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プロローグ

土煙が巻き上がり周囲の建物がまるでおもちゃのように破壊され崩れ落ちる。辺りは悲鳴と怒声が鳴り響き、黒い軍服を着た軍人の男たちは目の前の者に対して半自動小銃(ライフル)を構えて発砲している。


そんな中狭川歩(さがわ あゆむ)はこの地獄の様な光景を見せられていた。


錆びた鉄と肉が焼け焦げた嫌な死臭が辺り一帯に充満している。周りにはさっきまで生きていた()()が転がっている。


正に地獄絵図といえる。


そしてこの地獄絵図を作り出したたった一体の『化け物』とたった一人でその化け物と戦う『少女』がいる。


そうだこうしてはいられないと自らに喝を入れた。戦わなければならないのだ。そうしなければ自分もあの少女もここで死ぬ。例え相手がこの世界を滅ぼした程の常軌を逸した化け物でも、自分がほとんど無力だろうとも。


なぜ日本人の平凡な高校生である自分が、この理不尽でご都合主義も救いも一切ない残酷な世界で抗って生きていかなければならなくなったのか。それは三か月前まで遡る。




平均平凡。狭川歩を表すならその言葉が当てはまるだろう。

特に運動や勉強が出来るわけでもなくそんなに趣味が多いわけでもない所謂どこにでもいる黒髪の高校生。強いて上げるとしたら身長が背の順だと後ろの方というくらいだ。


遅くも早くもない時間に学校に付き、教室の扉を開けさっさと自分の机に座った。

さてホームルームまでどうしようかと悩んでいると机を挟んだ自分の前にどかっと座ってくる男子生徒がいた。


「よお親友!相も変わらずやる気のない目してんな」


と話かけてきた人物。短く切った茶髪に屈託のない人懐っこそうな笑みを浮かべる藤宮大輝(ふじみや だいき)は歩の数少ない友人の一人だった。


「目つきの事は俺の遺伝子に文句を言ってくれ、それでなんかようか大輝」

「嫌だな~~親友!挨拶するくらいなんでもないだろ」

「いや、明らかにいつもと口調が違うんだが」


こういう喋り方をするときは何か頼み事をしたいのだと経験が言っている。


歩は疑いの目で見る。大輝は目線を逸らす、物凄い逸らす。


「じゃあ俺はお前から何を頼まれても何もしないからな」


すぐさま大輝が頭を下げる。


「すんません助けてくださいお願いします」


はあ、と深いため息を漏らしながら歩は聞いた。


「でどうしたんだ。まあ粗方数学の宿題を見せてくれって所か」

「さっすが親友!!俺の事よくわかってる。最早以心伝心ってレベルだな」

「すまん。流石にそれは気持ち悪いからやめろ」

「ひでぇ!?しかもマジレスされた」

「大体、俺じゃなくても凛がいるだろ。家も隣なんだし」


凛というのは大輝の幼馴染の少女であり、常日頃から大輝の世話を甲斐甲斐しく焼いている苦労人である。


「早々それなんだよ聞いてくれよ歩、あいつ朝会った時宿題見せてくれって言ったら『はあ、あんた宿題っていうのは自分でやるものでしょ。大体あんたはいつもだらしなすぎ、もう少し生活習慣見直しなさい』とか言って説教始めやがったんだぞ」

「でも正論だったから言い返せなかったんだろ」

「くっ!」


歩からの追撃にわざとらしくリアクションをとる大輝。正論すぎて何も言い返せない。

だが言われっぱなしも悔しいのかでも、と付け足してきた。


「だからって朝からチョップするこたねえだろ!あの暴力ゴリラ女将来絶対嫁の貰い手ねえよ」


腕を組みながらうんうんと言っている大輝は気付いていなかった死の気配がもう後ろまで来ていることに。


「へぇ誰が暴力ゴリラ女だってぇ」

「そりゃかの凛さんに決まってんだろ。ン?」


そこで違和感に気付く大輝さん。大量の冷や汗をかき始める。

大輝は歩に恐る恐る聞く。


「なあなあ歩さんや今しゃべりましたよねそうですよね」

「あのな大輝この世界は残酷なんだ」


ご愁傷様と思いながら歩は答えた。本当にこいつは運が悪いなとも思いながら。

そして大輝は後ろを振り返った。

そこには長い黒髪をポニーテールにし、口はにっこりと笑いながら目は全く笑っていない女子生徒が拳を鳴らしながら仁王立ちしていた。


「げえ!?やっぱり凛だった」


今現在怒っているこの女子生徒こそ大輝の幼馴染。名前は広瀬凛(ひろせ りん)。切れ長の目は鋭くだが冷たいというよりかっこいい印象を与えている。顔も整っており女子にしては若干高めの百六十センチメートルの引き締まった体、名前の通り凛とした雰囲気を与える女子だ。


「それで何か遺言はあるかしら、だ・い・き」

「いやーちょっとまっ、ぐへぇ」


大輝が言い終わる前に凛の素早い手刀が落とされた。

そのまま大輝は脳天を抑え痛みでうなっている。

それもそうだ。凛は実際に合気道を習っており小さな大会だが何回も優勝している実力者だ。そんな人間の手刀を受けたら溜まったもんじゃない、大輝の自業自得なのは分かるがこれは同情してしてしまう。

