おまけ
【ルーは英雄】
ルーの右腕が動かなくなる三年前の事である。終わりの八年前隣国は二つあった。一つはルーの親がいる隣国。ルーの国はカツサンドのカツのような形だ。もう一つは海に接した国で独裁政権が行われていた。大臣は隣国であるルーの国に助けを求めた。
「お助けください!もう我らの国は持ちません!」
「ふむ僕も君達の国の内情は知っている分かった」
「ありがとうございます!」
「ただし!このことに関しての一切の権限を現騎士団長に任せる!」
「はい!了解いたしました!ではその団長様と言うのは!?」
「あー俺だまったく・・・じいさんよメンドクサイ事させるなー」
「ふぉふぉふぉこれでも信頼してるんだ頼んだよ」
「はいはい・・・えっと大臣だっけ?部屋で詳しい話をしようぜー」
「・・・任せてよいのでしょうか」
このときまだルーは未成年である。大臣からすればこんな若造に任せていいのか?という心境だった。
「よしじゃあノア!どんな作戦がいいと思う?」
「そうじゃな・・・正面から立ち向かってもよいじゃろう」
「それはなりません!」
「あぁその通りだ人の命は大切にしたいしそうだな・・・よし大臣!今そっちの王に味方はいる?」
「いえ形は味方していますが最愛の王妃でさえ王のやる事を非難しております」
「そこまでいったら救いようが無いな見張りは誰がやっている?」
「王妃でございますしかし夫でありますから毒殺に踏み切れない状況であります」
「ルーカス大体お前のやりたい事がわかった」
「あぁ毒殺なんてやらせない」
「本当でございますか!ありがとうございます!」
「ただし!俺がやるからには一つ条件がある!」
「はい!何でしょう!?」
「国でさいっこうの酒を用意しろ!国民全員で宴会をするぞ!」
「・・・あなたが国王から慕われている理由が分かった気がします」
「よし!ノア!準備しろ!」
「任せろ!」
作戦はこうだ。毒殺ではなくただ眠ってもらうだけ。ただそれだけだ。
「着いたなとても維持できなさそうだよく持ったもんだ」
隣国の国民の目は腐っていた。人生に絶望しでも自殺するほどの勇気も無い。生きながらに死んだ目だ。
「あぁちくしょうもっと早く来ればよかった」
「私のミスです私のちんけなプライドが足を止めてしまっていたのです」
「大臣を責めるつもりは無いぜそのまま来なかったらぶん殴っていたけどな」
「ルーカスアレが王妃みたいだ」
「これは目が死んでしまってる・・・よく耐えました王妃様」
「・・・ありがとう・・・ありがとう」
「あぁ王妃様一つ願いがございます私は変装しますが王の警戒心は強いでしょうあなたの紹介という事にして頂けませんか?」
「・・・いいわこの国の皆に被害が出ないなら」
「もちろんです私は貴女と同じぐらいに人の命を誰よりも重んじている自信がございます」
「・・・その目を信じます城へ案内しましょう」
城の兵士も疲弊しきっている。ちなみにノアは国境近くに戻って王への報告を簡単に済ますようにしている。一応チェックを受けたがルーたちがなぜ来たのか分かっていたのだろう。救いを求めた目をしている。
「お前達に言っておくこの作戦が終わったら・・・宴会だ」
「あぁ・・・あぁ任せた・・・任せたぞ」
屈託の無い笑顔でルーはそういった。兵士達の目が明るくなった。あぁこの人の下で動きたかった。絶対に生きがいがあるだろう。ルーはこの一言で兵士の心をつかんだのだ。
「あなた新しい補佐をつれてきたわ」
「ふん!補佐などいらんわ!俺一人で十分だ!」
「あぁ!あなたが偉大なる王!私はあなたにどれだけ救われたか!このたびお仕え出来て感謝の意が絶えません!」
「む?そうか?はっはっは!」
ルーは天性の人心掌握術を発揮し王がどんな言葉や態度を欲しているかを瞬時に判断しこの言葉とまるで王を神と崇めるかのような態度を取った。その結果見事に王に気に入られた。
「はっはっは!お前名前をなんと言う!?」
「私はセバスといいますその名の如く王に仕えられよと親から言われております!我が一族は少々気性が荒いこともあり大変お見苦しいこともお見せしてしまうかもしれません!その時は侘びとして断頭台へお立てしていただきます様!」
「お前はなんとよい青年か!よし!セバス!ワシの身の回りの世話を任せたい!」
「あぁ恐悦至極でございます!親孝行も出来ずに死んでしまった両親にどれだけ自慢できましょうか!」
「はっはっは!満足いくまで自慢したまえ!」
王妃はただただ呆然した。あんなに人に心を開かなかった人があの青年の一言に心を開いたのだ。それがルーの天性の人心掌握術の凄さを物語っていた。
「ワシはもう寝る!警備を任せたぞ!」
「はい!王の睡眠を妨げるものは直ちに切り捨てます!」
「うむ!頼んだぞ!」
「はい!」
にこやかな笑顔と共に布を取り出した。睡眠薬を限界まで溶かした水溶液を染みこませた物だ。少しでも吸えばすぐに夢の世界にご案内だ。
「王!ごみが付いてしまっている!取って差し上げましょう!」
「あぁ!たのん・・・」
もうこれで5時間は起きない。どんな衝撃を与えてもだ。ルーは国全体が見えるバルコニーで息をいっぱいに吸った。
「この国全ての民に告ぐ!!今!お前達は!自由になった!王は捕まえた!もう一度言う!お前達は自由だ!!」
それこそ天を突くほどの大声を出した。国全体が喜びの声を上げる。
「この国は我が祖国と併合するだろう!しかし安心してほしい!せめて!せめてこの生活をもう一度はさせないと!王に代わって!ここに宣言する!」
国全体が万歳コールに包まれる。とその時5匹の馬が国に飛んできた。
「団長!もって来ました!」
「よしノアジュニア!よくやった!皆!宴会を開く!酒と肉を食いたい奴は城に集まれ!」
わぁ!となだれ込む。城はかなり広く作られているようで宮殿といった方がいいのかもしれない。
「おいしい!おいしいよ!母さん!」
「えぇ!こんなに美味しいご飯を食べたのは何年ぶりかしら」
「酒だー!酒があるぞー!うめぇ!」
「あぁありがとうあなたのおかげで国民の笑顔を久しぶりに見たわ」
「いいのです私は人の笑顔が何よりも好きですから」
「名前を聞かせてくれないかしら?」
「私はルーカス・スコッティ隣の国の騎士団長です」
「おう!憶えてるか!お前の持ち物チェックをしたやつだ」
「おう!言ったとおり宴会だ!酒飲め!肉喰え!」
