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魔術と従者

朝食を終えた後、歩達全員と悪魔が講義室に集められていた。


内装はシンプルで前に黒板と教壇があり、長机と長椅子が段々と置いてある。

そこに座らされ少し待つように言われた。


5分位だろうか、扉を開ける音がして男が入ってきた。

自分達と同じく黒い軍服を着た三十代くらいの男だ。


その男は教壇の前に立ち、講義室内を見回す。

全員がいることが確認できたのか口を開いた。


「さて、はじめに自己紹介をしておこう。俺は軍本部所属オリバー、軍位は少佐。そしてお前らの部隊長兼教官となる。よろしく頼む」


そう言ってオリバーは自己紹介を済ませた後、二枚の紙を配った。


「よし、全員自分の名前が書いてある紙を持ったな?この二枚の書類について説明するぞ」


配られた紙には自分の名前が書かれていたのだが、驚いてしまった。

なぜなら見たことも無い文字なのに書かれていることが分かったからだ。

他のクラスメイトも不思議そうにしていた。

オリバーは説明を続けた。


「どうして知らない文字が読めるのか不思議なのは分かるが二枚目の書類の時説明するから今は一旦話を聞いてくれ。まず時間割が書いてある書類を見てくれ、これはお前たちが受ける訓練の時間割だ。お前たちには基本的な軍事訓練を受けて貰う、流石に右も左もわからんド素人を前線に出すわけにはいかないからな。まあやることは、基礎体力訓練、銃の扱い、戦術、”魔術”や悪魔の事を学んで貰う。そして二枚目だが一回自分の書類を見てくれ」


そう言われ歩は手元にある紙を見た。

紙には、名前や身長血液型などまで書いてあり左上には『Ⅾ』と判子で押されていた。


「見てくれた通り、この書類はお前たちの個人情報が書かれている。お前たちが召喚された時にデータを取らせてもらった」


個人情報保護法に触れそうな事を言ったオリバー少佐。

歩を含めた男子は別に何ともないが、女子達(夕子先生も入れて)はオリバーの方を睨んでいた。

だが悪いと思っているのか苦笑している。


歩は逆にそれを聞いて納得していた。

どうして服のサイズを測っていないのに軍服やブーツのサイズがあっているのか、疑問に思っていたがようやく納得出来た。


オリバーも自分が取ったわけでもないのに役回りの為睨まれる。


(ドンマイとしか言いようがない)


歩はオリバーの状況に少し同情してしまう。


オリバーは「ゴホン」っとわざとらしく咳をして話を戻す。


「まあお前たちに何も言わず取ったのは悪いと思っている。苦言は後で受けよう。じゃあ話を戻すが二枚目の書類の左上を見てくれ、そこに文字が書いてあるだろ。それは魔力容量の大きさを表している。Aクラスが一番魔力容量が大きく、Ⅾクラスが平均だな。さてここでお前らが疑問に思っている事についてだが、簡単に言えば魔術でお前たちの頭に直接言語情報を送り込んだからだ」


オリバーは次に魔術についての説明を始めた。


「さて、お前らがさっきらから疑問に思っているだろう『魔術』について説明する。魔術ってのは俺達の世界にある魔力を使った技術だ。どういう現象を起こしたいか演算術式に起こし、そこに魔力を流すことによって望んだ現象を起こすそれが魔術という技術だ。それと魔力についてなんだがこれは魔術を起動させる為のエネルギーと思ってくれ、魔力容量が大きい奴ほどエネルギーを大量に術式に流すことができ威力も上がる。だが魔力は人によって保持できる容量が決まってる、これは幾ら努力しても変わらないと覚えておいてくれ」

「あの~質問いいですか?」


歩はオリバーに質問した。


「俺達どうやったら『魔術』を使えるんですか」


それはそこにいる全員の疑問だった。

よくライトノベルとかでは何となく魔力を感じたりしたりしてるが、歩自身自分の体に何も感じない。

第一に魔術を扱うための演算術式とやらも知らない、本当に扱えるのか心配だった。


「正直に言って今から教本を一から教えるとなると、時間がかなり掛かる。何せ演算術式は難解だからな異世界から来た魔術基礎もなってないお前らじゃ、ぶっちゃけ正攻法で行けば数年かかるだろう」

