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アンドロイドは涙を殺す方法を知っている  作者: 和本明子
第二章 目覚めた完全人間
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-2- 「マーカス地域のデトロ地点から、北西Aのgスポットです」

 大型のヘリコプターが灰色の空を翔けていく。

 タンデムローター式の大型輸送用ヘリコプターで、乗員数は五十人ほど搭載できる。その巨体を飛行するために、大きな二つのプロペラがけたたましい音を響かせ空を飛行していた。


 ヘリのキャビン内は豪華に改装され、振動が一番少ない中央に椅子が設置されている。その座り心地は最高のものだった。その椅子に強面の男…デンジャーが座り、ナイツを含む五人の黒服の男たちが周辺に設置されている簡易椅子に座っていた。


 ふとデンジャーが、暇潰しにと自分の横に設置されているモニターに映しだされている外の景色を眺める。壊れた建物や瓦礫で埋め尽くされた大地は、空と同じように濁った色に染まっていた。


「この辺りは未だ手付かずか……」


 そう独り言を呟いたが、他の男たちは反応することもなく黙っていた。狭いヘリの中に大の男たちが詰め込まれており、重苦しい空気が漂っていた。


「やれやれ……」


 デンジャーは数多くいる女中の一人でも連れてくれば良かったなと思いつつ、さっさと目的の場所へと着くことを望んだ。


 暫くして、目的地の小高い丘が見えてきた。

 一番高い場所にはバンダナを巻いた青年が待ち構えていた。青年は近づいてくるヘリコプターを見上げながら、右腕を高々と挙げて手を振り、大声で叫んだ。


「おーい! ここだ! ここ!」


 青年の声はヘリコプターのプロペラ音にかき消されてしまって届かなかったが、ヘリコプターは青年の下に徐々に下降していった。ヘリコプターが大地に近づくにつれて巻き起こる旋風が強くなり、砂埃が舞い上がった。バンダナの青年は腕で風や砂埃から目を守りながら着地を待った。


 何事もなく無事に着地したヘリコプターの中から、まずサングラスをかけた男、ナイツが降り、その後に体格の良い男たちが続いた。

 その男たちは降りると同時にそれぞれの武器、銃を取り出し、銃口をバンダナの青年に向けた。


 男たちの不躾な行為に対抗して、青年も自分の身を守るために銃を手に取った。

 一触即発の雰囲気の中、ヘリコプターから強面の男‥デンジャーが降りてきた。


 デンジャーはバンダナの青年を品定めするように見つめた。

 バンダナの青年は自分が陥っている状況に物怖じせず、明らかにリーダー格の男、デンジャーに物申した。


「おいおい……一体、これは何のマネだ?」


「すまんな。万が一の用心だよ。これでも命の狙われている身でね。もしかしたら何かしらの罠なのかも知れないだろう」


「ふん。殺しが目的なら、ヘリにこの砲銃を撃ちこんでいるよ」


「はは、確かにそうだな」


 バンダナの青年は目の前にいる男が“デンジャー”だとは知らない。しかし、身なりや雰囲気からは、ただのエージェントではないと判断していた。


「……まさか、依頼主自身か?」


「ああ。重要な取引とかには、直接私が出向くことにしているんでね。“クール”君」


 バンダナの青年…クールは自分の名前を呼ばれて内心驚く。


「オレの名前を知っているのか?」


 デンジャーは柔らかい表情を浮かべた。


「取引の相手をちゃんと把握しているのは当然だ。さて、その取引を早速始めよう。例の情報を教えて貰おうか」


 デンジャーの言葉に対して、クールは空いている方の手を差し出した。


「まずは、そっちが出すものを出してからだぜ」


「確かにな。おい!」


 デンジャーは体格の良い男に声をかけると、両手に二つのジェラルミンケースを持っていた男がクールへと近づき、丁重に一つのケースを地面に置いて、開けた。

 ケースの中には見事な黄色の光沢を放つ黄金が詰められており、初めて目にする大金にクールは思わず息を飲んだ。


「その中には一千万ほどの価値がある金が詰まっている。もう一つのケースにも同様に入っている。残りは情報が本当かどうか確認してから支払おう」


「あ、ああ……」


 目の前に置かれたケースに近づいたクール。これほどの大金を見るのは初めてだった。若干動揺と緊張を感じていた。意外にも小心者だった。

 金を直接手に取った。見た目から想定した以上の重さにずっしりと感じた。ハァーと暖かい息を吹きかけたり、表面を削ったりしてメッキではないと確かめた。


「間違いない、本物だ。これだけあれば……」


 世界が大戦で壊滅しても黄金の価値は変わらなかった。これだけの黄金があれば、最低十年は働かなくても贅沢な暮らしができると試算した。

 クールは懐から薄く小さい板状の物……メモリーカードを取り出して、


「ほらよ」


 デンジャーへと投げ渡したが、彼の所までには届かず地面に落ちたのだった

 呆れたようにデンジャーが「おい」と呼びかけると、ケースを置いた男が地面に落ちたメモリーカードを拾い、主の元へと届けた。

 メモリーカードを手にしたデンジャーは、裏表をひっくり返しつつ確認する。


「なんだ、随分古いメモカだな。データは消えていないだろうな?」


「多分大丈夫じゃないかな。この間、手に入れた品だから」


「そうか……。おい」


 デンジャーは、そのメモリーカードを拾い届けてくれた男のコメカミに空いている隙間へと躊躇無く押し込んだ。


「S五十……N三十……ローディング中……」


 メモリーカードを入れられた男は、片言の独り言を呟いた。どうやら無事に中身のデータを読み取ることができているようだった。クールは内心安堵していたが、デンジャーはまだ気を抜いていなかった。真贋の結果を確認するまでだ。


「……デンジャー様。読み込み完了しました」


「それで場所は?」


「マーカス地域のデトロ地点から、北西Aのgスポットです」


「そうか……。それじゃ、確かめに行くか」


 デンジャーはクールに背を向けて歩き出し、直ぐ様クールが声をかける。


「お、おい、残りの金は?」


「言っただろう。情報が確かだったらな。ついて来い、案内して貰うぞ」


 今ここで残りの金を貰えないことにクールは舌打ちをして、地面に置かれたジェラルミンケースを拾い上げた。面倒くさそうにデンジャーの後を追い、ヘリコプターの中へと乗り込んでいった。

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