EP.3 悪魔は再び
今回はグロテスクな表現がひどいと言われた話です。次回からグロテスクは控えめにします。
~どこかの世界の大草原~
「さすがに19年経てば地形も変わるか」
懐かしい――という気持ちはまったく無い。
「私は再びこの世界で戦いを楽しめることができる。…素晴らしい」
クリーチャーは戦いのことばかり考えていた。彼女は育ちの影響か戦闘狂で、異常なほど戦いを好み、相手を傷つける事に関して何のためらいもなく、襲ってきた相手や強そうな相手を敵とみなす。
それは、相手が人間だろうと……
「…ん?何かの気配がある。これは爬虫類の匂い」
クリーチャーには能力がある。生きていくことに必要なスキルを合わせたのが、クリーチャーという能力。今使ったのは嗅覚だ。
そして、爬虫類の正体は全長約1メートルのエリマキトカゲのような生物。
クリーチャーの存在に気付き、まっすぐこちらへ体当たりを仕掛けようとしてくる。
「リザードか。コイツを喰えばどんな能力が?まずは戦いを楽しむか」
能力を発動させて両手両足に鋭利な爪、鋼鉄よりも固い皮膚が両腕両脚に。これは狩りのスキルだ。
「来い、三枚おろしにしてやる」
リザードはクリーチャーの前で、高く跳びあがって体当たりを仕掛けた。
だが、クリーチャーは右手をリザードの胴体に突き刺した。
串刺しの状態のリザードを地面に叩きつける。
「所詮この程度か、楽しみのかけらもない。死ね」
倒れているリザードの喉元に、左手を突き刺し絶命させた。
今度は何をするかと思いきや、リザードの死体に顔を近づけた。そのままリザードの死体に噛みつき、肉を喰らう。
これは、捕食というスキルで喰らった生物の能力や特徴、姿を得られる。
今回は肉を喰らったが、血でも構わない。どちらにせよ一定量を喰らわないと発動しない。
「貴重な栄養源だ。それに味もいい。…仲間がいたか」
周りを取り囲むように4体のリザードが構えている。
「何だ?私を楽しませてくれるのか?かかって来い」
2体のリザードが挟み撃ちを狙う。
クリーチャーは片方のリザードの腹を切り裂き、内臓を抉り出して喰らう。
もう片方のリザードが嚙みつこうとするが、首を跳ね飛ばされ絶命。
「もっと、私を楽しませろ‼」
残り2体のうちの1体が跳びかかる。クリーチャーは当たる直前で、回避して蹴り飛ばす。
スキを見せたと考えた別のリザードは、体当たりを繰り出した。だが、蹴りで相殺されて捕らえられる。
「よく見ていろ、同胞の死にざまを」
倒れているリザードは目の前で悲惨な光景を目の当たりにする。
クリーチャーは捕らえたリザードの腹に手を突っ込み、そのまま引っ掻き回す。
腹の中を滅茶苦茶にされたリザードはかすれた悲鳴を上げ息絶える。そして、はらわたを抉って、それを倒れているリザードに投げつける。
「悔しいか?私は楽しいぞ!こんな快感は久しぶりだからな!アハハハハ!」
その姿はまるで悪魔だ。残ったリザードは雄たけびを上げる。
「耳障りだ」
リザードに近づき、頭部を掴み爪を突き刺して、もう片方の腕で首を切り裂く。
「終わったか…、いや、終わっていない、何かが来る」
草原に大きな足音が響く、その正体はリザードの雄たけびに反応した全長約3メートルのリザードだ。
「さっきのリザードのボスか、楽しめそうだな」
部下のリザードの無残な死体を見たボスリザードはクリーチャーに殺意を向ける。
ボスリザードはその大きな体で、体当たりを試みる。
しかし、クリーチャーは体当たりの衝撃を両腕で防御して軽減。
すぐさまにボスリザードに反撃、胴体や背中を何度も爪で切り裂く。
だが、ボスリザードの皮膚も普通のリザードとは違って皮が頑丈にできていて出血させることはできるが、皮膚の内側まで爪を通すことができない。
そこでクリーチャーは一旦距離をとる。
「(皮膚に攻撃するのは愚策か、やはり柔い場所に攻撃するのが得策だな)」
ボスリザードの辺りを見渡し、何かがないかと探す。あるのは高さが2メートル程の岩と、周りに生えている雑草とは違う赤い植物だ。
「(あそこにある植物は毒をもっているはずだ。あれを喰って、皮膚から毒を入れるか)」
ボスリザードが再びこちらへ向かってくる。
今度は右に避けてボスリザードの片目を切り裂き失明させる。
その後に蹴りを浴びせてスキをつくる。
即座に毒をもっている植物――キョウチクトウに似た植物の場所へ行き次々と喰いあさる。
「この毒ならリザードにも効くだろう」
何故、クリーチャーは毒を摂取したのに影響を受けなかったのだろうか?その答えはクリーチャーのスキルの抗体だ。このスキルはどんな猛毒や病原菌でもすぐに抗体を作り、自分のものにする。
キョウチクトウに似た植物の能力を発動させてみると、皮膚から毒液が出てきた。クリーチャーは毒液を両手の爪に塗ってボスリザードに向かっていった。
「リザードの血液とこの毒を混ぜたら面白いことになりそうだ」
不敵な笑みを浮かべながらボスリザードとにらみ合う。
先に仕掛けてきたのはボスリザード。鋭い牙でクリーチャーの腕を噛み千切ろうとするが、クリーチャーに顔面を両腕で挟まれるように強打される。
そして、背後に回り込んで胴体に毒が塗られた爪で、数か所を切りつけられる。ボスリザードの体内には毒が流れ込み、段々と弱っていく。
「かなり効いているな。止めだ」
クリーチャーは弱っているボスリザードに止めを刺そうとしたが、ボスリザードは尻尾でクリーチャーを弾き飛ばした。
「…下等生物が!」
先ほどのボスリザードの攻撃はクリーチャーの怒りに触れた。
無理もない話だ、クリーチャーは勝ったという優越感に浸かっていたところに泥を塗られたような気分だった。
クリーチャーはボスリザードをすぐには殺さなかった。これは、慈悲を与えたわけではない、ただ単に敗北感を味わわせ、ストレスを発散して再び優越感に浸かりたいだけだ。
「これは罰だ」
弱って倒れているボスリザードに近づき、何度も踏みつける。
その次に尻尾を爪で切り裂き、ボスリザードの目の前で喰らう。
今度は体のいたるところを爪で切り刻む。
そして終いには顔のいたるところを殺さない程度に爪で傷つけ、一息ついてから喉元を裂いて絶命させた。
「最高の気分だ!これだから戦いはやめられない!アハハハハ!」
その笑い方は悪魔そのものだ。そして、行った行為も残忍極まりない。
死体となったボスリザードの血肉を掴み、次々と喰らう。そして、リザードの能力を手に入れた。
「これがリザードの体か、とても動きやすい。」
クリーチャーは皮膚がリザードのようになっていた。目は視力が上がり、口には鋭い牙、全身には頑丈な皮膚、背中には長い尻尾、脚は人間よりも素早く高く跳べて持久力もある。
「あとは近くの川をたどっていけば町が見えるはずだ。」