私、能力は適当って言ったよね!
こんにちは。私ですよ。絶世の美女こと神です。
どうやらチーレムは本当にチート野郎だったみたいで、結構焦っています。
何故、あんな出鱈目な力を与えたのかは忘れましたが。
いま、チーレムは三人目の少女と出会ったところですね。
「君は誰だ?」
チーレムが目の前に現れた少女に問いかけました。
彼女は、青い肌に黒い翼を生やした如何にも人外感溢れる容姿を持っています。
これは、どう見ても悪魔ですね。
私の記憶が正しければ彼女は低級悪魔だと思います。
種族とかは覚えていませんけど、多分雑魚だと思います。
「私は低級悪魔の――いや、一介の低級悪魔が貴方様の様なお方に名乗りを上げるのは無礼ですね……」
「どういうことだ? 俺はそんなに偉い人間じゃないぞ?」
悪魔って種族は自分より目上には意外と礼儀正しいのですよね。
まあ、実力主義社会なので強さでそういうのは判断しますが。
そう考えると、何をどうしたらチーレムが目上だと思えたのでしょうか?
ちゃんちゃら謎ですね。
「その剣。伝説に語られる聖剣ですね?」
「えっと、いや。これは俺の魔法で作った武器だ」
「なにっ!? よもや、聖剣を生み出せるというのですか!?」
「いや、生み出せるというか……。というか、聖剣なのか、これ?」
微妙に会話が噛み合っていませんね。
といいますか、チーレムが持っている剣は恐らく本当に聖剣で間違いないでしょう。
彼は、あれを作る時に脳内で聖剣っぽい武器を思い浮かべながら魔法を使ったはずですから。
もっとも、あの悪魔っ娘が言っている聖剣とは違うと思いますが。
「――! 成程。貴方様の考えが読めました」
「ん、じゃあ教えてくれるか? これは聖剣なのか?」
「私に付いてきてくれますか? 案内したい場所がございます」
どこに行くのでしょうかね?
あの悪魔っ娘、考え読めたとか言ってましたけど絶対嘘ですよね。
なんでチーレムの剣が聖剣か否か答えるだけで、場所移すのでしょうか?
どのみち、答えるならここでもいいと思うのですが。
というか、曲がりなりにも設定勇者なら目に前のいる悪魔っ娘は敵では?
なんでこいつは戦う素振りを見せないのでしょうかね。
悪魔にのこのこ付いて行く勇者って少し間抜けです。
そういえば、この世界の悪魔って人間とは敵対関係だったはずですが。
「――ああ、分かった」
「ありがとうございます」
そう言って二人は共に森を進み始めました。
チーレムは、この世界に来てからいまの所森しか歩いていないですね。
普通だったら、もう冒険者ギルドとか行っているはずなのですが。
もしくは野盗を倒したり、女の子を救ったりと。
いや、確かにアリスさんは形式上救いましたよ?
でも、結局と言いますか。あれって絶対に出来レースじゃないですか。
そう思うと、チーレム要素のあるイベントってまだないですね。
他の世界に転生させた方たちは、順調にチーレムを築いているのに。
なにゆえ、この方は、未だに一人なのでしょうか?
女の子とは三人出会っていますが、誰も同行しないとか笑えますね。
そして彼は、良くわからない設定に振り回されていますし。
もう、分かりますもん。
絶対にこの悪魔っ娘も適当な話をしますよ。
そして、彼の魔法が開花した時その話すが現実になるという最悪のシナリオ。
これには神様もげんなり。
「なあ、そういえば聞きたいことがあるんだけど」
「なんでしょうか?」
何を聞くのでしょうかね?
名前でしょうか? それとも種族?
大穴で、彼氏の有無とかですかね?
「魔神や邪王について何か知っていないか?」
「――!」
もう、やめましょうよ。
なんで余計なことを聞くのですか?
絶対に知ったかぶりしますよ? 知りませんよ、新しい設定がきても。
ほら、見て下さい。
悪魔っ娘が足を止めて、目を見開かせていますよ。
存在しない設定に驚くとかあきらかにフラグじゃないですか?
何をどうしたら、架空の話に驚愕できるのですか?
「知っているも何も……。いや、そういうことですか」
どういうことでしょう?
は? ごめんなさい。全然分かりません。何一つピンときませんでした。
「そういうこと……?」
流石のチーレムも分かっていないようですね。
寧ろ、分かったらどん引きですよ。怖いですよ。
「貴方様が知りたいことも、これから分かりますよ」
訳ありで浮べた笑みが腹立たしいですね。
なんで引っ張るのでしょうか?
あれですかね。時間でも稼いでいるのでしょうか?
とにかく、チーレムは悪魔っ娘に付いて行くようです。
絶対にいい話は聞けないと思うのですがね。どうなることやらって感じです。