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転生少女の回顧⑨

十五歳となった私達。私は城で勤めることとなり、リオンは試験に受かり正式に魔法使いとなった。

城に勤め始めてから、私は改めてユーリスとリオンの凄さを知ることとなる。


「いいなあ、フィリアは。リオン様と幼馴染みだなんて羨ましい」


そう言ったのは城での同僚だ。

彼女は気さくで、明るく、誰からも好かれるような女の子だった。

ふと、その雰囲気に私は誰かを思い浮かべる。しかし、どうしてか誰だか思い出せない。思い出せないと言うことはたいしたことでもないのだろう。


「そうかしら?」


同僚の言葉に私は苦笑で応えた。彼女に会う度にそう言われればこんな表情にもなる。


「そうよ!だってあのリオン様よ?この国一番の魔法使いと言われるユーリス様の弟子で、しかもユーリス様の全盛期には未だ達してなくても、今のユーリス様の実力を越えそうなんて言われてる方よ?!しかも!あの見目の麗しさ!女の子なら誰でも憧れるような方と仲が良いなんて……」


そこで不意に彼女の言葉が途切れた。いったいどうしたのかと彼女の私選を追い振り向けば……そこにはリオンが居た。

確かに十五となったリオンは格好良くなったと思う。元々綺麗な顔立ちをしていたが、そこに男の色気も加わり、ため息が出るほどだ。

しかし、人は言う。美人三日で飽きる、と。

格好良いとは思う。しかし、毎日毎日その顔を見ていた身としては今さら、見惚れるものでもない。


「リオン?どうかしたの」


「ちょうど休憩に入ったから、会いに来た」


「会いに来たと言われても……」


こっちはまだまだ仕事中だ。窓拭きをしているのが目に入らないのだろうか?


「私まだ仕事中だから。ごめんなさいね」


そう言えばわかってると言われてしまった。

わかっているのなら来ないでほしい。サボってると思われて困るのは私なのだが。


「来週王都で祭りがある。それを誘いに来ただけ」


「ああ、あれね」


確かにある。大きな祭りだ。その日私も仕事はあるのだが、午前だけ。使用人達がその祭りに参加できるようになのか、午前だけの者と午後だけの者とで別れるという、変則的なシフトだった。

もちろん私も参加するつもりだ。しかし、その日は……。


「ごめんなさい。その日はもう予定が……」

「良かったじゃない!フィリア!!行く相手ができて!!この子行く相手がいないからどうしようかと悩んでたんです!!」


言葉を被せるように同僚に言われてしまった。私は目を丸くする。同僚はいったい何を言っているのか。

行く相手がいない?いや、むしろこの目の前の同僚こそが行く相手だった気がするのだが。

その日は同僚仲間で祭りに行こうと話していた。目の前の同僚なんて買いたいものリストまで作っていたはずだ。

私の視線を受けて、同僚は鋭く私を見つめた。話に乗れということだろう。

私は同僚の意図を察して、リオンに了承の言葉を伝えた。


リオンが去った後、同僚ははあと大きなため息を吐いた。


「もう!信じられない!リオン様の誘いを断ろうとするなんて!」


「だってあなた達と約束していたじゃない」


そう言うと呆れたと言わんばかりに同僚に見られた。なんだその目は。


「もう。私達との約束なんて別に良いのよ!……まったく、今はフィリア程親しい女の子はいないみたいだから良いけど、それで安心していると、いつかリオン様のこと、どこの馬の骨とも知らない女に獲られちゃうわよ」


「別に、構わないでしょ。それでも」


そう言いながらも、胸に微かなざわつきを感じた。

リオンが、獲られる?他の誰かのものになる?

あり得ない話ではない。今、リオンと私を繋いでいるのは幼馴染みという関係だけ。それがなければ私達はただの他人どころか、会話すら許されない身だ。


『私にその命を頂戴』


あんな言葉をリオンがもう覚えている訳がない。覚えていたとして、もう無効だろう。

わかっている。わかっているのだ。もう、リオンは私のものじゃないということは。

それなのに、何故だろう。胸がざわつく。


「もう!意地っ張りなんだから!」


そう言いながら、同僚は仕事に戻った。私もまた仕事に戻る。しかし、思考はいつまでもリオンに埋め付くされていた。

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