障害
「えーっ、リベリオンについて人類がわかっていることは4つだけだ
一つ目、月面都市ポラウスが開発したコンピューターウイルス、通称トレイウイルスが通信衛星に感染したことで始まった
二つ目、リベリオンは人型、4足歩行型など様々な姿をしていて、赤外線を発さない
三つ目、地下には侵攻してこない、これは推測だがヤツらが日光を利用しているからだと言われている
四つ目、夜間は比較的リベリオンは活動数が少なく、日の出の頃が最も活動しているリベリオンの数が少ない。
これも理由は太陽光を充電し、それを利用しているからだと言われている…」
俺は目の前にいる数人の学生に説明した
ダイチを失った地上奪還作戦が失敗に終わりおよそ1年半が経った
俺は再び目を覚ました時、自分のせいでダイチが死んでしまったかもしれないという恐怖に襲われ二度とアマテラスの操縦室に座れなくなっていた。
いわゆるパニック障害だった。
俺は国連軍を止め国連直轄の大学の講師をしていた
もっとも、この時代、大学に通う生徒自体少ないのだが
この1年半、人類は一度たりとも地上で反抗作戦を行っていない。進歩したことといえば地下シェルターが大きくなり、農地が増え、食糧不足が少しだけ改善されたぐらいだった
「キョウ先生、人類は地下にいれば生き延びられるんですよね?ならもう人類は地上で暮らすことを諦めてもいいんじゃないですか…?」
1人の女子学生が不安そうな目をして聞いてきた
「今のところは人類は地下にいる限り安全だよ
でもね、リベリオンの進化するスピードは早いんだ
いつヤツらがエネルギー源を変えて地下に侵攻してきてもおかしくないんだ…」
事実、日の出直後という理論上もっともヤツらのエネルギーが弱まっている時に出会ったリベリオンは俺たちのアマテラスの操縦室を一瞬で貫いた
しかし謎もある
リベリオンがなぜ操縦室の真ん中ではなくダイチの座っていた後方部を貫いたのか?
リベリオンがミスをすることもあるのか?
もしかして俺が瞬時にアマテラスの位置をずらしてダイチに当たるようにしてしまったのではないか…
あぁ…きっとそうだ…俺が、俺がダイチを殺してしまったんだ…
アマテラスに乗っていないのに俺はパニック障害の症状が出てしまった
俺は授業を中断し、講師室に向かったが今日は家に帰らされた
俺の住む地下シェルターは半径5キロ、高さ500メートルの巨大円柱状のシェルターで渋谷駅の真下500メートルに作られたものである。
中心に半径500メートルの円柱が建っておりその中で食糧など、生きていく上で必要なものが生産されているらしい
ガチャッ
俺が鍵を開けると
「おかえり〜」
と、中高生くらいの女子の声が聞こえた
俺には1人肉親が生き残っている。妹のカナだ。
俺と歳は8つも離れている。
リベリオンが生まれた年、俺は15歳、カナは7歳だった。
あの日、俺たちの父親は出張していたため、行方は今も不明、俺とカナは母親の運転する車で避難所を目指していた。
しかし、暴徒と化した人間の運転する車と衝突
俺とカナはなんとか車から脱出したが母親は息をしていなかった
その後今のシェルターに逃げ、俺は国連軍の士官学校へ、カナは俺はシェルターに作られた学校に通うよう勧めたが、家事をするために通信教育で過ごしてきた
本当、カナには大変な思いをさせてしまっていると思う
「あぁ、ただいま」
「今日早いね…先生クビになっちゃった?」
「んなばかなっ、またパニック障害が出てな…」
「そう…大変だったね…
ほら、今日のご飯はカレー粉で味付けしたカイコだよ、兄ちゃん好きでしょ?」
この時代カイコは貴重なタンパク源であった
カイコ、これが案外うまいのである。エビに味が本当にそっくりで
「おーっ、やった!カナよくカイコ手に入れたなぁ」
俺がよしよしっとしばらく切ってないカナの髪を撫でてあげようとすると
「あーっキモいキモい、ご飯の準備するからあっち行って!」
昔は喜んでたんだけどなぁ
「あっそうそう、兄ちゃん宛に郵便来てたよ
テーブルの上見てみて」
ん?俺宛に郵便?
俺に送ってくるような人なんて思いつかない…
俺は郵便を読んで驚愕した
「キョウ様へ
人類の未来のためにもう一度戦ってはくれませんか?
我々はアマテラスより進化した武器を開発しました。
その武器を1年半前生き残ったあなたに使ってほしいのです
ぜひ本社へ来てはいただけませんか?
p.sあなたのパニック障害も治します
アマノイワト社」
より」
国連のために日本で武器を開発している唯一の会社
それがアマノイワト社だった
なんでそんな会社がもう軍を止めた俺に?
しかし、俺が一番気になったのは
「あなたのパニック障害も治します」
この一文だった。俺はダイチの死を自分の責任だと感じ続け苦しんできた。もちろん、ダイチのためにも俺は苦しむべきだと思う。しかし1年半の毎日ひどく辛い日々だった。カナには心配させたくないとあんなこと言ったが事実今の仕事も続けられるかわからず、クビになってしまうかもしれない
そんなことになったらカナをこれ以上苦しませてしまう…
俺はアマノイワト社にとりあえず行くだけ行ってみようかなと思い始めていた
この時俺はどうするべきだったのか、今の俺にもわからない…