引退した兄とそれを引き継いだ妹
彼女の朝は早い。毎朝の訓練は欠かせない。起きて自室で木刀を振る。とその時ドアが開いた。
「何やつ!」
「おいおい俺だよその物騒なのはよしてくれ」
「ごめんなさい・・・兄さん」
「毎日やってるのか・・・それ」
「はいこのぐらいしないと兄さんに勝てませんから!」
「ハッハッハ!それはいい!ご飯にしよう!」
「はい!」
彼女の兄であるルーカス。親しい者はルーと呼ぶ。そして彼女は妹のオリヴィア。親しい者はリヴィと呼ぶ。
「よいしょっと・・・すまんスプーンを取ってくれ」
「はい兄さん!」
「んありがとうさて食べるか!」
「はい!」
二人とも右利きだ。しかしルーの右手はテーブルに置いたまま動かない。
「ごちそうさま!おいしかったです!」
「そりゃ良かったさてお前も警備があるだろう準備しな」
「はい!家は任せました!」
「おう!任せとけ!」
リヴィはこの国の騎士団の団長だ。警備に護衛などやることは尽きない。それに対してルーは家の家事をやっている。同じタイミングで立ち階段を上がっていく。とふとリヴィの前を歩くルーの右手が気になった。普通人は歩く足と連動して腕も振る。しかしルーの右手は少しも動かない。肩からダランとたれている感じだ。リヴィはルーの右手を慈しむ様に握ったまま歩く。
「うしっ!じゃあまたな!ってあぁ手握ってたのかすまんが離してくれ部屋に入れないぜ」
「あっ!ごめんなさい!これは!あの!その・・・」
「いいっていいってじゃあな」
「・・・はい」
そうルーの右手は動かない。感覚も無い。自分では動かせず触っても分からない。
「さて俺もいつまでも寝間着じゃ駄目か着替えないとな」
ルーはクローゼットの中から服を選び着ようとした。と自分の腕に着せようとしてアレの存在を思い出した。
「そうだアレがあるんだったな」
アレとは姿見のような木の板に丸い穴が開いてある道具だ。これはルーの手作りでナイフで開けたため穴が少々不恰好だ。でもこれがルーにはとても役に立つ。
「これのお陰で結構楽になったな我ながらいいものを作ってしまったな」
これの使い方は簡単だ。穴に右の袖を通しそこに右手をさし込み一緒に持ってくればいいだけだ。今までリヴィの手がかかってしまっていた着替えが一人で出来るようになった。
「兄さん!行って来ます!」
「あぁ!行ってらっしゃい!」
鎧に身を包んだリヴィがドア越しに挨拶する。あいつも一人で鎧が着れる様になったかとしみじみ思う。
「もう教えることは何も無いなハハッ」
昔はいつも後ろでビクビクしてたがここまで立派になるとは。さて今日も今日で腐ることなく生きていこう。そう毎日思うルーである。
「さてどうしようかな食材はあるし・・・アレ?弁当忘れてるな届けたほうが良いだろうな腹空かすだろうし」
テーブルにルーが片手で毎日苦労しながら作っている弁当を包んでいる風呂敷が置いてあった。
「まったくあいつはそそっかしいんだからなぁまったく」
ルーの自室からショルダーバッグを持ってきて風呂敷をバッグに入れる。これを城にある騎士団室まで運ばなければいけない。それは身体障害者のルーにとっては避けたい。しかし届けなければリヴィは腹を空かしてしまうだろう。
「うだうだ悩んでもしょうがないな早くもっていかないとな」
城へ一歩踏み出す。町民は近くに身体障害者がいてさぞ迷惑だろうなと外に出る度に思うが。
「おっ!ルーカス!よう!今日はどうした!?」
「あっルーカスー!おはよう!」
「こらこらごめんねぇルーカス今日はどうしたんだい?」
「いやリヴィが弁当を忘れてな届けないと大変だろ?」
「オリヴィアか!あいつそそかっしいからなぁ!大変だなぁ!兄は!」
「オリヴィアー?どうしたのー?」
「あらあらオリヴィアちゃんお弁当忘れたの?早く届けてきなさいな」
「おうじゃあな」
「あぁ!行って来い!今度また料理教えてくれよー!嫁がうるさいんだー!」
「ルーカスー!また遊ぼうねー!」
「ルーカスはオリヴィアちゃんのためには何でもするからねぇそこが心配だったりするんだけど・・・」
このように町民との仲は良好である。ルーは町民にとって英雄なのだから当たり前なのしれない。
「むう三年ぶりだなここも・・・入城許可証っと」
「あぁルー久しぶりだなどうだ右手は?」
「おうアレックスかまだまだだぜほら入城許可証」
「あぁ確かに」
門番は昔からの知り合いであるアレックスだった。城に来なくなってめっきり会う機会がなくなってしまったためアレックスと体調などを報告しあってから中に入る。騎士団室はすぐに分かった。見慣れたマークである跳馬のマークだ。中で何か話している様子だったため一段落ついたところで声を掛ける。
