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方向音痴って、それはないでしょう!

 皆様、絶世の美女こと神です。

 さて、本来存在しないはずの街を探す旅に出たチーレムの様子はどうでしょうか。


「とりあえずは、西に進むか」


 居ました。彼です。チーレムです。

 アリスさんとは、お別れをして一人で街を目指す様です。

 それにしても、ポイントとかいう街はこの世界にはないので、絶対に辿り着けないと思うのですが。

 まあ、彼の行動を見てみましょうか。


「たしか、この先を道なりに進めば街があるんだっけ?」


 その先には、たしか王国がありましたね。

 結構活気のある国だった気がしますが、決して始まりの街ではないです。

 そういえばチーレムはジャージ姿なので、この世界だと結構浮いた人に思われるかもですね。

 もしかしたら、服のせいで王国には入れないかもしれません。

 そうなったらどうするのでしょうか。


「よし、行くか!」


 遂に、彼の冒険が始まりました。

 存在しないはずの魔神を倒すべく、ない筈の街を目指す、終わりが分からない旅路です。

 いったい、彼は何を掴み何を見出すのでしょうか。

 せいぜい、楽しませていただきたいですね。

 こちとら、五十年待った訳ですし。


「……」


 あれですね。道なりに進むとか言っていましたけど、その間暇じゃありませんか?

 いや、多分イベントとかないですよ。

 だって、道なりですよ? 既に人の手が食わった道ですよ?

 そんなのもう安全地帯じゃないですか。


「えっと、こっちか」


 えっ。

 ちょっと、神様初めて無限年の中で始めてみましたよ。

 地図見ながら、道なりを無視して全く別の方向に進む人。

 おかしくないですか。なんで助言も地図も無視して歩くのですか?

 ちゃんちゃら不思議です。


「本当にこっちなのか? すごい険しい道なんだけど……」


 全然そっちじゃないです。

 チーレムの前には、生い茂る森、森、森。

 どう見ても人が立ち入れる場所じゃないです。

 流石の彼も、これを見たら自分の間違いに気が付くはずです。


「まあ、いっか」


 何がいいのでしょうか? よく分かりません。

 おお、凄いですね。森をズンズンと進んでいますよ。熊ですか貴方は。

 といいますか、あんな度胸あるくせに、何故転生前は引きこもりだったのでしょうか。

 ちょっと分かりませんね。何か深い事情でもあったのでしょうか?

 まあ、あまり興味はありませんが。


「おっと、そういえば森には凶暴な魔獣がいるってアリスは言ってたな」


 そんなことを言っていたんですか。

 でもそれは本当の話なのか、些か疑問ですね。

 おや、しかし良く見たら彼の斜め前の草陰に動きがありましたね。

 いった何が潜んでいるのでしょうか?


「――おい、そこにいる奴。出てこい。いるのは分かっているんだ」

「っ!」


 なんということでしょうか。

 どうやら、チーレムは蠢く存在に気が付いていたようです。

 五感が鋭いのでしょうか。もしかしたら、私が与えた能力だったり?


「っち。いつから気づいていた?」

「君は――!?」


 草陰から姿を現したのは褐色肌の耳が長い女の子。

 これはあれですね。ダークエルフですね。

 なんか魔法が凄い種族です。


「アタシはダークエルフのエイラだ。貴様は何者だ?」


 金髪の髪を大袈裟に掻き上げて、名乗りました。

 今度はきちんと名前を言ってくれて良かったです。


「俺か? 俺はマコトだ。勇者をやっている者だ」


 いや、やっていませんから。

 そもそも勇者とか存在しませんから。

 何、ちょっとドヤ顔しているのですか。

 貴方はただ、方向音痴の迷子さんですよ?


「……」


 ほら、見て下さい。

 いきなり勇者とか言ったせいで、彼女が呆気らかんとしているではないですか。

 なんだか、見ている私も恥ずかしいです。


「ま、まさか……お前があの勇者――……なのか?」


 おっと、エイラさんはいったいどうしたのでしょうか。

 なんで声を震わせて、そんなに顔を驚愕に塗り替えているのでしょうか。

 というか、凄い膝がガクガクと痙攣していますが大丈夫ですか?

