3話:輝きの幕開け
遅れてすいません!ポエム考えのがすごい難しいです…
目の前の少女は手を差し出す、他でもない僕に向けられて。
隊長と思しき男から号令が発せられ、銃口が一斉にこちらに向けられる。それでも少女は構わずに笑顔で手を差し出している。
銃声、発砲。
至近距離から銃弾の嵐が襲いかかる。聞き慣れないその破裂音のような銃声に一瞬身をブルっと震わせる。
「……………?」
体に走ると予想された痛みはどこにもない、それどころか銃弾はひとつ残らず光に弾かれ地面にコロコロと転がっていた。
それを当然だと言うように笑顔を崩さない少女、周りには目もくれずにこちらを一途に見つめ、もう1度口を開く。
「さあ、手を取って!キミの名前を教えてよ!!」
銃弾を弾いたその光と同じように、不安や悲しみ、悲観を全て打ち払う太陽のような笑顔。
死に沈み、絶望に溺れそうになっていた僕の心を救うのにそれは十分すぎるものだった。
そして生きるため、溢れ出る希望と共に手を掴む。
「僕は……芽生言ノ葉!」
「うん、ありがとうコノハ。ボクはアルティマ、君に輝きと永遠を捧げよう!」
「さあコノハ、キミは戦うかい?」
唐突に投げられる問い、銃弾の嵐は止まず周囲にはカラカラと薬莢が転がる。しかしそれは1発として光を越えて辿り着くことはなかった。
戦うかどうか、僕はその問の回答を考える。戦うということ、この男達を殺すということ、ないしは痛みや苦痛を与えるということ。
確かに自分の命は惜しい、けれど彼女の力があれば戦わずともこの場を切り抜けられるのではないだろうか。
「アルティマ、彼等を傷つけずにこの場を切り抜けられるか」
そう答えると彼女は驚いたような顔をし、一瞬考えるような仕草をした後に変わらぬ太陽のような笑みで答える。
「やっぱりキミを選んで間違いじゃなかったよ!……もちろん、その程度お安い御用さ!」
そう自信満々そうな顔で言うとサッと振り向き、男達に堂々と告げる。
「神秘を穢す者達よ、命を散らす者達よ、永遠を捨て無限を縛ったお前達の刃は決してボクには届かない!」
少女は緑の大地に跪き、両手を当て力を込める。3対の羽が勢いよく開き、彼女の周囲が一層輝き出す。すると突如として森が騒ぎ出す、最初は小さな低木や草花から、やがてそのざわめきは伝染するようにして木、岩へと移り森全体を震撼させる。
「眠れ!」
一声が森に轟く。その声に呼応するように、いや明らかに呼応して男達の足元に小さなサークルが描かれる。次の瞬間には男達は皆地面に伏し、森は穏やかな様子に戻っていた。
ほんの数秒の出来事、でもその数秒は僕に衝撃を与えて震撼させるには十分すぎる時間だった。
「アルティマ……」
「どうしたの?コノハ」
少女にしか見えないその体、琥珀色に美しく輝く瞳、この少女のどこにそんな力があるのだろうか。
少し恐れを抱いているのを察したのか、少女はもう1度そっと手を掴んで口を開く。
「なんでも言ってごらん、ボクとキミは一心同体。ボクはキミのもので、キミはボクのものさ」
「君は、何者なんだ?」
それを聞くとアルティマは少し俯いて、悲しそうな顔をする。悲壮感を漂わせるさっきとは正反対の表情は、まるで底の見えないブルーホールのようで、儚さと繊細さは太陽と対をなす月のようだった。しかしそれでも一層彼女の表情の美しさに惹かれた。
「それは恐怖?それとも畏怖?はたまたただの好奇心?」
黙り込む僕に構わず言葉を続ける。
「神秘神はもう死んだ。ボクはキミと同じさ、偶然同じ世界に転じたにすぎない」
その言葉を聞いて自分は確信し、そして決心する。
「………行こう、アルティマ」
「?」
憂鬱な暗い顔をしたアルティマにそっと、しかし意志を強く込めて語りかける。彼女も奪われた、僕も奪われた。そしてこうして同じ場所に生まれ変わった、その奇跡は決して安いものなんかじゃない。
「僕にこの世界を見せてほしい、そして一緒に歩いてほしい」
「君の輝きと永遠を、この世界と共にもっと見せてほしい」
アルティマは俯く。涙ぐんでいるのだろうか、手で軽く目を擦りパンパンと頬を叩く。そうして見せられた彼女の顔は太陽の輝きを取り戻していた、相変わらずその笑顔は僕の全てを包み込んでくれる。
そうして彼女はもう一度強く手を握りしめ、返事をする。
「もっちろん!ボクはキミとこの世界を、この永遠を、絶対に輝かせてみせるよ!コノハ!」
こうして、僕とアルティマの旅は幕を開けた。