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FASTEST!!  作者: サトシアキラ
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第15-04話


 翌日。

 目が覚めてみると、そこは桃源郷……ではなく、男たちがむさ苦しくも布団を連ねて眠っている、ある種の地獄と表現しても行き過ぎではない場所だった。……とは言っても、俺もその地獄を構成する一因なのだから文句は言えない。

 しかし。

 宿舎にしているこの旅館にやってきて数日経つが、既に我が家のベッドが恋しくなってきたのは言うまでも無いだろう(オマケに俺の場合は美少女の目覚まし時計付きだ)。横になったまま、枕元の携帯を手探りで見つけて時計を見ると……午前8時。……もう八時か。昨日の疲れが意外なほど響いているらしく、カベも珍しく熟睡しているようだった。


 ……あいつ、もう起きてるかな。

 そう思い立ったら居ても立ってもいられずに、布団を抜け出し、猛烈な日差しを予感させる、朝日が燦々と差し込める中庭に出る。

 コールは僅か数回。俺の言葉を待ち望んでくれていた……それだけの事実が嬉しい。携帯電話を肌身離さず持ち歩いてくれていたのだろうか。

「真理」

「お兄ちゃん」

 短く呼び合う。相手は分かっているのに……電話の先にいる相手を無意識に確かめてしまう。その事自体に深い意味はない。いや、ひょっとしたらものすごく深い意味があるのかも知れない。少なくとも、俺にそれを量る事は出来ないけど。

「凄いことしちゃったね、お兄ちゃん。テレビのニュースとか新聞とかもお兄ちゃんの記事ばっかりだよ」

 開口一番に切り出したのは、当の俺が驚くようなこと。

「え?マジで?」

「……知らないのぉ?」

 その『凄いこと』をやった張本人が熱狂を知らないと知って呆れたのか、大げさに驚いたような声を出した。

「知らないも何も……今起きたばっかりで新聞も何も見てないんだよ……昨日は昨日ですぐに布団に潜りこんじまったし」

「そうなんだ……お疲れ様。だけど、まずは新聞くらい読んだ方が良いと思うよ。近くに新聞、ある?」

 言われて、辺りを見渡そうと首を巡らせる前にふと気がつく。ここは中庭だ。新聞なんてあるはずがない。真理と携帯電話で話していると、今居る場所がどこであれ天国の雲の上とでも錯覚してしまうのだ。こりゃ、車の運転をしながら話をしてたら本当に天国に行きかねないな。そもそもが『ながら』電話自体厳禁だが。

「今ロビーまで行くから待ってろ」

 通話したまま、ロビー……といってもこの旅館の規模では相応しくないがとにかくそのような場所……に行く。予想に違わず、ガラスのテーブルの上に置かれていたスポーツ新聞を手に取った。綺麗に置かれて誰も手に取っていないところを見ると、今の時間まで誰も起きてこなかったらしい。試合をしてない筈の、ベンチに座っているだけの大淀さんまで起きてこないというのはどういう事なんだろう。いくら監督の役割さえ果たして居ないとはいえ、引率としての自覚くらいは持って欲しいところだが。

「今見る……おわっ」

 新聞を広げる手間は要らなかった。何故なら、他のスポーツを差し置いて俺の快投を伝える記事が一面にでかでかと掲載されていたからだ。

「(夏の大会)史上初!五塚・加藤、完全試合……か」

「ねっ?」

 加藤家で取っている新聞とは違う銘柄のスポーツ紙だが、真理の言い分からも考えるに、この分だとほぼ全てのスポーツ紙が一面でこの記事を取り上げているのだろう。

 ちなみに、使われている写真はもちろん俺。投球時のフォロースルー直後、丁度守備体勢に入ろうとした時のものだ。一番見慣れているようで実は滅多に見ないかも知れない自分の顔がはっきりと写っている。力投によってやや斜めになった帽子から覗くやや子供っぽいちょっとだけコンプレックスなんだよ……は、見ようによっては凛々しいと取れる……といいな。