「あぁ!俺はアレックス!アレックス・スミスだ!よろしくな!」
「俺はルーカス・スコッティ!ルーて呼んでくれ!」
「よし!ルー!飲むぞ!」
「おう!」
「こらこらルーカス!お前まだ成人しておらんだろうが!あとわしの息子はフレディだ!ノアジュニアなんぞではない!」
「そう硬い事言うなよ!ノア!いいじゃねえか!今日だけ!」
「駄目じゃ!お前はまだ騎士団を背負ってるんじゃ!早死にされたらどうするんじゃ!」
「分かった!分かったよ!そんなせまんな!分かったから!」
「ふん分かればよい!またな!」
「やれやれうるさいジジィださて!飲むぞ!」
「ジジィで悪かったな!酒は飲むな!」
「げっ!聞こえてるのかよ・・・」
「大変だな・・・ルー」
「さて俺はもう一仕事あるちょっくらやってくる」
「おう行ってこい!」
「あぁ・・・えー!俺の名はルーカス!今回王を捕まえた張本人だ!集まって貰った国民の皆!お前達はこの王をどうしたい!?」
死刑!と誰かが言う。それに国民全てが同調する。
「バカ野郎!!!死をそんな軽々しく言っていいもんじゃねぇ!!!それ以外で考えろ!」
全員黙ってしまった。とそのとき小さな女の子が言った。
「一緒にご飯食べたらいい!」
「お!それだ!それにしよう!明日は俺の国に全員招待だ!そこでもっと大きな宴会を開く!」
ルーカス!ルーカス!とコールが城中に響き渡る。ルーはそのコールを受けながら城を後にした。
「ノア!帰るぞ!宴会の準備だ!」
「王への報告が先じゃい馬鹿者!」
黒馬と茶馬が走っていく。二人が乗っているのはどちらも戦に何回も耐えてきた名馬だ。ルーのは父から受け継いだものだ。
「おう!ルーカス!戻ったか!して首尾は!?」
「大成功!明日はあっちの国人全員こっちに来て宴会するからよろしく!」
「もう準備してある!お前が行った傍から準備しておったわ!」
「さっすがじいさん!俺の思考回路を完璧に読んでやがる!」
二人で笑いあう。そこには役職に関係ない友としての笑いがあった。
「じゃ俺帰るわ!リヴィ待ってるだろうし!」
「おう!明日は寝させないぞ!」
「じいさんもな!」
ルーはそれだけいい家に帰って行った。この時家は今の場所ではなくもっと城寄りであった。国は横に広く縦には狭いという変わった形をしていた。海の国との国境は僅か三キロである。
「リヴィ!帰ったぞー!」
「あ!お兄ちゃん!おかえりー!」
「おうただいま!リヴィ!どうだいい子にしてたか!?」
「うん!いい子にしてた!頭撫でて!」
「よしよしいい子いい子ごめんないつも一人にしちゃって」
「いいよー!ごはん!ごはん!」
「はいよー!今日は炒飯だー!」
「わーい!」
この時リヴィは9歳だった。小さいとはいえ家事はできた。
「よし!寝るぞー!」
「おー!」
家は一階で部屋も一つしかなかった。寝室だけの簡単な家だ。ルーは家の改築資金を集めていた。リヴィには内緒で。
「おやすみーリヴィ」
「おやすみなさいーお兄ちゃん」
そして次の日。ルーはリヴィに書置きを置いて隣国へ出かけてた。書置きには今日は宴会朝ごはんは宴会でとの旨が書いてあった。
「アレックス!王妃!王の様子は!?」
「禁固してあるルー国民がお待ちかねだ」
「おう!待たせちゃ悪いな!じゃあ行くか!」
門の前でアレックスと王妃が待っていた。もう三人とも友だった。これがルーとアレックスの出会いだ。
「さあさあ!国民の皆!わが国にご招待だ!着いて来い!」
おぉー!と国民が着いていく。アレックスの右手には縄に繋がれた暴虐の王がいた。
「無様なもんだな?王様」
「ふん騙されたわ」
「あんたが求めてたからじゃねぇのか?ルーは演技だったが自分に笑顔を向けてくれる人をよ」
「・・・かもしれんな」
「お?結構素直じゃん」
「俺は・・・止めてほしかったのかも知れん歯車の狂った自分を」
「ルーでよかったよあいつはお前の歯車を叩き直したからな」
「あぁすっきりしたよ」
国について最初に城へ行く。こちらも大きい部屋のようなものがあった。
「えーよくきてくれた!僕がこの国の王だ!君達の国の事情は知っていながら見てみぬ振りをした事をどうか許してほしい!だが今日から君達はわが国の国民だ!不満があれば修正し仕事も出来る限りの援助をしよう!」
パチパチと拍手の音が鳴り止まない。昔の国を彷彿とさせる。
「さ!じいさんの話も終わったし宴会だー!」
「待ってたぜルー!食うぞ!」
「おう!て言いたいが妹が腹空かしてるだろうしつれてくるよ」
「分かった!じゃあ先におっぱじめてるぜ!」
「ちぇー!早くつれてくるぜ!」
「おう!」
走って家まで帰る。家に着いた。
「リヴィ!飯だ!」
「お兄ちゃん!ご飯!ご飯!」
「おう!お城で宴会だー!」
「おー!」
一緒に城まで走る。リヴィはこの時初めてルーの事を異性としてみたがすぐに家族愛に戻った。しかしこれがリヴィの恋の始まりだった。
「アレックスー!帰ったぞ!」
「おう!先に飲んでるぜー!」
「あー!俺も飲むー!」
「馬鹿者!また飲む気か!?今日という今日は許さんぞ!」
「まぁまぁノアよいいじゃないか僕が許可しよう」
「王!甘やかしすぎです!ルーカスはまだ成人しておりません!」
「あれ?そうだっけ?残念だねールーカスふぉふぉふぉ」
「上げて落としやがったよ!一番つらい奴だ!」
「お兄ちゃんーあの人なんで食べてないのー?」
「ん?あぁリヴィ!このご飯をあの人に届けてやってくれ」
「はーい!」
とことこと皿を運ぶリヴィ。その届け先は暴虐の王だった。
「おじさん!はいこれ!」
「ん?あぁおじさんはいいんだお食べ」
「いいの!食べたら美味しいよ!食べるのー!」
「分かったよ・・・」
「ねおいしいでしょー!」
「!・・・おいしいよとってもあぁとってもおいしい」
「?おじさんなんで泣いてるのー?」
「・・・なんでだろうねおいししぎたのかな」
「えへへー!じゃあねー!」
「うんじゃあね」
「あなた・・・ごめんなさい」
「いいんだ子供を亡くしてその現実を受け入れられなかった・・・それどころか国に当たってしまった」
「ごめんなさい・・・私がもっと病気に早く気づけば・・・」
「いいんだ・・・もういいんだよもう一回やり直そう」
「はい・・・あなた」
「おーい!おっさん!ちょっとこいよー!」
「おっさんて俺のことか?」