 病気なら大人しく帰った方が良いのでは?


「あの勇者? いったいどの勇者を言っているのか分からないが、まあ、なんだ。勇者だ」

「ば、馬鹿なっっ!!!?」


 うるさっ!

 いや、声デカすぎませんか、エイラさん。

 というか、え?

 勇者を知っているんですか?

 いや、なんで? だって勇者とかそもそも存在しませんよね。

 何をどう間違えたら、存在しない相手にそんなに驚けるのですか。

 勇者ってアリスさんが作った設定ですよね?

 それを知っているっておかしく――なるほど、分かりましたよ。

 そういうことですか。


「もしかして、勇者について何か知っているのか?」

「……ああ。だが、聞かない方が良い」

「それは何故だ!?」


 知らないからですよ。

 知らないのに知っているふりをしているから、聞いてほしくないのですよ。

 追求されて焦るなら知ったかぶりとか止めればいいじゃないですか。

 なんでちょっと知識ありますアピールするのですか。


「お前のためにはならないからだ……!」

「俺の為にはならない? ちょ待てよ!」


 おやおや、エイラさんは走り去っていきました。

 逃げましたね。含みを持たせて逃げましたよ。

 出会って直ぐに逃げるとか、わざわざ名乗り合った意味が分かりませんね。

 チーレムは腑に落ちない表情を浮べています。

 でも、心中お察ししますよ。

 あんなこと言われたら、不安が心に募りますよね。

 まあ、彼女の言葉に特に意味とかないんですが。


「くそ。どういう意味だってんだ!」


 それよりも口調はこれで行くつもりですかね?

 初期とだいぶ違う気がするのですが。

 彼の中では、ああいったキャラ設定でいくのでしょうか?

 慣れない言葉遣いだといずれ、ボロがでそうですね。


「……追うか」


 おっと、流石に話を聞きたいのか進み始めました。

 はたして、方向音痴が彼女に追いつけるのか疑問です。

 それにしても、ズンズンと進む姿は勇ましいです。

 そういう意味では、勇者なのでしょうか。

 アリスさんの言っていた意味が、強ち正しくて笑えます。


「――ホーリーアロー!」

「うわっ!?」


 なんと突然、歩くチーレムに何処からともなく光の矢が降り注ぎました。

 間一髪でそれを避けたチーレムは、辺りを警戒しています。

 いったいどこから――あ、いました!

 木の上からエイラさんが魔法を放っていました。

 しかし、いったいどうしてそんなことをしたのでしょうか?


「くそ、いきなり危ないじゃねえか!」


 彼女に気が付いたチーレムが叫びます。

 確かに無防備の人間に魔法を放つのは危険ですね。

 これは彼の意見に同意です。


「流石に避けるか。おい、貴様が本当に勇者なのか試験をする」

「試験だと?」

「ああ、そうだ。お前が本当に選ばれし勇者ならば、私を倒せるはずだ」


 これは遂にチーレムがチートをお発揮ですかね!

 やっと見れますよ。いやー、正直結構モヤモヤしていたのですよね。

 私はどんな力を与えたのか。

 それがずっと気になっていました。

 でも、遂に見れる。これは期待してしまいます。


「アンタを倒す? 上等だ、良くわからないがその試験とやら受けて立つ!」

「ほう! その心意気や良し! では、邪王を倒すと謳われる力、示してみろ!!」


 いや、今度は邪王ですか。なんですか、邪王って。いったい誰ですか。

 この世界は悪魔、魔王、魔神ときて邪王なる者もいるのですか。

 それはもう生存をあきらめた方が良いレベルで詰んでいませんか?

 まあ、何はともあれ。チーレムの活躍に期待ですね。

 いったい、どのような力を扱うのか。見ものです。

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