「こりゃ……参ったな」

「何言ってるの、お兄ちゃんがやっちゃったんだから、素直に受け止めた方がいいんじゃない?」

「そうは言うけどよ……自分でも凄いことをやったって自覚がイマイチ無いんだよな」

「どうして?」

 言葉に詰まった。確かにそんな自覚はないが、それが何故と聞かれたら返答に窮する。本当に『イマイチ無い』のだから。

 しかし、真理は深く詮索しようとせずに

「そうそう、家に掛かってくる電話が凄いんだよ。急に親戚が増えたみたいで……まるで宝くじにでも当たったみたい。宝くじの時と違うのは銀行からの電話がないことだけどね~」

 あはは、と真理にしては心の入っていない乾いた笑い。まるで、何かを言いたそうで言えない気持ちを無理矢理隠しているような。

「真理……」

「ん?」

 コイツ、電話があまりにひっきりなしで掛かってくるモンだから、疲れてる上に怖がってたんじゃないのか?しかも、俺に心配を掛けまいと俺が電話を寄越すこの瞬間まで我慢していたんじゃなかろうか。真理ならあり得る。

「こっちに来いよ、姉さんと一緒に」

「えっ!?」

 思いがけない言葉が出た。

「こっちに遊びがてら来て、ナマで試合を見に来ないかって言ってるんだ」

 家にいても電話攻勢に怯えるだけだし、俺たちの家族構成(早い話が、若い女性二人しか家にいない)をどんな不埒者が知るか分からない。それだったら、まだホテル住まいした方がましだろう。料金はそれなりに付くだろうが、そこは親父様の出番だ。可愛い妹たちの為なら、阪神方面での滞在目的で家一軒買って寄越すというのも冗談では済まなくなるかもな。

「でも、その……それはちょっと」

「何でだよ」

「ほら、だって宿題だってあるし」

「こっちで時間を見つけてやればいいだろ」

「それはそうだけど……」

 どうにも歯切れが悪い。五塚の次の試合まで数日間が開くわけだが、やっぱり宿泊費の事でも気にしているのだろうか。バイトを始めてから、金の有り難みも今までよりずっと感じてきたようだったし。何しろ初の給与明細を感慨深げに胸にかき抱いてたぐらいだからな。

「親父に言えばそれくらいの事は」

「そうじゃないの」

 言下に否定された。まだ『何のことを』親父に相談するのかも言っていないというのに。

「その……ね?色々とこっちでやることもあるし、それに……その……みんなで遊びに行くことにしてるから、家にそんなに居ないっていうか」

 『みんな』っていうのは、梨魅ちゃんや舞依子ちゃんのことを指すんだろう。

「遊びって、外泊でか」

「……外泊っていうのとはちょっと違うかな……遊びに行くのは日帰りだけど、みんなの家にそれぞれお泊まりに行く計画だし……どう考えても外泊になっちゃうね」

 そういえばそんなことを言っていた。今頃思い出した。友達二人とは別の高校に進んだ真理だけど、付き合いは健在らしい。真理の性格から言って、高校に入ってから出来た友達も沢山居るんだろう。しかし、舞依子ちゃんと梨魅ちゃんはほとんど別格の存在って感じかな。

「お姉ちゃんも同じように友達の家に泊まりに行ったりするみたいだから」

 俺が黙っている事に否定の不安を感じたのか、真理はそう付け足した。そもそも、俺が否定したら計画は止めにするつもりなんだろうか。

「そうか……でも、よく考えると今更不安になってきたな」

「何を?」

「あの広い家に姉さんとお前の二人っきりにしてること」

 ただでさえ美奈津が抜けて寂しく思っていたんだ、血を分けた妹である真理が寂しく思わない筈がないだろう。

「そうだけど……そんなに気にすることもないよ、お姉ちゃんも早く帰ってきてくれるみたいだし」

 男の目からすると、娘っ子が何人居ても変わりはしないんだけどなぁ。むしろ、自宅へマスコミが押しかけてきたときにどんな反応をするかが不安の種なんだが。

「ま、そこまで言うなら……バイトの件もあるしな」

「うん……」

 どうにも歯切れが悪いな。何かを隠しているような、でもそれを追求するのも知りたがりのようでみっともない気がするし。基本的に俺たち兄妹の中は『喋らないことは詮索しない』だ。