「おう!じゃあ何か?まだ自分はお兄さんだって言い張るか?」
「はっはっは!まだ言いたいが年だおっさんでいいや!」
「!いい顔になったじゃんよ俺が演技した時とは大違いだ!」
「お前なぁ!よく騙してくれたな!はっはっは!」
「騙されるほうが悪いんだぜ!ほらこいよ!酒飲め!肉喰え!」
「おう!食べるぜ!」
「アレックス!肉持ってこーい!」
「ほいよー!どんどん食うぞー!」
「ちょっと俺は王と話してくる」
「おう!おっさん!早くもどれよ!」
「あぁ!すぐ戻る!」
「お?僕に用かい?ふぉふぉふぉ」
「はい国民に謝ろうと思います」
「うん分かったよ」
「ありがとうございます・・・皆聞いてほしい!俺は皆にとても酷いことをした!これは紛れも無い事実だ!すまなかった!本当にすまなかった!許してほしいとは言わない!ただこれからは一人の国民として暮らす以上どうしても言いたかった!ほんとうにすまなかった!」
「もういいだろう!お前は変わった!皆も目を見てみろ!あの暴虐の王の目じゃない!許してやろうぜ!」
アレックスが叫ぶ。あぁ!そうだ!昔はいい王だったんだ!その恩を忘れたわけじゃないしな!という声が上がる。王はこの言葉を聞いて泣き崩れた。
「なぁおっさんお前んとこの奴らすごくいいやつじゃないか」
「あぁとてもいい民だ俺にはもったいなかったな」
「そんなことなかったぜ?俺が兵士として志願したのはあんたの人柄に惹かれたからだ」
「だってよ!おっさん!あんたも根はいい奴だったんだな!」
「はっはっは!だな!いいやつだったんだ!」
「さて!言っておくが明日から働くぞー!併合するためにどんどん建物建てないといけないからな!」
「もちろんだぜ!全男手総出だぜ!」
「俺もやるぜ!おっさんだがな!はっはっは!」
とても一日前は敵同士だったのだとは思えない。ましてや一人は王残りの二人は兵士だ。ルーは懸け橋となってみんなの心を繋いだ。それは王と兵士という壁を易々と越えた。
「よーし!お開きにするぞー!」
「ふぉふぉふぉきょうはありがとうね」
「じゃあな!ルー!」
「おう!じゃあな!アレックス!」
「はっはっは!また飲もうじゃねぇか!」
「うわっ!酒くせぇよ!おっさん!」
「お兄ちゃんーかえろー」
「おうおりょ?眠いのか?」
「うん・・・眠いー・・・」
「ほらおいでーおんぶだー」
「はーい・・・えへへ暖かいー」
「だろー寝てていいからな」
「・・・」
こうしてルーによる解放作戦は終わりを告げた。しかし大変なのはここからでおっさんのせいで荒れに荒れた国を復興し併合するために工場、住居を作らなければいけない。しかしルー率いる騎士団総出と国民総出の大仕事だ。そう長い時間はかからないだろう。
「うん!ここにしよう!海も近いし!城からもそうそう遠くないし!最高の立地条件だ!」
ルーが家をたてる場所はちょうど国境があった場所だ。もうちらほらと家が建っており寂しいとは感じさせない。城からも三キロしかはなれていないし海も徒歩圏内だ。ルーは一度海の近くにすんでみたいと思っていたため最高の土地だった。
「お兄ちゃん?お引越しー?」
「あぁ!新しい家を建てるぞ!」
「わーい!おうち!おうち!」
「おー!ルーカス!俺も手伝うぜ!はっはっは!」
「ルー!俺もだぜ!」
「おっさん!アレックス!さんきゅな!」
おれもやるぜ!わたしも!ぼくも!じゃあ私はおにぎり作ってるわ!ルーの国と海の国全国民でルーの家を作っていく。たったの二日で出来てしまった。
「ありがとな!皆!助かったぜ!」
「いいってことよ!ルー!」
「ちなみに隣の家俺のだからな!はっはっは!」
「げっ!?まじかよ!まよろしくな!」
「げってなんだ!?げって!?」
「ほらほら細かい事気にスンナ!おっさん!どんどん復興するぞ!」
おー!復興だー!そーれ!あらよっと!木材運べー!この石どけるぞー!おにぎり作ったよー!あと麦茶!やったぜー!ぶー!これ塩握りじゃねぇ!砂糖だこれ!あららごめんなさいね料理不慣れなもんでしゃーねー俺が作ったらぁ!家どこだ!?着いてきて!こっちよ!アーナンカアツイナー?ソウダナー
「こりゃ案外早くなりそうだ」
ルーの国と海の国がくっつくのに掛かった時はたったの半年だった。工場と家が並び周辺国より何世代も先の技術が発展していった。勿論ルーとおっさんの提案により廃棄物をとても綺麗にする技術もあった。そのせいで公害も起きず空気が綺麗な場所だ。今ルーが住んでいる所はそういう所なのだ。元を正せば海の国だった場所。だからルーは子の地域の人々にとって英雄なのだ。ちなみに英雄の銅像としてルーの銅像を建てようと思っていたのだが。
「あっはっは!俺みたいなのを銅像にするんだったら子供たちの手形を取ろうぜ!」
なんと欲が無い男か。さっそく手形を取ってどうどうと飾った。それを見るルーの顔は誇らしげだった。
FIN
【死神の準備】
「・・・よし弁当作るか」
朝早く起きて弁当を作る。左手一つで弁当を作っていく。おにぎりはお茶碗にご飯を入れてお茶碗でふたをする。そこからよく振る。そうすると綺麗な丸いおにぎりが出来るのだ。これは幼いころに母から教えてもらった。
「よし出来たあとはこの本だ」
本の題名はオリーブの木。著者はマシュー・スコッティとリフィア・スコッティ。そうルーとリヴィの親だ。ルーとリヴィの名前から連想して作った本だと母から聞いた。昔母がリヴィに読み聞かせた時は死神さん怖いーとルーに抱きついていた。その死神さん俺のことなんだけどな・・・と思ったがもちろん言わない。
「さて寝ますか」
もう一度リヴィが寝てる部屋・・・自室なのだがリヴィは昨日一緒に寝てほしいとお願いされたのだ。
「がんばれよリヴィ」
さて寝よう。あとはリヴィの勝ちを信じよう。まぁさすがに行きたくなったらいくけど。と思っていた。だが夢を見る。
「ルー私よリフィアよ」
「母さんかどうした?」
「あららそんなに驚かないのね・・・はぁ」
「まぁまぁそういってやるなリフィアようルー」
「父さんもかい!」
「悪かったなさて俺達が夢枕に出てきたわけだが」
「そうねこの戦い貴方の力が必要よルー」
「はいはい俺もその気だったしな出るよ」
「さすがは死神だ任せたぜ」
「父さんには及ばないぜもう右腕も動かないしな」
「あら?私知ってるわよ隣国の王様が貴方のために義手を作ってるって事」
