

今まで浮いた噂1つ無く、誰もエスコートした事の無かった『武の英雄』が、初めてエスコートしてきたのがこんな小娘なのだから。


睨み付ける様なお姉様方の視線と、値踏みする様な貴族達の視線に、気分が悪くなりそうだった。


「フィリア、大丈夫?」


笑顔を貼り付けたまま、辺りには聞こえない程度の声でロセ様が囁く。


「……大丈夫じゃなくてもこなさなければならないのでしょう?」


僅かに嫌味を込めて聞けば、貼り付けた笑顔のまま、そりゃそうだ、と言うロセ様の楽しそうな声が降ってきた。


全く、器用な事だ。


「今日は僕の横に席を用意してるから、座っていて。陛下への挨拶が済んだら成る可く早く退席出来る様にするから。」


この後の段取りを説明され、無言でこくり、と首を下げる。

ロセ様にエスコートされたまま用意された席に座ると、辺りのざわめきがより一層強くなった。


ふと、視線を遠くに向ければ、ちらりと桜色の髪が見える。一気に憂鬱な気分になり、思わずため息を吐きそうになったが此処でそれを出す訳には行かない。


気合を入れて、飲み込んだ。





「皆の者、静粛に。」


騎士の凛とした声が響き、陛下の挨拶が始まる合図となる。

スっと立ち上がったロセ様にエスコートされ、私もそれに倣い淑女の礼を取った。


「皆の者、顔を上げて良い。楽にして聞いてくれ。今日は、息子の為に集まってくれて嬉しく思う。後は息子本人から、皆に挨拶があるそうなので聞いてやって欲しい。」


そう言いながらちらりと陛下がロセ様に視線を送った。そのまま陛下と場所を入れ替わり、挨拶をすべく歩き出すロセ様の少し後ろについて行く。


「皆、今日は私の為に足を運んで貰い、嬉しく思う。余り畏まらず、楽しんで行って貰えると嬉しい。」


何時もの顔とは違う精悍な顔付きでしっかりと喋るロセ様の横顔に、ああ、この方は本当に王子様なんだな、と今更ながら思う。


ちらりと、下に視線を向ければ、そんなロセ様の事を頬を紅くしながらうっとりとした表情で見詰める令嬢が、何人も見える。


(……そりゃ好きになっちゃうよね。完璧王子だもん。)


見目も麗しく、強く優しい。惚れるなと言う方が無理だ。だからこそ、この後行われる発表を思うと、憂鬱になった。



「…………だ。この機会に、紹介しておこうと思う。」


まだ話を続けていたロセ様が、私を振り向き隣に誘導する。それに倣ってロセ様の横まで行くと、ゆっくりと膝を折った。


「私はこの度、このフィルリア=アルフリア=リンドノート公爵令嬢と婚約を結んだ。皆、祝福して貰えると嬉しい。」


そう言ったロセ様の言葉に、会場に拍手が溢れる。然しそれは表面的な物だと理解していた。


現に遠くの方で女性の黄色い悲鳴や、泣き叫ぶ声すら聞こえる。

その他にも貴族達の睨む様な視線に晒され内心げっそりしながら、ロセ様にエスコートされて元の席に戻った。


夜会の音楽が流れ始める。


既に疲労困憊な雰囲気に気付いたのか、ロセ様が笑顔を貼り付けたまま心配そうに声を掛けてきた。


「フィリア、大丈夫?」

「ええ、大丈夫ですが…ロセフィン様、私はいつ陛下にごあいさつにうかがえばいいですか?」


そう、問いかけると、少し考えた後今行こうか、とロセ様が立ち上がった。


「フィリア、父上に挨拶が終わればフィリアは退席しても、構わないんだけど、出来れば少し座って待っていてくれるかな」

「それは構いませんが……なぜでしょうか?」


何せ私はまだデビュタント前なのだ。夜会に長居はしない方が良い。


「僕が自分でフィリアを送りたいからね。途中退席して戻ってくるとは言え、自分の為に開かれた夜会じゃあんまり早く出て行く訳には行かないんだ。待たせてしまって悪いけど、成る可く早く挨拶回りを終わらせて来るから座っていてくれるかな。」