「そうか、じゃあとにかくテレビで応援でもしていてくれよ」

「うん」

 短く、しかしはっきりとした返事。こればかりは本心からのもののようだ。

「……」

「……」

 会話が途切れた。あれほど声が聞きたかったのに、いざ話題を失ってしまうとこんなものらしい。俺としては、話題などどうでも良いから声を聞いていたい。しかし……ロビーの隅っこで縮こまって話していた俺の目前へ、カベの四角い顔を突然覗かせたから焦った。てっきり寝坊しているものと思っていた。

「???どうしたの?」

 すんでの所で悲鳴を飲み込んだ俺は、

「いや、何でもない。切るぞ」

「あ、あの……」

 慌てて電話を切った。

「真理ちゃんと話してたのか?オレに気兼ねなんてしないで、もっと話していれば良かったのに」

「良いんだよ、もう終わったんだから」

 カベに遠慮する必要は確かにないのだが、何故か会話を聞かれたくなかった。これだけは俺と真理とだけのみに交わされるものであって欲しかった。カベを除け者にしたいってわけでもないけど……妙な独占欲が勝っていた事だけは確かだ。

「そうか。それより、早く支度しろよ」

「支度って……何の?」

「お前は昨日の解散前の報告を聞いてなかったな?敵情視察も含めて甲子園に観戦に行くんだよ」

「敵情……視察ですかい?」

「本当に聞いて無かったんだな。いや、聞いては居たが右の耳から入って左の耳から出て行ったのか……疲れていたとはいえ、いかにも聖らしいというか」

「そ、それよりも、敵情視察って?」

「今日の試合、横浜学院が出てくるんだよ。その他にも、俺たちの三回戦辺りでぶつかる相手も見てこれる」

「へぇ……」

 目標は『出来るだけ勝つ』だけど、正直言って一試合一試合、目の前の試合を勝つことだけを考えていたから、将来の相手の偵察にまでは頭が行かなかったな。

「にしても、都合良く横浜学院と次の相手の試合が見られるなんてな」

「そういう組み合わせになってるからな、形式上。とにかく、そんなことは良いから早く着替えてメシを食ってこい。もう出発が近いぞ」

 カベはちらっと柱時計を見た。俺も釣られて見るが、まだ八時半だ。

「もうそんな時間か?」

「本当なら朝イチで出発して第一試合から見るつもりだったんだぞ?つべこべ言わずに早くけぃ」

「みんなは?」

「とっくにメシ食ってる」

 マジかよ……今の今までぐっすり寝ていたのは何だったんだ……一瞬、携帯を見たがかけ直して居る時間は無さそうだ。仕方がない、この暑い最中さなかわざわざ観戦に行ってやるか。敵情視察も立派な作戦だとカベが言うのならその通りにしないとな。それに、視察云々を抜きにしても甲子園で野球観戦なんて地理上なかなか出来ないことには変わりがないし。

 そう考えを切り替えれば、楽しみな事は楽しみだ。

 しかし、楽しみなのは甲子園に入場するときまで。

「暑い……」

 スタンドに入ってしまうと、そこは想像通りの灼熱地獄。楽しみなどという感情を綺麗さっぱり洗い流してしまう過酷な環境がそこには存在していた。観戦なんて表現では生ぬるい。『我慢比べ』と言う方が正しいような気さえする。