「げっ何で知ってるんだよ・・・」
「まそこらへんはどうでもいいんださてそろそろ起きろルー」
「私達が夢枕に立った印に枕の下に指輪を入れておいたわ」
「リヴィと結婚するんだろう?使え」
「あぁありがとうじゃあ行って来るよ」
「えぇオリーブの木を守ってね」
「任せたぞ光の死神」
「あぁ任せておけ今度会うのはあの世だ」
「あぁ待ってるぞじゃあな」
そして意識が途絶えた。いや戻ったと言うべきか。
「ほんとにあった・・・ありがとな最高の贈り物だぜ」
枕の下にはグリーンダイヤとブラックダイヤがあった。オリーブの色と黒いながらも光を綺麗に反射する色。親はなかなかどうして泣かせてくれる。
「・・・よし!行って来るぜ!」
まず準備して向かったのは隣の家。
「おっさん!起きろ!早く起きろ!」
「なんだよーせっかく嫁とイチャコラしてたのにー」
「お前元王だろうが・・・右腕!義手出来てんだろうな!」
「!やるんだな!よーし!待ってろ!」
「さっさと終わらせてくれよ!」
「すぐ終わる!右腕を出せ!」
「よいしょっと!いた!いたた!締め付けきつすぎんだろ!」
「お前感覚無いんだろ?」
「そうだった・・・お?おお!?すげぇ!動く!動くぞ!感覚もある!」
「だろ!?仕組みはいわんぞ!理解できねぇだろうからな!」
「あぁ!ありがとな!行って来るぜ!」
「おう!行って来いはっはっは!」
さてこれで右腕は動くようになった。あとは王に許可を貰うだけだ。
「ルーカス!まだおったか!」
「じいさん!ちょうど良かった!許可を出して・・・」
「あい分かった!今王の命を言い渡す!ルーカス・スコッティ!ただいまより遊撃隊隊長に命ずる!至急二分前に出立した騎士団長オリヴィア・スコッティの補助をしろ!」
「了解!我が国王!」
「行って来い!ルーカス!」
「あぁ!じゃあな!」
そういいルーは走っていく。自分の大切な父親の形見がある場所へ。
「おーい!おきてくれ!」
「はいはい・・・おやルーカスじゃないかい」
「ルーカスーどうしたのー?」
「鎧を持ってきてほしい!あと馬!」
「行くんだね?止めりゃしないよただ戻ってきなさいね」
「ルーカスー戻ってきてねー」
「あぁ!かならず!戻ってくる!リヴィと一緒に!」
急いで持ってきてくれた鎧に身を通す。色調は黒。挿し色に赤。剣は黒の剣が二振り。胸には蓮の花。真っ黒いマント。そこには昔の死神がそこにはいた。後は黒馬。リフィアと名付けられたその黒馬は歴戦の戦いを耐えてきた。最も信頼する馬だ。
「行ってくる!」
「いってらっしゃいねルーカス」
「またねールーカス」
「あぁ!」
この先戦いが待っているだろう。しかしルーの心に不安や恐怖は無かった。なぜなら自分はオリーブの木を守る死神なのだから。
FIN
【終わりより十三年後】
「お父さんー私はどうしたらいいのかな?」
「ん?どうしたいきなり」
「私の将来だよどうしたらいいんだろ?」
「ふむ自分で選択肢はあるのか?」
「大まかに三つあるよ一つ目は騎士団に入る事二つ目は遊撃隊に入る事三つ目は王専属隊に入る事」
「全部隊か・・・なんで入りたいんだ?」
「えっとねお父さんとお母さんの背中を見てたら私も国のために隊に入りたいなぁって」
「なるほどなしかし一つだけ言っておくこの仕事はきついそれが女性ならなおさらだ」
「うん分かってるそれも実際に見てきたよ客観的に見ても私がついていくのは難しいと思う」
「あぁそこまで分かっているなら良い後はどれに入るかという問題だけだな」
「うんそこで悩んでるんだどうしたらいいんだろ?」
「見極める方法としてその選択肢の良いところと悪いところを五個上げてみるという物があるやってみたらどうだ?」
「うーん良い所は上がるけど悪いところは中々上がらないや」
「それはまだ楽観的に考えているところがあるからだ・・・もう遅い自室で考えろ明日正式に聞く」
「はーいありがとね相談に乗ってくれて」
「あぁいつでも乗るからどんどんいってきていいぞ」
「うん!ありがとう!」
「あぁおやすみ・・・あぁそうだお前の部屋にオリーブの木というものがある一度読んでみろ」
「?分かった読んでみる」
「ただいまーあら?どうしたんですか?真剣な目をして」
「今日アリスから隊に入りたいと言われたんだ」
「騎士団?遊撃隊?専属隊?」
「そこを悩んでいるみたいなんだ騎士団か遊撃隊か専属隊かと」
「そうですか・・・なんて答えたんですか?」
「色々言ったが最終的には自室で良く考えろと」
「まぁ貴方にしては上出来ですねあなた口下手ですから」
「それは言うな・・・俺ももどかしいんだ」
「最近落ち着きましたからね昔はもっとこう油に火をつけた感じだったのに」
「今は炭だ昔は自分とお前だけを守ってれば良かったからなだがアリスが生まれてからはもっと長く燃える・・・そんなに強い炎じゃなくていい少しでも守れる力があるそんな炎になりたかったんだ」
「だから勉強も始めたんですね?将来アリスが困らないように」
「んまあな案外楽しいものだこれが分かると世界のここが分かるという具合に世界中の鍵を解いてる気分になれるそれが勉強の楽しさだと俺は思う」
「そうですか今じゃ右腕も自分で作ってますもんね」
「あぁおっさんももう年だからな」
「年取ってるといってもまだ六十代ですまだ元気なほうでしょう」
「そうだなさて俺たちも寝るか?」
「はいそうしましょう」
「あぁおやすみ・・・」
「おやすみなさい」
【戦いより十三年後続】
「父さん!私決めた!遊撃隊にする!」
「ふむしてその訳は?」
「光をもたらす人になりたい!本の死神と同じように!」
「!その心意気や良し!歓迎しよう!」
「はい!隊長!よろしくお願いします!」
「あらあら朝からうれしいニュースね」
「お母さん!おはよう!」
「はいおはよう今日は早速行くの?」
「うん!」
「さて今日の朝御飯は俺が作ろう祝いだ」
「わーい!父さんのご飯だー!」
「それって私のご飯あんまり美味しくない?」
「ううん!お父さんが料理作ったの昔風邪引いたときだけだったから!お母さんのも凄く美味しいよ!」
「その凄くおいしいご飯を教えたのは俺だがな」
「私だってアレンジしてるんですよ?たとえばあの炒飯は卵にお酢入れてますし!」
「そうするとご飯がぱらぱらになると昔俺が教えたからだろうが」
