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世界はフラグであふれてる!  作者: 紗倉
7歳、婚約篇
14/88

転生令嬢、夜会について考察する。


(どうしてこうなった……)


煌びやかな雰囲気の部屋に似つかわしくない死んだ表情で、特大のため息を吐く。


先日、お見舞いと称したよく分からない訪問を、王子から受けた。

それから僅か3日。本日は夜会の当日である。


そう、たった3日しか経ってないのだ。


だから早いよ王子!どんだけ急いでるんだよ!

完璧に外堀埋められててちょっと引いたわ!


お陰で本来はデビュタントも済ませていない私が、何故か夜会の席に出席する羽目になったのだ。

両親にエスコートされながら城内を歩く間、周りの視線がかなり痛かった。


そして控え室の前まで来ると、お父様は心配顔で、お母様はウキウキしながら送り出して下さった。


何だか前世で聞いた子牛が売られて行く時の音楽を思い出した。



「ため息吐くと、幸せが逃げるって言わない?」


はっ、と声がした方を向くと、いつの間にかロセ様が楽しそうに笑って立っていた。

腕を組んで壁に寄り掛かり、優雅に笑う姿は不覚にもかっこいい、と思ってしまう。


「……いらっしゃっていた事に気付きもせず、大変失礼致しました。ロセフィン様におかれましては、ご機嫌麗しゅう。」


嫌味な程丁寧に挨拶をすれば、ロセ様が苦笑する。然しこの程度は想定内なのだろう、最初は苦笑していたがふと、何か思い付いた様な顔で笑うと私の所まで来て、手を取る。


「ご丁寧に、ありがとうございます、フィルリア嬢。今日のドレスは貴女の瞳と同じ色なのですね。空の色を移したかの様なドレスが、貴女の綺麗な髪に良く似合っている。日中で見る貴女も素敵ですが、今日は夜の女神の様で更に美しいですよ?」


極め付けに私の手の甲にちゅ、とキスをして、にやりと笑った。


「……っ!」


思わず顔を真っ赤にして睨み付ければ、ロセ様は楽しそうに笑う。


「フィリア、僕に勝とうなんてちょっと早いんじゃない?」

「勝ち負けの問題ですの?コレ……。」


未だ色の治まらない頬を抑えながらそう呟くと、んー、と間延びした声が返って来る。


「どうだろうねぇ?少なくとも僕としては表立って君の事を口説けるからね、どっちでも良いんだけどさ。」

「口説くって……」

「ん?口説いてない様に聞こえた?」

「……からかってる様になら聞こえましたわ。」


そう答えると、僅かにむっとした表情を向けられる。ロセ様は心外だなぁ、と呟くと、私の横に座った。


「君をからかった事なんて……まあ、そんなに無いよ?」

「無いよ、と言わない辺りが正直ですのね。」

「嘘は吐かない主義だからね。」


悪びれずそう言うロセ様に、思わず苦笑する。

本当にこの方は、こう言う所がずるい。


「確かに少しからかう気持ちがあったのは認めるけど、でも言ってる事は本気だよ?ドレス、良く似合ってる。可愛い。」


にこりと笑いながら不意打ちの様に褒められ、少し治まった筈の頬がまた赤くなる。


本当に、ずるい。


「……ロセ様も、素敵ですわ。」


視線を逸らしながら絞り出す様に言えば、ロセ様は一瞬きょとん、とした顔をした後嬉しそうに破顔した。


「フィリアに褒めて貰えるとは、思わなかった。……成程、思った以上に嬉しいものだね、ありがとう。」


何の思惑も無くただ嬉しい、だけが込められた笑顔に、心臓がどきりと跳ねる。

向けられた好意に、思った以上に嬉しさを感じている自分に戸惑った。


「私、何かロセ様に好かれる様な事、しましたか…?」


この間からずっと思っていた疑問を、口にする。

こんな風に好意を向けて貰える程好かれる様な事、何も無かった筈だ。


「ん?そうだねぇ……。したかしてないか、って言われると、大した事はしてないかもね。」


だから、思い当たらなくて当然かも、と付け加えながら、笑う。


それならば、何故私なのだろう。


「でもね、フィリア。この場合何かしたかは問題じゃない。君が君で、僕が僕である以上、僕は君が好きなんだと思うよ。」


全く説明になって居ない説明をして、1人で納得しているロセ様に、少し苛立ちを覚える。

まともに説明をして下さる気は無い、という事か。


「その様な言い方では、答えになってないと思うのですが…」


ため息を吐きながらそう言えば、ロセ様はクスクスと笑う。


「そう?僕の中ではこれ以上無いくらいに正確な説明なんだけどねぇ。どうやら伝わらない様で残念だよ。」

「左様で御座いますか……」


見解の相違だね、と楽しそうに言うロセ様に、これ以上の追求は諦める。

どうせ、説明された所で状況が変わる訳では無いのだ。ロセ様の気持ちは読めないが、それで私の気持ちが変わる訳では無いのだから。


「この間、君の事が好きだから、って言ったら信じるか、って聞いたでしょ?」

「……ええ。聞かれましたわね。」


お茶会の日、ロセ様の部屋で。

あの時私は即答で信じない、と答えた。


「今でも、答えは同じかな?……君の事が好きだと言ったら、信じない?」


そう言われて言葉に詰まる。ここ数日で、すっかりロセ様に慣らされてしまった私は、彼からの好意を、もう疑え無い。


「ロセ様のお言葉は、否定しませんわ。……私の答えは、変わりませんが。」


本当は少し変化しているのだけれど、それを伝えるつもりは無い。そっか、手強いなぁ、なんて言いながら、ロセ様が苦笑する。


「まあ、それで良いって言ったのは僕だからね。時間はたっぷりあるし、気長にやるよ。」


そう言って笑うロセ様に、僅かに罪悪感を覚える。そんな、私の表情を読んだのか、ぽんぽん、と私の頭を撫でた。


どうにも、落ち着かない気分に、させられる。




「……さて、そろそろ時間かな?行こうか、フィリア。」


時計をちらりと見て立ち上がると、私に向かって手を差し伸べる。

私はその手をとって、1つため息を吐いてから立ち上がった。



「……ごめいわくおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたしますわ、殿下。」


僅かに舌っ足らずな調子で話しかけると、その様子を見てロセ様が楽しそうに笑った。


「此方こそ、宜しくフィリア。成る可く早く退席出来る様に計らうから、少しだけ頑張ってね。」




ここから先は、7歳の公爵令嬢としてのフィリアだ。僅かに気合を入れ直しながら、ロセ様と一緒に控え室のドアを、潜った。




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