「リヴィ!」
「あ!兄さん!どうされたのですか!?」
「お前が弁当忘れなちゃこないんだがなぁ?」
「アレ!?私忘れてました!?良かったーありがとうございます!」
「おうじゃあな!」
「はい!じゃあまた!」
そそくさと帰ってしまう。新兵はその背中を嘲笑した。
「おい俺知ってるぜあの男よ団長の兄らしいんだが家で家事ばっかやってるらしいぜ」
「ほんとかよそれじゃ男なのか女なのかわかんないな!」
「「アッハッハ!・・・アレ?目の前が真っ暗に」」
「おいもう一度言ってみろ兄さんが何だって?」
「いやだから・・・女みたいだなぁて思ったり・・・」
「よし!今日は特別メニューにしよう!二人だけな?」
「理不尽だぁー!」
「副団長も何か言ってくださいよ!」
「異論無し賛成だ」
「「そんなぁー!?」」
「良し!まず腹筋五千からだ!よーい始め!」
「「ひぃー!」」
「さて!他の皆はいつも練習始め!」
「おぉー!」
そんなとき騎士団にある連絡が来る。
「南の諜報員から連絡!かねてより戦争の動きがあった隣国がこちらに向けて戦闘準備をしたとの事!」
「何!?良し皆!装備の確認!終わったら家に帰り英気を養え!」
「はい!」
皆装備の確認で忙しくなった。リヴィもまた然り。副団長は特別メニューを受けていた二人を呼び寄せた。
「お前達あのぐらいで済んで良かったな」
「どこがですか・・・地獄を見ました・・・」
「一回座ろうお前達の未来が掛かる」
「はぁはい」
「最初あの男を馬鹿にしたな?」
「えぇ何でも家で家事ばっかりやっていて片腕が動かないらしいと聞いた事が・・・」
「お前騎士団法度一の項を言ってみろ」
「えっと団長または副団長を侮辱することを禁ずまた退任者も含む侮辱した場合打ち首の刑とする」
「あの男は前団長だ要するにお前達は今日もしかしたら首が飛んでいたと言うことだ」
「ひえぇ・・・良かった団長が優しくて良かった・・・」
「しかも兄妹だ身内の事を悪く言われるのは気持ちがよい物では無いだろう」
「でも何で止めちゃったんですか?前団長は」
「あぁ今から三年前の事今の団長が入ってきたときのことだ」
そして過去の思いに身を馳せる。
「元団長ルーカスは妹が入って悲しんでいた命のやり取りをするこの仕事をさせたくなかったたった一人の家族だからなでも現団長オリヴィアはこの道を選んだそれでルーカスはせめて死なないようにとオリヴィアの剣を指導していたその時だ事件が起きたのは」
あの時の再現だ。
「ふぅどうだリヴィ疲れただろう休んでおけ」
「はい・・・ありがとうございます・・・」
「すみませんーこの木材ここの天井ですよねー?」
「あぁ!そうだ!頼んだぞー!」
「はいー!さて始めますか・・・アレ?アレレ?くそ!ヤバい!ワイヤーが切れ始めてる!おーい!気を付けろ!木材が落ちるぞー!」
「ちゃんとしてくれよな・・・て真下にいるのリヴィ!?おい!リヴィ!こっちこい!くそ間に合わねぇ!」
「兄さんー?どうしましたか?」
「リヴィ退け!危ない・・・ぐわぁ!」
「キャッ・・・兄さん?どうしま・・・キャー!誰か!誰かー!」
「あぁ!くそ!医務室!医務室へ運べ!」
その時ルーの右肩には先の尖った木材が刺さっていた。それは肉を抉り骨を削り神経を切った。
「兄さん・・・兄さん・・・」
「木材は抜きました幸い粉などはありませんが・・・神経が切断されていますもう右腕は一生動かないという覚悟を・・・」
「・・・兄さんと二人っきりにさせてください」
「はい家族で話してください・・・では」
「兄さん・・・何で私を庇ったんですか?庇わなければ・・・」
「・・・あたり・・・まえだ・・・お前を・・・愛して・・・いるからだ」
「兄さん!目を!」
「あぁ多分もう動かないんだろう?この右腕は・・・感覚もないし麻酔みたいだ」
「兄さん・・・はいもう・・・動きませんあぁ全部夢ならいいのに・・・」
「全部夢なら・・・か夢じゃなかったらこんな可愛い妹なんて貰えないかもな」
「ふふ・・・こんなときに冗談言ってる場合ですか?・・・」
「冗談なんかじゃないぜ・・・本当に綺麗になったな」
「そんなに撫でないでください・・・くすぐったいです」
「あぁ本当に綺麗だこれならどこに嫁に行こうと俺は胸を張れる」
「どこにも行きません昔言いました兄さんのお嫁さんのなりたいって」
「こんなに可愛い嫁なら大歓迎だ・・・何だか眠くなってきた・・・すまん少し寝る・・・」
「はいおやすみなさい兄さん」
とこのような経緯を持っていたルーである。
「その後ルーカスは団長の席をオリヴィアに渡したそして今に至るってわけだ」
「「グスッ・・・いい話じゃないですかー!」」