「あとハンバーグに氷いれたり!」
「それも肉がだれないようにと俺が教えたもんだ」
「・・・完敗です」
「お前のご飯を片腕で作ってきたんだそうそう負けるつもりは無い」
「でもいつか越えます!」
「あぁがんばってくれ・・・さてアリスお前に一つ料理を教えてやるこれは俺達の母の料理だ」
「へーどんなの!?」
「ポトフだ」
「ポトフー?何それ?」
「まぁ簡単にいうとコンソメでできたスープだ質素ながらもとても温まる」
「あらあら今日早起きして出掛けていったのはそのせいね?」
「ふん材料が足りなかったんでな・・・アリス手伝って貰えるか?」
「はーい!何するの!?」
「ジャガイモの皮剥きをやろうお前は新しくできたこのピーラーなるものを使ってな」
「はーい!へーこれがピーラー・・・お!?おお!?すごいこれ!うすーく切れる!」
「ほうほう中々にいいものだな慣れない内はそのピーラーを使った方がいいなガードが付いてるから手も切れない」
「と言いつつお父さんはまるでリンゴの皮のように剥いてる!?すごいー!」
「これでも右腕が使えるようになってからだな昔はそのまま茹でて切ってから身を押し出すという方法だったな綺麗にとれるんだ」
「へーそう言えば何で右腕だけガントレットつけてるの?外したの見た事無いや」
「はぁお前もリヴィと同じで疑問に持つのが遅過ぎる・・・これは飯が食べ終わったら教えてやろう」
「はーい」
「手は動いてるようだなよし後は座ってて良いぞ自分で出来る」
「了解!じゃあ待ってるね」
「おう待っててくれ」
「アリスちょっと来て」
「なーにお母さん?」
「ポトフってねスープだからお腹はそんなにいっぱいにならないわ」
「私朝そんなに食べれないよパン一枚がやっと」
「あらそうだったっけ?もしかしたらそれを分かっててポトフにしたのかもね私のお母さんの料理て少し重いものだったから」
「そうなんだやっぱり朝はかるーいものが良いね」
「ほらできたぞ・・・食べてみてくれ」
「わーい!ご飯!ご飯!」
「・・・昔のリヴィみたいだ」
「私ってあんなにはしゃいでました?」
「あぁ俺がご飯と言うと周りを飛び跳ねてたからな」
「犬みたい・・・」
「昔のほうが可愛げがあったがな」
「じゃあ今は可愛くないというんですか?」
「可愛くはなくなったが代わりに綺麗になった」
「また貴方はそういうことを恥かしがらずに言うんですから困り者です」
「ほらほら!惚気るのもいいけどポトフ冷めちゃうよ!」
「んそうだなじゃあ頂きます」
「頂きます」
「頂きます!」
「どうだ?美味しいか?」
「うん!でもがつんとした旨さじゃなくて何と言うか・・・」
「風邪を引いた日に食べるお粥みたいな感じかしら?」
「そうそれ!昔お父さんが作ってくれたお粥みたいに温まる味!」
「良かったよレシピは簡単だから今度教えてやろう」
「わーい!お父さんの料理教えてもらえる!」
「ジャガイモが入っているから腹持ちも良いし簡単だから良くリヴィの朝御飯に作ったものだ」
「お母さんとお父さんて兄妹だったんだよね?」
「あぁ結構お前は血が濃いんだ無事に生まれてきてよかったよ」
「えぇあんまり血が濃過ぎると危ないって聞いたことがあってね心配だったのよ」
「へー私無事に生まれてよかった!」
「うっうっ」
「あらあら貴方そんな泣かないで・・・まったく事ある毎に泣くんだから」
「私お父さんが泣いてるの初めて見たかも・・・」
「そう?でも確かにお父さん泣きそうになるとどこかに行っちゃうから・・・嬉しかったのねアリスの事が」
「・・・よしアリス行こう」
「泣き止むのはやっ!」
「まぁまぁ性格よ性格行って来なさいよ今日は多分色々回るでしょうから・・・時間的に隊までは顔出せ無そうね」
「うん!じゃあ行ってきます!」
「あぁまず仕立て屋に行かないとな知り合いの店があるんだそこに行こう」
「はーい!」
「あっそうだアリスちょっと耳貸して」
「なーにーお母さん?」
「あなたオリーブの木を読んだって言ってたわねどこか好きな所ある?」
「うーん色々あるけど一番好きなのは『死神は光をもたらす人でした』て部分が好きかな」
「お父さんの名前っていえる?」
「ルーカス・スコッティ・・・何かあるの?」
「ルーカスってね元々の意味は光をもたらす人って意味なのよその台詞をルーカスに置き換えてごらん」
「?『死神はルーカスでした』・・・あっ!」
「その本ね私たちのお母さんあなたのお婆ちゃんが作ったのよちなみにオリヴィアてオリーブの木って意味」
「だからあんなに喜んでたんだ!そりゃ自分みたいになりたいって娘が言ったらそうなるか・・な?」
「えぇ一番嬉しかったはずよさ早く戻ってあげて」
「うん!ありがとうお母さん!」
「何話してたんだ?アリス」
「ううん!何でもない!早くいこ!」
「?まぁいいまずは仕立て屋だ」
「はーい!」
「アレ!?ルーカスさん!お久しぶりです!」
「おうまずはちょっと行って来る」
「はいありがとうございます」
「アリスお前も来い」
「?はーい」
「うんやっぱりお婆ちゃんもよろこんでますよいつかルーカスーなんていってきそうです」
「あぁまた来るよばあさんまたなリフィア」
「お墓?綺麗なお花・・・」
「それはな菊というんだ亡くなった人に敬意を表するときに供える」
「こっちのお墓には蓮の花?」
「あぁそこには馬が眠ってる俺の父さんからの馬で蓮が何より好きだったあんまり縁起は良くないがな」
「へー隣同士で寝てるんだ」
「あぁ良く手にかけてくれていてな一緒に寝たいと自分で決めたらしい・・・さて今日来た理由だが」
「はい大方アリスちゃんの鎧作りですね?」
「いつも察しが良くて助かる頼めるか?」
「もちろん!アリスちゃんこっち来て?」
「あぁその間に城へ行って来るアリスの入隊を王に伝えなければ」
「分かりました行ってらっしゃい!」
「あぁ・・・ん?おうおっさんか」
「ようルーカス右腕はどうだ?といっても自分で作れるから平気か」
「まだまだ改善の余地はあるさまた手伝ってくれよな」
「もちろんだまた聖なる旅に出ようじゃないか!」
「あぁ!」
「じゃあまたな!」
「あぁまたな」
「ルー!よう!」
「アレックス!お前王の護衛は良いのか?」
「その王が今日は休めってよ」
「じいさんに似たんだなまったく・・・」
「あぁじいさんの孫らしいや」
