転生少女の回顧⑧
転生少女の回顧④を一部文章を変えました。
リオンと出会ってから五年の月日が流れ、私達は十二歳となった。
この世界は元の世界とは違いすぎて、私の知らないことばかりだ。だから、私は知らなかった。
魔法使いがモテると言うことを。
●○●○●
きゃっきゃっ。
そんな笑い声が響く。実に楽しそうな声だ。私はその声の方向に視線を向けた。
現在私が居るのは屋敷の二階。私の部屋だ。そうして私の部屋からは庭園がよく見える。
普段なら四季に合わせて色の変わる庭園が見れるこの窓辺を気に入っているのだが、今はこの窓辺が憎くて仕方ない。窓を閉め、カーテンを閉めても声は消えない。どんだけ大きな声で話しているのかと疑問に思うほどだ。
はあ、と私はため息を吐いた。
閉めたカーテンの先にある光景に苦々しさを感じた。
そこに居たのはリオンと……そうして女の子達だ。綺麗なドレスに綺麗なアクセサリーを付けた可愛らしい女の子達。全員貴族様であるらしい。
貴族がこの屋敷に出入りするのは珍しいことではなかった。
ユーリスは魔法使いで、しかもそれなりの地位にいるらしく、魔法使いの貴重なこの世界では貴族は皆ユーリスに取り入ろうと必死だった。
ユーリスはそんな彼らに穏やかに接していた。本人は別に歓迎したい訳ではないらしいのだが、無視したりぞんざいに扱えば、それはそれで面倒なのだと言う。
だから、よく貴族は来ていた。ユーリスを訪ねて。
それがいつしかリオンを訪ねてにもなってきた。
ユーリスを訪ねる時に自分の子供を伴い、リオンに紹介する。そうして、子供達同士で遊んでおいでと言って……リオンに取り入ろうとしていた。
ユーリスは別に止めることはしない。貴族との繋がりを持つのは悪いことではないからだ。むしろ、上手くいけば良い手駒にもなる。
私もそこはよく理解しているのだ。リオンが貴族と仲良くなれば、私にも利点はある。しかし、何故だろう、ムカムカするのは。
なんとなく、面白くないのである。
普段はあまり人と接しようとしないくせに、彼らを無下にしないのも面白くない。無下にしたらしたで注意するくせに、とんだ矛盾な気持ちを抱えている。
わかっている。自覚はしているのだ。しかし、面白くないのだから仕方ない。
気持ちなど変えようがないのである。だから、私はいつだって表面は偽っていた。
いつだって笑顔を保ってきた。貴族とすれ違えば、笑顔で挨拶し、面白くなくとも、リオンの邪魔はしない。
貴族達は私を好んでいない。当然だ魔法を使えないただの孤児など彼らにとっては穢らわしいだけ。
それなのにユーリスの庇護下にあり、リオンの信頼を得ている私が邪魔で仕方ないのだろう。
しかし、それを全面に出せば二人の不興を買いかねず、故に彼らはリオンと共にいつだって私を誘う。
しかし、それに乗るほど私は馬鹿でもなければ空気が読めない訳ではない。だから、私は空気を読んで、申し訳なさそうに、いつも断りをいれるのである。
たとえ残念という彼らの唇が歪んでいても。
「……勉強しましょう」
別に気になる訳ではない。そううるさくて、勉強に集中できないだけ。それだけなのだ。