「言うな。だからこそこうして」

 俺のぼやきに、カベは右手に持っている『かち割り氷』の入った袋を掲げて

「涼もうとしているんじゃないか」

 と、何でもないように、そしていつものように涼しい顔で返した。

「暑いものは暑いんだよぉ……」

「軟弱な奴め……昨日はこの猛暑の中で激しい運動してたんだぞ?」

「マウンドとスタンドじゃ二文字違いで別世界だ」

「上手い!座布団一枚やる」

 カベはそう言うが早いか、かち割りをストローで啜る。照れ隠しなのか?……結局、カベも暑さに当てられてるんじゃないかよ。俺もそれに習い、少しだけ氷水を飲んだ後、首筋に袋を当てた。見れば、チームメイト全員が同じ仕草をしている。狙ってやっているんだか知らないが、もしそうだとしたら……心が繋がっているようで嬉しいやら、空気を読んでいて楽しいやら。

 というわけで、さっきから目の前の試合などちっとも頭に入ってこない。試合は、伊東率いる横浜学園が相手校を袋だたきにしている、としか受け止められない。だって、得点は既に8対0なのに盗塁やらバントやらやってるんだぜ?退屈極まりないな。一点を取るにも最善を尽くす……と言えば聞こえは良いが、要するにそこまでしないと不安なんだろう、可愛そうに。この辺りの個人的見解は去年から変わらない。

 その内に横浜学園の守備。

 マウンドに立っているのは、伊東ではなくやはり別の人物。名前は……えーっと……立川某なにがしだそうだ。当の伊東はセンターの守備位置で所在なさげに外野手同士のキャッチボールに勤しんでいる……と言えば聞こえは良いが、どうもチームメイトが義理で回してやっているように思えてならない。あの性格破綻者では人を引っ張る事なんて出来やしないだろうから。

 でもまぁどうでもいいや。むしろ、この次の試合の安倍川っていう左腕が気になるな。何故俺がこれほどまでに投げやりかというと……

「にしても疲れたわ。まさかあんなに知名度が上がってるとはなぁ……その内のほとんどが俄ファンなんだろうが」

 俺等が甲子園付近に足を運んだ瞬間、どこから現れたのかと思う程の人間が遠巻きに見物していやがったからな。その珍獣を見るような視線を浴びただけで疲れちまった。他人の目を気にし始めたが最後、一挙手一投足をまじまじ見物されてるようで、ほとんど直立不動、右足と右手を一緒に出して歩きかねなかった。上野動物園の初来日したパンダの気持ちが少しだけ理解できたような気がするぜ。チームメイトに囲まれ、スタンドのベンチに腰を下ろした時点でようやく一息ついたってところだ。

「そういえば聖、実家の方は平気なのか?マスコミとか。奴らは何を狙ってるのか分からんぞ」

「大丈夫……らしい。真理に言わせれば『急に親戚が増えた』ようだけど」

「宝くじが当たったみたいな物言いだな」

「俺もそう思う」

 きっと大丈夫じゃないんだろうけど……真理がそう言っている以上は意志を尊重してやりたい。と言えば聞こえは良いが、要するに阪神方面に居る俺には手の打ちようがないだけだ。

 

 結局……横浜学院は11対0というワンサイドゲームで試合を終えた。どうせ見るべき場面なんてあるわけがない。第一、どんな高等技術も俺が見たところで分からないし……きっとカベなら、こうしてスタンドから観戦しているだけでかなりの情報を掴んでいるのだろうけど。

 俺はむしろ次の試合に視線を注ぎたかった。超高校級の誉れ高い安倍川という投手がどれほどのものか、そして安倍川を物差しとして俺の技量はどれほどなのか。そんなに優れた投手なら、いずれ俺とやり合うかも知れない……早ければ三回戦にもそれが実現するんだからな。

 

 とはいったものの。

「カベ、これじゃあ……休みにならないと思わないか」

「『休み』とは一言も言った覚えはないぞ」

 そう、俺たちが座っているのは外野席。お陰で料金が安いのは良いが、その代わりに選手までの距離は遠いし屋根がないから暑いしで、こうして座っているだけで汗があふれてくる。