「祖父が祖父なら孫も孫じいさんの志はずっと流れてるだろうな」
「お前たまにはいい事言うじゃん」
「俺もう三十後半だからないいことしか言わんぞ」
「よく言うぜ昔のほうが格好良かったが・・・」
「今は格好悪いと?」
「いんや渋くなったいい親父の魅力どばどばでてるぜ」
「ありがとなお前も子供が生まれたんだろ?名前は決まったのか?」
「おうマシューて名前だいい名前だろ?」
「あぁいい名前だいい奴に育つだろうな」
「なんてったって俺の倅だしかもお前の親父の名前だ悪い奴に育つわけが無い」
「知ってたのか俺の父さんの名前を」
「あぁまぁ結構有名なんだぜ?じゃ大きくなったら見せに行くからよ」
「あぁまたな・・・着いたおう俺だ」
「ルーカス・スコッティ様ですね!お通しします!」
「そう堅くならなくていい俺が隊長でもお前が女でも同じ兵士で同じ国民だ」
「・・・はい!分かりました!」
「・・・本当に分かっているのか心配だ・・・まぁいい国王は今どこに?」
「自室にて隣国の王と会談しております!」
「ふむ俺も邪魔していいか聞いてくれ」
「了解です!」
「しかし人も変わったなアレックスも妻子を持ちばあさんは亡くなりリフィアも眠ったじいさんは隠居してるおっさんは相変わらずだったな」
「ルーカス様!入っていいとの許可が!」
「了解じゃあまたな」
「はい!また!」
「国王ルーカス遊撃隊長入ります」
「あぁルーカスさん!どうも!」
「はい国王ご無沙汰しております」
「そんなに堅くならないでくださいよ!立場は違えどあなたは私の親のようなものです!」
「はぁあのじいさんの頼みですから断れなかったというか何と言うか・・・」
「まぁまぁ!紹介します!こちら隣国の・・・」
「久しぶりだなリアン」
「あぁ来てたなら言えばよかったのによ」
「?お知り合いですか?」
「いえまぁルーカス殿とは色々と」
「私の実父なのですまぁ実父といってもそこまで繋がりはありませんが」
「えぇー!?ルーカスさんの本当のお父さん!?えっ!?えっ!?」
「リアンこうなると思ったから濁したんだぞ?」
「親父俺は隠し事が苦手なんだもっと竹を割ったように話が好きなもんでなそれにあんまり濁すと嫌われるぞ?」
「お前のその性格は誰からもらったのか・・・」
「決まってるだろ?父さんからさまぁ多少親父も入ってるがな」
「ええとルーカスさんはこっちサイドの人ですよね?」
「もちろんですこの国と向こうの国を比べたらやっぱりこっちがいいです親父には悪いけどな」
「ですよねー良かったーあっいや!疑ってるわけじゃないんですよ!?ただルーカスさんは一騎当千であり私たちの英雄ですから・・・えっと・・・」
「私は英雄なんて柄じゃないですよ国王こそ若くしてこの国を纏め上げてるじゃないですか」
「それは今迄の代からの恩恵でしょう私なんてまだまだの身です女だから王には相応しくないのではといつも思ってしまいます」
「貴女は私の妹に似ています私の妹もそうやって私に聞いてきました自分は団長に相応しくないのではないかと」
「オリヴィア騎士団長・・・確かあなたが席をお譲りになられたとか」
「いえ妹はもとより剣の才能が突出しておりました多少の鍛錬を積めば私などを超えてしまうほどにですしかしいざ譲ろうと思った矢先事故が起きてしまい仕方なく譲ったという体裁になってしまったのです」
「その右腕のことは私も存じております確か木材が肩に刺さってしまったという・・・」
「はい一時期動くことは叶いませんでしたが私の隣人昔海の国を治めていた人が私のために義手を作ってくれたのですそれに改良を重ね今のこれに至ります」
「そのガントレットはそんな意味があったのか初めて知ったぞ」
「なるほど疑問に持つのが遅いのは親父の影響だなリヴィとアリスにそっくりだ」
「へーそうなのか」
「あぁ小さい頃はこの右腕の事をいつ聞かれるのか期待していたんだが今日やっと聞かれたよ・・・」
「ふふふやはりルーカスさんは面白い方です昔から」
「そうでしたか?あまり面白いと思ったことは無いのですが・・・」
「感情表現が豊かなのですよ喜ぶときはまるで天使と会ったかのようにしますし悲しいときは世界の終末のような顔をします」
「むうそのような顔をしていたとは・・・」
「後考えるとき鼻先を触るんです今もそうですけど」
「ん?あぁ本当だしかし良く見てますね」
「育ててくれた人ですから!昔から変わりませんし!」
「リアンまた兄弟に何か頼まれたんだろう」
「あぁ孫が出来たからできる限り見てほしいと言われてなその孫が・・・」
「はい!私です!爺様は私を産んですぐに亡くなってしまった両親の代わりにルーカスさんをっと言うことらしいです」
「まぁリヴィと同じように妹のように接してたらまさか王になるとは思ってなくてな昔の俺を叱り飛ばしたい気分だ」
「確かに昔のお前は油に火をつけたような感じだったんだが今じゃ炭だ!長くじんわりした炎だ」
「こういうとき親父と血が繋がっているんだと思うよリヴィが言ったことと俺が言ったことを言ったからな」
「その言葉あいつに聞かせてやりたいよ」
「お袋か親父がこっちにいるって事は向こうで公務してるんだろ」
「ご名答さすがに俺たち二人ではこれないからな」
「お二人ともいなくなったら国が大変なことになっちゃいますよ!」
「そうですねあっそういえば用件を伝えるのを忘れていました」
「あっはい!すみません私ったらベラベラと!」
「いえいえ私が先に用件を伝えておくべきでした・・・この度私の娘が遊撃隊に入ることになりましたその影響で今日は隊にいけそうにありません」
「!アリスさんがですか!遊撃隊ってルーカスさんの隊じゃないですか!やりましたね!」
「はい今日の朝に言われまして報告はしておこうと思ってきたのです」
「はい!確かに報告されました!戻ってあげてください!」
「はいありがとうございますでは」
「またなリアンたまには来いようちの国にも」
「あぁまたな今度アリスを連れて行くよ待ってろ」
「あぁ・・・行ったかしかし王よ貴女はルーカス殿に惚れていらっしゃるご様子で?」
「・・・えぇまあしかし昔は間違いなく恋でしたですが今は敬愛や信頼、家族としての愛に変わっているようです」
「どうもあいつには人心掌握術があるみたいですな」
「えぇ行く先々で好かれるのですから間違いないでしょうあの人は国を背負ってもいい人です」
