序章 記憶は紅茶と共にやってくる。
異世界転生始めました!初投稿です!
暇つぶしになれば幸いです。
何の切っ掛けも無く、唐突に思い出したのだ。
思い出すにしたって、何と雑な事だろうか。そう思いながら、広々とした自室で1つため息を吐いた。
確かに、昔よく見ていた小説や漫画の中で定番の流れではあるが、それにしたって彼女、或いは彼らは何らかの切っ掛けを持って記憶を思い出す流れではあった筈だ。
それは例えば攻略対象に会っただとか、高熱を出しただとか。
何の切っ掛けも無く、ただ紅茶を飲んでいるだけの時に思い出す、なんて流れでは断じて無かった。
しかしまあ、だからと言って思い出してしまった物はしょうがないのだ。
諦めにも似た気持ちで再度ため息を吐きながら、自分の目の前にある大きな鏡を見詰める。
ゆるくウェーブを描くプラチナブロンド。
年の頃は、7~8歳位と言ったところか。
青く澄んだ瞳は空の色を移したかのように輝いている。
記憶の中の自分とは似ても似つかない姿。
それでも、その憂いげな表情の中に以前の自分の面影がある様な気がした。
フィルリア=アルフリア=リンドノート
それが今の自分の名前である。
なるほど、と心の中で思いながら、確認の様にぽつりと言葉を落とした。
「……なるほど、これが異世界転生、というやつなのね。」
鏡の中の少女が似つかわしく無い落ち着いた、鈴の様な声で喋った。