表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

月夜の約束と悪魔

時が流れるのは早い。それが怒涛の展開となれば尚更。


異世界に召喚されてから早二日目の真夜中。

歩はふと目が覚める。

反対側のベットに腰かけながらシエルが窓の外を見ていた。

既に灯りは決してある為月の光が窓から差し込んでいる。人間離れした美貌を持つシエルに差し込む月光、どこか神秘的な美しさに見惚れてしまう。


くどいと思うがしょうがない。今まで友人の凛を除く家族以外の異性との接点が余りない上にとても人間とは思えぬ美貌を持つ女の子が傍にいるのだ文句は勘弁してもらいたい。


歩の視線に気が付いたのかシエルがこちらに目線を合わせ柔らかく微笑んできた。

目を合わせるのが気まずくなってしまい、それを誤魔化すように歩は話を振った。


「どうしたんだシエル、寝れないのか?」


シエルは黒い古風なドレス姿のままだった。


「いえ、私達悪魔に睡眠は必要ありませんので。一応眠ることも出来ますが」

「じゃあもしかして、召喚された日の夜ずっと起きていたのか」

「そうですね。あの日は一晩中起きていました」

「それって退屈じゃないか?」

「そうでもありません。月を眺めるのもいいものですよ」

「そうか」


歩は窓の方を見る、そこには闇色の空と満月が浮かんでいた。


「これは地球と変わらないんだな」

「地球ですか?」

「ああ、俺たちの住んでる星の事だよ」

「歩さまのいた世界はどの様なところなのですか?」

「そうだな、まあ平和だったかな」


まだ二日しか立っていないが、色んな事が一気に起こりすぎて懐かしいとすら思えてしまう。

無論本当に帰れるのかと不安に思う気持ちもあった。

それでもやはり帰りたいと思う。


「やっぱり帰りたいな」

「帰りたいのですね」

「ん?まあな、元の世界に帰りたいよ。あの王様に協力してくれなんて言われていつ帰れるかわからないけど、家に帰りたい」

「そうですか。微力ながら力にならせて頂きます」

「ありがとうシエル」


そこで歩は疑問に思ったことを何気なく聞いてみた。


「もし俺が元の世界に帰った場合シエルはどうなるんだ?」

「そうですね。歩さまがに元の世界に替えられた場合、私は歩さまが死ぬまでこの世界に存在するだけです」

「それって・・・・」

「どちらにしても私は結局異界に戻されるだけです」


そうただ淡々と事実を告げるシエル。自らの事なのに何とも思ってないというか思わないのだろう。

ただそれが当然の事。何の疑問の余地もない。


もし自分が元の世界に帰った場合、シエルに待っている結末は決まっているのだ。

ただ、記憶の無いまま存在している時間が長いか短いか。ただそれだけ。


歩はあることを考えていた。

それをそのまま口に出す。


「じゃあさ、俺と一緒に来ないか?」

「え?」


歩の言葉に驚きをあらわにして目を見開くシエル。多分そんなこと言われるとは想定してなかったのだろう。


「流石に記憶の無いシエルを置いて一人で帰るわけにもいかないしな」

「歩さま、私の話を聞いていましたか?」

「聞いてたよ、だからこそ一人おいていけない。まあシエルが嫌なら無理強いしないが」

「嫌かという話ではないかと思われます。私は結局・・・・・・」


結局異界に戻されるのは分かっているのにどうしてそんなことを言うのかわからない。そう言いたいんだろう。


「だけど、シエルが消えるまでの間。俺は一緒にいてやれる」


言ってて恥ずかしくなるようなセリフだとは思う。

実際言ってて恥ずかしい。

穴があったら入りたいレベルの発言だ。それでもこの言葉は言っておかなければならない。


「俺が帰った後、シエルは記憶の無いままこの世界に存在するんだろ。それって寂しくないか」


自意識過剰かもしれないが、記憶の無いシエルには居場所がない。つまり今のシエルの居場所は自分自身たった一人。

もし自分自身が元いた世界に帰ったらシエルの居場所はどうなるのか。

それが不安だった。


「一つ聞いてもよろしいでしょか」


ポツリとシエルが問うてきた。


「どうして歩さまは、私にそこまで言ってくれるのでしょうか。」


そうシエルが聞いてきた。

シエルが疑問に思うのも当然だと歩自身も思う。自分たちは会ってまだ二日目なのだ。

幾らこれから一緒に戦うとなっているとしても些か親切にしすぎてる。

それに加え自分は兵器なのだと。

歩は自分の頭をカリカリとかく。


「まあ、これは大輝からよく言われることなんだけどな。俺は”自分には本気になれない癖に他人の為なら全力を出せる”らしい。はっきり言ってしまうと記憶喪失の可愛い女の子を見捨てられなかったってだけ。がっかりだったか大した理由じゃなくて」


俗物的な理由。

ただ単に見捨てられなかった。心配だったから。それに自分の性格がそうだったため。

そんな凡人らしい理由。それだけだった。


「いえ、逆に納得いたしました。それにしても兵器を女の子扱いですか」


シエルは可笑しそうに笑った。


「シエルが兵器って言われても正直ピンっとこないしな。それに昨日言ったばっか出しな『抗って生きる為に考えよう』って」

「そうでしたね。私も歩さまの世界に行ってみたいですね」

「そうか、じゃあ俺たちの生き残るための目標というか約束かこれ」

「約束ですね」


そして二日目の夜もふけていった。

更新が遅れてすみません。もう少し日常パートが続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