「望んでいませんよルーカスはあいつは何より人の笑顔を近くで見たい奴ですから城に閉じこもったら発狂してしまいます」
「ふふふそうでした私が小さい時も外で遊んでばっかりでしたから」
「あの性格は赤ん坊の時からです気がつくと寝具から落ちていてどこかへ行こうとするんです」
「えぇまったくルーカスさんらしい行動です今は落ち着いているように見えるだけで本当は暴れたくてしょうがない感じですね時々昔のような話し方になるのがいい例です」
「多分アリスの事を守りたい一心なんでしょう」
「・・・はぁ一回じいさんのところまで挨拶に行くか」
「・・・」
「と前振りはこれくらいにして後ろに立つなじいさん」
「・・・なぜばれた」
「足の振動呼吸音心拍音あとは気配」
「そういうことを聞いておるのではないのじゃがな・・・」
「おうじいさんまた老けたか?」
「ふぉふぉふぉまだ自分じゃあ元気だと思っているんだけどね」
「無理するなどれ部屋まで運んでやろう」
「すまんのう足腰はもう弱ってしょうがないんだ」
「年だ年もうすぐ白寿だろう?酒飲んでよろくに動かなかったにしては結構持ったな」
「出来るなら皇寿まで生きたいけどね」
「死ぬ前に俺に酒遣しておけよ」
「いやだねあとは自分のだ渡さないよふぉふぉふぉ」
「そんなに酒に餓えてるなら今度飲みいくか?もちろん俺の奢りだ」
「そのうちねさてともう近いから大丈夫さ早くアリスの所まで行ってきなさい君の所に入ったんだろう」
「大方リヴィから聞いたかまったく困った奴だ」
「まぁまぁ許してやってよ嬉しいんだろう彼女もさ」
「そういうものかね」
「そういうものさね」
「じゃあ俺もそろそろ行くまた今度な」
「あぁまたな・・・行ったねできるなら僕もあと百年は生きたいねぇ無理だろうけどさ」
「おルーじゃないかまだほっつき歩いてたのか」
「お前こそアレックス休暇はどうした?」
「いやななんか落ち着かなくてよそわそわしちゃってな」
「職業病だな俺も時々ある」
「やっぱり休暇はきちっと決められた休みが一番休めると分かったよ」
「兵士の悪いところだな」
「あぁまったくだぜ・・・じゃあ俺はちょっと書類片付けてくるわ」
「あぁお前の事だからさぞ溜まってる事だろうな・・・じゃあまた」
「言うなよ・・・またな」
「あぁ・・・やっと見えてきた」
「あっお父さん!お帰りー」
「もうできてますよ!アリスちゃん着てあげて!」
「はーい!ちょっと待っててね!」
「あぁ・・・しかし技術の進歩は凄いものだ俺の時代は最低でも三ヶ月を要したというのに」
「お父さんどうこれ!?」
「私もこれいいと思います!」
「白ベースか悪くないな」
「でしょ!姐さんがねお父さんのは黒いから白でどう?って言ってくれたの!」
「えへへ最初は黒でいいかなと思ったんですけどちょっと合わないなぁって」
「ためしに並んでみるか?俺と二人で」
「!いいの!?やったー!」
「じゃあ持ってきますね!」
「あぁ頼んだ・・・いい鎧だな稼動域もしっかり考慮されてるこれが人間行動学か」
「人間行動学?」
「たとえば俺が手を上に上げたとするぞその時骨や筋肉、神経はどうなってるかを研究するんだ」
「へーそんな事研究するんだー」
「あぁここ二十年で急速に進んでな鎧を着ていても邪魔にならないなどあらゆる所で使われている鎧でもな」
「じゃあ私は感謝しなきゃね」
「その通りだ俺たちはいろんな人たちに感謝して生きていくからな」
「・・・中々いい事を言った所で持ってきましたよはい」
「んありがとういつも綺麗にしてくれていて助かる」
「いえいえ!お婆ちゃんからの遺言ですから!あの鎧だけはしっかりとしておく様にって!」
「・・・ばあさんそんな事言わなくてもいいのによ」
「ほらほらお父さん!早く着てよ!」
「あぁちょっと待ってろ・・・」
「アリスちゃん着替え終わるまで向こう行っててどうせなら全部着たのが見たいでしょ?」
「うんそうするじゃあお父さん終わったら教えて」
「了解ちょっと待ってろ」
「・・・真っ直ぐ育ちましたね」
「あぁ本当にいい子に育ってくれた」
「私本当は心配だったんですよ?ルーカスさんなんかにちゃんと育てられるのかなぁて小さいときから思ってました」
「俺そんな風に思われていたのか・・・」
「だって性格が何と言うか放任主義みたいな・・・」
「さすがに俺でもそれはしないさアリスのために育児休暇とったしな」
「兵士にも育児休暇ってあるんですね」
「もともとじいさんから休め休めと言われていたんだその休めを一気に使った感じだな」
「もしかしてリヴィさんの時も?」
「あぁじいさんには悪い事をしたな有休使いまくりだ」
「私は考えを改めなちゃいけないとですねそんなに家族想いだとは知りませんでした」
「はぁこれでも二十年の付き合いだ・・・ちょうどこの地域が出来て三年目だったかお前が生まれたのは」
「そういえばここは元々国境だったとか」
「あぁお前の両親はそのときに会ったんだお前の母さん料理下手だっただろ」
「えぇ幼心にはお母さんのご飯は美味しくないってなってますから」
「二十一年前お前の母さんがおにぎりを作ったんだが塩じゃなくて砂糖で握っててなそれでお前の父さんが料理を教えてて・・・という具合だったぞ」
「お母さんの料理下手に感謝ですね・・・やっと終わりましたね」
「話しながらだともたつくなまぁ中々楽しかったからいいとするか」
「じゃあアリスちゃん呼んできますね」
「あぁ・・・しかし俺もまだこれが着れるという事は父さんと昔から体形が変わらないということだろうな」
「お父さん!おぉー!格好いい!」
「そうか?あまり自分で見てもよく分からないからな」
「ほらほら並んでください!はいピース!」
「いえーい!」
「ん」
「二人ともいい笑顔ですよー!今度オリヴィアさんと一緒に!この写真はあとで現像して渡しますね!」
「はーい!ありがとうございました!」
「アリス先に外で待っててくれ・・・所でいくらだ?あれ」
「七十万になります・・・はいごめんなさい」
「予算内でよかった・・・はい七十きっちりな」
「はい確かに!またのご来店お待ちしてまーす!」
「それじゃあなまた頼むかも知れん」
「お父さんー?何してるのー?」
「いいや何でもない俺たち二人とも鎧着たまま出ちゃったな」
「あっそうだった!どうしよー」