「……私、ひとりでも大丈夫ですが……」

「それは駄目。」


そう言うとロセ様は私の手を引いて動き始める。この件に関しては譲るつもりが無い、という事らしい。まあ言い争いしてまで拘る事でも無いので、大人しくロセ様について行った。






「父上、今宜しいですか?」


ロセ様が談笑中だった陛下と皇后陛下に話しかけると、くるりと此方を向き笑顔を見せてくれた。


ロセ様と同じ黒い髪と、蒼い瞳。ロセ様とタイプは違うが、この方も負けず劣らず美形だ。

その横で微笑む皇后陛下も、計算するとそこそこの年齢の筈だがそれを感じさせない位衰えない美貌を持っている。


「ああ、今丁度お前達の話をしていたんだ。」

にこにこと笑う陛下に、ロセ様がそうですか、と面白く無さそうに答えた。


「父上に、フィリアがご挨拶をしたいと。……フィリア。」


ロセ様に促されてお二人の前まで進むと、淑女の礼を取り口を開いた。


「国王陛下、皇后陛下におかれましてはごきげんうるわしゅう。ごあいさつが遅れました、私リンドノート家が長女、フィルリア=アルフリア=リンドノートともうします。このたびはロセフィン様との婚約、身にあまる光栄でごさいます。」


「フィルリア、顔を上げるが良い。」


発言の途中で声を掛けられ、何か失礼があったのだろうかと内心焦りながら顔を上げると、楽しそうににやにやと笑う陛下の視線とぶつかる。


あれ?と思っていると笑いながら陛下が口を開かれた。


「……成程。ロセフィンが拘って居るからどんな子なのかと思えば、中々どうして。フィルリア嬢、そう畏まらなくても大丈夫だ。私の事は父と思って接して欲しい。」


そう言われても、そんな事できる訳も無い。

困惑の中ちらりとロセ様に視線を向ければ、面白くなさそうに陛下に視線を向けている。


「そうよ、私の事は母だと思って頂戴。あの可愛げの無いロセフィンがこの短時間で囲い込む程執着するなんて何の冗談かと思ってたけど、貴女の様な可愛いお嬢さんがロセフィンと婚約してくれて本当に嬉しいわ。」


陛下に続いて皇后陛下までそんな風に言われても、出来る筈も無い。思っても見なかった大歓迎に、流石に戸惑う。


と言うか御二方共ロセ様に地味に辛辣じゃないですかね?


「父上、母上。フィリアは僕の婚約者です。勝手に娘にしないで頂けますか?」


にっこり笑いながらの発言だが、周囲の空気がひゅっ、と冷たくなった気がする。ぶるりと身震いしながら、ロセ様を見上げるとぎゅっ、と再度強く手を握られた。


「あらやだ大人気ない。そんなに心が狭いとフィリアちゃんに嫌われるわよ?」

「そうだぞ、余裕の無い。お前のアドバンテージなんぞ年上である事位なんだから、精々嫌われない様に足掻けよ。」


笑いながら話す陛下と皇后陛下に、口を挟む余裕も無い。

と言うか何時もの威厳あるお姿しか見た事無かったから知らなかったけど、こんなにフランクなんだな、王家……。余り知りたく無かった。


ロセ様ははぁっ、とひとつため息を吐くと、余所行きの笑顔を貼り付け私の手を握り直した。


「……それでは、ご挨拶も済みましたので、これで。フィリアはデビュタント前ですので、これにて御前失礼致します。」


にっこりと笑いながら宣言して、そのまま元の席に向かって歩き出す。



引っ張られながら僅かに後ろを向くと、ひらひらと手を振る陛下と皇后陛下の姿が見えた。




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