「なっ!?」

「だが、安心しろ。それはお前らの隣にいる『悪魔』が解決してくれる」


そう言ってオリバーは歩の隣に座っているシエルを見た。


「名無しでもやれるか?」

「大丈夫です。私自身の記憶が無くとも一般知識はございますので」

「そりゃ良かった」


オリバーの意図を汲み取ったのかシエルが肯定を示した。

シエルが歩の方を体ごと向ける。


「では歩さま。右手を拝借致します」

「えっああ」


呆気にとっれながらも右手をシエルの前に出す。

シエルは歩の右手を自身の両手で掴んだ。


「多少違和感がありますが、お体には害はないのでご安心ください」

「ああ、わかった」


次の瞬間だった。

シエルに包まれた右手から温かな熱が伝わってきた。その熱が腕たどり体中を巡って言った。

丁度いい温度のぬるま湯に漬かっているような感覚。

しかし、その感覚も次の瞬間には違和感に変わる。


「うっ」


思わずそんな声が出た。


頭の中を知らない知識が駆け巡り、『知らない知識』を理解できる様に無理矢理叩きこまれている。


そんな得体のしれない違和感がほんの一瞬体を駆け巡った。


「大丈夫ですか。歩さま」


シエルが心配そうに歩を見る。

まだ若干の違和感があるもののさっきにに比べたら落ち着いていた。


「ああ、大丈夫だ。少し頭が混乱しただけだ」


そして歩は頭の中に入ってきた情報を理解した。


これは魔術の知識なのだと。魔術の基礎知識、演算術式の構築、演算処理の計算方法、発動の仕方。

そして、体の心臓の部分に感じる熱つまり魔力を感じた。


シエルが歩にしたことは言語理解の魔術と同じ事をしたのだろう。


その後、次々とクラスメイト達に魔術の基礎知識をつぎ込まれた。馴れない感覚に戸惑っている生徒も数人いたが無事全員の魔術知識の刷り込みが終わった。


クラスメイト達の様子見てオリバーは、今日このまま続けるのは無理だと判断して解散の号令を出した。


解散した後やはり気分がすぐれないのか、宿舎に戻るクラスメイトがちらほらいた。宿舎に戻らないにしても、どこか気分を紛らわすために散歩に出かけるクラスメイトがいた。


歩もどこか気分が優れず、大人しく宿舎に戻ろうとしていたところ見慣れた背中を見つけた。


「よう、大輝大丈夫か?」

「おう親友。この格好を見てそれ言うとか皮肉にしか聞こえんぞ」


そういう大輝は凛と甲冑を着た悪魔セレストに両脇を抱えられ、ぐったりとしていた。

先程の知識の刷り込みの時一番具合悪そうにしていたのは離れた席に座っていた歩からも見えたのだ。


「マジで酷い船酔いした時の気分だわ。うっぷ」

「そうか、ご愁傷様だな」

「はあ、大丈夫大輝?」

「大丈夫ですか?大輝さん」

「あれ、これって両手に花っていうんじゃね?俺今勝ち組じゃね」

「その減らず口が叩けるなら大丈夫そうだな」


そんなやり取りを見ていたシエルに声を掛ける人物がいた。凛が契約した悪魔フェリスだった。


「貴方の契約者、凄いね、こんな状況でも冷静になれてる」

「あなたは、確か凛さまの悪魔のフェリスさまですよね」

「うん、そう、それよりも彼の事」

「先程も歩さまの事を見ていられましたよね。それと何か関係が?」


シエルは朝の事を思い出す。

自己紹介をした後、歩の顔をじっと見ていたのだ。


「彼、凄い、この状況で冷静に考えられている事が、でも・・・・・」

「でも?」

「放っておいたら、いつか壊れてしまいそう」

「ッ!?」


フェリスの発言にシエルは驚きで声が出なかった。


「この状況で冷静に考えられるということは、常識的な思考が、出来るということ。でもまともな精神ほどあの怪物が生み出す、惨状に、耐えられない。耐えられたとしても、また前線に行き、現実に打ちのめされ、心に重荷を負って、いつか、壊れてしまう」


フェリスは歩に視線を向けていたが、そこではないどこか遠くを見ているようにシエルの目には映った。


「私は、彼に似た人を、よく知っている。今の彼にそっくりな目だった」

「それは・・・・・・」

「だから、あなたが、傍に居てあげて、記憶や名前がないとか、関係ない、彼が壊れそうな時、支えてあげて、私も見張って置くから」

「貴方はどうして、そこまで歩さまの事を心配なさってくださるのですか?」

「私は、契約者の悲しい顔は見たくない、それにもう目の前で、誰かが壊れて欲しくないから」


そういったフェリスの顔は、何かを思い出し悔やんでいるようだった。


「そうですか、フェリスさまのご忠告しっかりと心に止めておきます。私も歩さまを失いたくはありませんから」


記憶も名前もない自分、二人で生きる為に考えようと言ってくれた。

ただ漠然とした存在定義の中で、彼が名前を付け個人として認めてくれたことがどんなに嬉しかったか。


(例えこの親愛が、雛の刷り込みの様なものだったとしても私は貴方を支え、貴方に”付き従います”)


そう改めて決意を固めた。

シエルを見てフェリスは満足そうに微笑した。


「それじゃあ、いこう」

「ええ、行きましょうか」


そう言って二人の悪魔は自らの契約者の後を追いかけた。

凛の悪魔の名前をベルからフェリスに変更しました。

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