「結局今日からの練習で着ける事になるから着ておけ」
「はーい次はどこ行くの?」
「防具と並んで兵士に必要なものだ」
「うーんとあっ!剣!?」
「正解また馴染みの店に行こう」
「お父さんなじみ多くない?」
「まぁなさすがに二十年近くここに住んでるんだ馴染みもいるさ」
「へーそんなに住んでるんだでもここって結構技術が発達してるって昔聞いた事があったなー」
「そうだな結構発達しているな元々海も近いこともありいろんな文化が入ってきたおかげだろうな」
「ふーん・・・そうなんだ海が徒歩圏内だもんね!」
「そう俺もそれが気に入ってここに家を建てたんだ・・・着いたぞここだ」
「ほうほう一見ただの家ですな」
「これでもお店だと言い張るんだ・・・よう一仕事頼みたい」
「ルーカスさん!はい!よろこんで!」
「うちの娘が隊に入ることになってな・・・そっちの調子はどうだ?フレディ」
「いやぁなぜかまったくお客さんが来ないんですよなんででしょう?」
「だから店に見えないんだただの家だ家」
「やっぱりかぁ・・・とまぁそんな事はおいといてアリスちゃん?だったねおじさんのこと覚えてる?」
「はい!いつも剣を届けてる人です!」
「ありゃ俺はそんな感じになってるのね・・・まぁ間違ってないけどささて!どんな剣をお望みで!?」
「うーん・・・お父さんのはどんな感じなの?」
「俺か?俺はこんな感じだ」
「!格好いい!真っ黒!」
「父さんの形見だこの鎧もそうだが」
「そうなんだ!そうだなー・・・お母さんはどんなのだった?」
「リヴィか・・・リヴィはレイピアに近いフォルムだったな色は確か銀」
「うーん・・・どうしよ」
「これなんてどうだい?最近手に入った白!刃はまだつけてないけど強度、靱性ともに最高クラス!」
「!それだー!それに決めた!」
「了解!ルーカスさん少し手伝ってほしいんですよね・・・頼めます?」
「あぁ俺でよかったら手を貸そう・・・アリスちょっと待ってろ」
「はーい待ってるねー」
「・・・ここの柄なんですけどここが少し曲がってるんです」
「ふむ確かに変に曲がっているな」
「このまま使っても問題はないんですが少しきつくなっちゃうんですよね」
「なるほどで俺に何をしろと?」
「ここの反りを直してもらいたいんです台に固定すれば少しずつ曲げられるはずです」
「分かった・・・台というのは?」
「あのでかい万力みたいな奴です・・・右腕の調子はどうですか?」
「よいしょっと・・・まぁ見ての通り不自由はしてないな」
「ほんとすみませんでした・・・」
「気にするな俺やリヴィも気にしていないしな人間両手でできることは工夫すれば片腕でも出来るぞ」
「それは良かった・・・その右腕最近は自分で作ってるって聞いたんですよあのルーカスさんがって」
「あのってなんだあのって?」
「いやぁだって頭悪かったじゃないですか凄いなぁて思ったんですよ」
「あんまりほめても何もでないぞ強いて言うなら拳骨が飛んでくることぐらいだ」
「ひえぇやめて下さいよタンコブでかいのできたんですから前に」
「いやなら手を動かせ・・・ほらこれでいいだろう」
「おー!綺麗にできてるじゃないですか!ちょっと見直しましたよ!」
「ちょっと?ちょっとね」
「あいや凄くッす!だからアイアンクローはやめてぇ!中身が出る!」
「ふんさっさと作れ俺はアリスの所に戻ってる」
「りょ了解・・・うー頭いてぇ」
「・・・アリス待たしたな」
「平気!そんな待ってないよ!」
「おやり始めたな金槌の音がする」
「ほんとだかんかん言ってる」
「ここにいるといろんな音が聞こえる金槌で叩く音、炉の炎の音、研磨してる音、水で冷やしてる音、結構楽しいものだぞ」
「うん音楽団の演奏を聴いてるみたい」
「演奏者は煤で真っ黒だけどな」
「あははそうだね」
「お待たせしました!どう!?アリスちゃん!」
「うん!軽いし長さも平気そう!」
「ありがとなフレディ」
「いえいえ!どうせなら試し切りしていく?」
「!いいの!?お父さんやっていい!?」
「あぁ俺も頼む最近は平和だから剣の調子がチェックできないものでな」
「はいはーい!ご案内ー!」
「・・・ここがそうなの?」
「ふむちょうどいいな」
「私剣て初めて使うから大丈夫かな・・・」
「最高のコーチがお隣にいるじゃないか!?」
「あっそうだった!お父さんに頼めばよかったんだ!教えてお父さん!」
「ふむまずは斬ってみろ」
「はい!」
「・・・!中々に筋がいいぞ剣の才能はリヴィから取ったようだな」
「凄いよアリスちゃん!」
「えへへありがとうお父さんも見せてよ!」
「ちょっと離れてろ・・・前にかまいたちが出て大変だったんだ」
「りょーかい・・・じゃあお願いします」
「・・・ふん!」
「!ビリビリ来た!何今の!?」
「昔より威力が上がってる!?でも何で・・・」
「この右腕に細工を入れているんだ剣を振る動作だけ加速がつくようにな」
「!なるほど!ルーカスさん頭良くなりましたねー!」
「?右腕?なにかあるの?」
「あぁ朝の時間に言いそびれたが・・・よいしょっと」
「右腕のガントレットだけ?」
「このガントレットは機械でな外すと・・・」
「力が無いように見えるよ?」
「見えるんじゃなくて実際そうなんだこの機械を外すと俺の右腕は機能しなくなる」
「!じゃあ朝の時間とかに言ってた片腕て言うのはこういうことだったの!?」
「昔ちょっとした事故があってな木材が刺さったんだ」
「それでルーカスさんの右腕はおしゃかになっちゃったんだ」
「納得・・・だからそれ付けてないといけないんだ」
「あぁそういうことよいしょっと」
「結構片腕を器用に使うね・・・」
「三年間動かなかったんだ慣れだよ慣れ」
「これも人間行動学で研究できないかな?」
「ふむそれもいいかもな・・・さてそろそろ家に帰ろう晩飯の準備だ」
「了解!またおじゃまします!」
「はい!またのご利用おまち!・・・ルーカスさんその剣の代金はいいですからしっかり守ってあげてくださいね」
「あぁ了解だじゃあな」
「ばいばーい!」
「またねー!」
「お父さん今日の晩御飯何?」
「今日は炒飯だ俺の作る炒飯はうまいぞ?」
「わーい!やった!やった!」
「まったくはしゃぐな・・・ずっと続けよこの日々が」
「なにかいったー!?」
「いってないじゃあ行こうか!」
「はーい!」
FIN