「この際だから、今日は帰ったら軽めにだけど練習をするぞ。次のオレ等の試合まで間が開くから、完全休養日は明日にし、な」

「疲れついでって訳かよ……俺もそうしたいと思っていたところではあるな」

 というわけで、この炎熱地獄から解放されても練習があると思うと気が重い。願わくば、この次、第三試合に出てくる安倍川とやらに手っ取り早くカタを付けて欲しいところだった。


 果たして、俺の願いは成就した。

 安倍川という投手は、初回から安定した投球を見せて相手打線を翻弄。手も足も出ないという表現かぴったり来た。相手の打線も悪くはなかったようだけど、ちょっと良い投手が出てくるととたんに手に負えなくなる高校野球の常から言って、よほどの打者でなければまともな相対は不可能だろう。それほどまでに安倍川の投球には迫力があった。

 

 あれよあれよという内に試合は終了。安倍川率いる鹿児島代表・鹿児島北工業が5対0、終始危なげない試合運びで相手校を下す。その試合を見て……安倍川のプレーに人知れず心奪われていた。

 安倍川は、恐らく180センチ後半はあろうかという上背の持ち主で、その巨体から投げ下ろされる直球は間違いなく140キロ後半を超えているだろうし、また変化球のキレもいい。主に縦のカーブを使っているかな。この距離ではカーブかどうかは分からないけど、明らかに直球とはスピードの異なる、ふわりと宙に浮くようなボールを混ぜていた。

 安倍川の特徴はそれだけではない。俺が他の野球選手に心奪われる条件といえば、自分に無いものを持っているかどうかに掛かっているのだが、安倍川はその分野でも申し分無かった。鹿児島北が挙げた5点の内、3点は安倍川のバットから叩き出されたものだ。内訳は……ソロホームラン一本、2点タイムリー一本……巨体から想像できるとおりのパワーヒッター。

 フィールディングについても……相手が何とかしようと弄してきたバント責めを幾度となく、そして平然とした顔で捌いていた。う、羨ましい。しかし、付け入る隙は……多分カベが考えていてくれるだろう。

 試合が終わった直後、

「ぷはぁ」

 俺は思わず溜息とも付かぬ空気をクチから吐き出した。居るところには居るもんだよな、良い選手っていうのは。

「どうした」

 それを聞きつけて、カベが若干疲れた表情を覗かせながら訪ねる。カベといえどもこの炎天下での観戦は堪えたらしい。

「いや……良い投手だったな、と」

 悪びれる事無く素直に感想を告げると、カベは苦笑いしながら

「そうか?オレはもっと良い投手を知ってるけどな」

 ……直接的には誰と言ってない。だけど。

「いいや、カベの言ってる投手は、本当に投げるだけが能みたいな奴じゃないか?それよりも、『野球選手』として万能な選手になりたかったんだよ、俺は。今更無理だけどな」

 カベは俺の顔をしばらく見てから、ゆっくりとクチを開いた。

「……完成されてるよりも未完成なものの方に惹かれるんだよ、人間って奴はな。言い換えれば『可能性を秘めている』ってことにもなるかな」

 名指しされている訳ではないのは分かっているのに、カベが珍しく誉めてくれるもんだから照れてしまう。

「へへ」

「?」

 カベはきょとんとしているが……まあいい。

「それよりも、帰って練習するんだろ?目的の試合は見たんだから早く帰ろうぜ」

「あ、ああ」

 カベの背中を押さんばかりにして椅子から立ち上がらせる。カベはそれについて何を言うでもなく、素直に従った。

 チームメイトらもいい加減疲れてしまったらしく、この後に練習をするのはちょいと辛いかなと思ったが……明日が完全オフと知らされればやる気も出るだろう。俺もそれを目当てに頑張るとするか。


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