でも凛がここまでキレるのにも理由がある。

大輝が顔を上げ噛みつくように言う。


「何すんだてめえ」

「それはこっちのセリフでしょ!!人がいつもいつも誰の世話を焼いていると思ってんの?」


この言葉に大輝も黙り込む、実際大輝は凛にかなり世話を焼いてもらっている。

両親同士が仲がいいのに加え、大輝の両親は共働きでありそのよしみから凛は朝起こしにくる事から炊事洗濯掃除までまかせっきりなのである。


「もうそのくらいでいいんじゃないか凛」

「はあごめんなさいね朝から騒いで」

「いや大丈夫だよ、お前たちの夫婦漫才は見慣れているから」

「おい歩一体どう見たらこの暴力行き遅れ決定ヒス女と俺が夫婦になるんだよいやないって」

「あんたねぇ」


凛は流れるように大輝にスリーパーホールドを決める。

完全に決まっており「ギブギブ、閉まってる閉まってる」と凛の腕をぺしぺし叩いている。

まあ凛の気持ちは分かる。

いくらお隣で両親同士が仲良くて幼馴染だからと言って普通はこんなに世話は焼かない後は察すればわかる。

自分自身色恋沙汰にさといわけでもない。

だがこれは見てればわかることなのにどうしてこいつはそこんとこ気が付かないか歩も疑問に思う。

大輝の顔が流石に青くなってきたので助け舟を出してやる。


「凛そろそろ離さないとそいつ窒息しそうだぞ」


歩に言われて凛は腕をほどいた。

凛はまだ何かすっきりしない感じだが。


「お前さ逆に気が付かないとか凄いな」

「えっ何のことだ」

「凛のこと」

「凛がどうした」

「ちょっ歩!?」


こんな感じでいつも道理の会話をしている時。


「おい狭川、陰キャのくせに調子乗ってんじゃねえよ」

「それな陰キャなら陰キャらしく部屋の隅で大人しくしてろっての」


そんな嘲笑が聞こえた。

何が面白いのかゲラゲラと笑い出す四人の男子生徒達。

声をかけてきたのは西山大輔(にしやま だいすけ)といい、何故か歩を目の敵にこうして意味の分からないいちゃもんを付けて絡んでくるグループの筆頭だ。その近くで笑っている取り巻き三人、この四人グループが飽きもせずちょっかいを出して来ていた。


こういうやつは無視に限る。というか相手するのが正直面倒くさいというのが歩の感想だった。

しかし何もしないのも尺に触るので歩は左右を見回した後西川達を見て軽く会釈して頭を傾げた。

そして次に大輝と凛を見た。

歩の行動を察したのか、大輝と凛も外国人ばりの肩をすくめチラチラと西川達を見て「えっなにあの人誰に話しかけてるの、大丈夫」と言わんばかりの視線を向ける。

歩達のリアクションにより西川達が周りからクスクスと笑われてしまう。

西川は怒りと羞恥で顔を真っ赤にして逆上した。


「ふっふざけんな。なめてんのか!!」


いや、舐めてる舐めてない以前にその程度で逆上すんのか。最早呆れを越して驚きの方が凄い。

歩達が呆れているその時だった。


「いや、ふざけてるのは君の方だと思うが」


そう言って止めに入ってきたのは天野佑司(あまの ゆうじ)。如何にも主人公みたいな名前の彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツまで出来る逆に欠点を上げる方が難しい位の完璧超人。

それに加え身長も百八十センチメートル近い高身長に細身ながら引き締まった体。誰にでも優しく、正義感も強い。そしてどこのラノベの主人公ですかというくらいモテまくるモテまくる筋金入りのモテ男だ。


「さっきから聞いていればちょっかいを出したのは君の方だろ。人に注目されるのがいやなら始めからちょっかいなんて出さないことだ」

「ほらもうすぐホームルームだ席に座ったらほうがいいと思うよ」


流石に分が悪いのか西川はこちらをにらみながらしぶしぶ自らの席に戻っていった。

「ふう」と息を吐いた後、佑司はこちらに苦笑しながら振り向いた。


「ごめんね。もう少し早く仲裁に入った方が良かったね」

「いや、大丈夫だ。礼を言う」

「そうね、私からもお礼を言うはありがとう天野君」

「まあサンキューないい加減あいつら鬱陶しかったんだ。全く歩の何が気に入らないんだか」

「それは僕もわからないな、じゃあ僕も席に行くから。また何かあったら言ってくれ力になるから」


そう言って佑司は席に戻っていた。

去ってく後ろ姿を見ながら歩達三人は思った。

((( イケメンだ )))と。



そのあと、黒縁眼鏡が特徴の担任白井夕子先生(二十六歳)が教室に入ってきてホームルームが始まった。


その時だった。誰が始めに気が付いたかはわからない。


教室の中心に光り輝く円環と幾何学模様が現れた。その異常事態に周りの生徒も気が付いた。

少しの間全員が唖然としていたが、そうしていられなくなった。

光る円環は大きさをましついには教室全体を覆った。それに加え光も徐々に輝きを増し駆動音が鳴り響く。


少しの硬直の後、この異常事態に意識がようやく追いつき悲鳴を上げる生徒達。

夕子先生が「今すぐ教室から出・・・」そう言いかけた時。円環の輝くがまるで爆発したようにカッと光ったのは同時だった。


そしてこれが「俺」と「悪魔」が理不尽な世界に抗って生きる事になった運命の始まりだった。

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