「あぁとてもいい話だしかし今日の報告では明日は戦争になるだろう戦争ではいつ死ぬか分からない」
「じゃあ団長が死ぬかも知れないって事!?」
「あぁその通りだそこでお前達には団長の護衛をしてもらいたい頼めるか?」
「あぁ!俺達に任せろ!なぁ!」
「えぇ!俺達に任せれば必ず団長を元団長の所まで命を繋いでやらぁ!」
「あぁ任せた装備の確認をしてこい」
「「イエッサー!」」
「・・・行ったか任せたぞこの老いぼれにはルーカスに何もしてやれなかった息子のせいでワイヤーが切れたときなぜ立ち尽くす事しか出来なかったのか・・・」
「昔の事を悔やむなって教えてくれたのは貴方ですよノア」
「オリヴィアかそうだ・・・儂は前へ進むしかない・・・いつまでも後ろ向きでは歩けんわ」
「そう前へしか歩めない例えどんなことがあったとしても」
「あぁ良し!儂も装備の確認をしてくるかの!」
「えぇお願いしますじゃあ私は帰ります兄さんが待ってるでしょうから」
「あぁ早く行ってこいルーカスがまっているだろう」
あぁ畜生。何で儂はこう後悔ばかりなのか。リヴィの背を見ながらノアは思った。せめて自分の死に場所ぐらい決めよう。そうも思ったノアだった。
「ただいまー」
「おうお帰りリヴィまだ3時にもなってないじゃないかどうしたんだ?」
「・・・いえ今日はかなり早く終わったんです」
「そうかまぁとりあえず鎧を外してきな」
「・・・はい」
とても言えない。明日死ぬかも知れないと。リヴィは葛藤していた。明日になれば戦争で死ぬかもしれない。もし死んでしまったらどうすればいい?生きて帰ってこれなかったら?そんな思いが胸を締め付ける。鎧を脱いだはずなのになぜかまだ息苦しい。
「リヴィ?どうした・・・っておい!?どうした!?リヴィ!リヴィ!!」
倒れてしまった。極度の緊張だろう。そう判断したルーは部屋でぬるま湯に浸けたタオルを頭につけた。とリヴィが目を覚ます。
「あ兄さん・・・つっ!」
「まだ動くな余計に酷くなるぞ」
「はい・・・あの兄さん」
「ん?なんだ?」
「私明日・・・」
「あぁアレックスが話してくれたよ明日行くんだろう?」
「・・・はい行きますでも勝って帰って来ます必ず!」
「必ずな帰ってこいじゃないと三年前の約束が果たせないからな」
「三年前?ですか」
「ふっふっふ・・・忘れちゃ困るぜ?お前は俺の嫁になるんだから・・・さ」
「!ふふ・・・ふふふそうです夫は兄さんですじゃあ帰ってこないと駄目ですね」
「そうだ俺は夫だだから・・・必ず生きろ」
「はい・・・兄さん」
「良し!飯にすっか!今日はー何だろなー」
「何だろなー・・・ふふ」
「決めた!テーブルに座ってな」
「いーえ私も手伝います!それに将来家事をするのは私ですから!」
「分かったよじゃあ一緒に作ろう」
「はい!」
兄妹二人に笑顔が灯る。まるで明日も続くかのように。飯が終わり風呂に入ったあともう就寝の時間になっていた。
「よしじゃあ寝るか・・・ふわぁ・・・」
「今日・・・」
「うん?どうした?」
「今日だけ一緒に寝てください」
「あぁ来ないつでも歓迎だ」
やはり忘れたくないんだろう。兄のぬくもりを。両親が幼い時に死んだリヴィにとってルーは父であり母であり兄そして自らの剣の師だ。そんな男が明日には永久に会え無くなるかも知れない。覚悟を決めたはずだがそこはいまだ成人にもなっていない未熟な心だ。まだ兄に甘えたいだろうにそれを許してくれない。一時期は世界を怨んだ事もあった。しかし今はこうして兄と触れ合うだけでも心は落ち着き心臓も鳴りを潜める。
「なぁリヴィお前が小さいころ呼んでもらった【オリーブの木】て憶えてるか?」
「オリーブの木・・・憶えてないですでも何で?」
「いいや懐かしいなと思っただけさ訳なんてないぜ」
「そうですか・・・おやすみなさい兄さん」
「あぁゆっくりおやすみまた明日な」
「はい・・・」
そして時は決戦の日へ。前騎士団員の家に届けられた一通の封筒。中には決戦をするという事だけが書いてあった。
「・・・さぁ行きましょう」
いつに無くきっちりと鎧を着込んだリヴィがいた。ルーの部屋をそっと抜け出し自室へ戻って準備をしていた。ルーはまだ寝ている。自分が戦の場に行くのを見られたくないからだ。
「行ってきます兄さん」
ルーに口付けをし下へ降りる。そこにはいつもの弁当と一冊の本が置いてあった。名は【オリーブの木】
「これがオリーブの木・・・でもたった三ページしかない」
本で三ページしかないのはおかしい。そう思いながらもリヴィはページを読むことにした。
「『オリーブの木は死を覚悟しました。なぜならすぐ目の前に自分を食べてしまう怪物たちがやってきているからです。しかし死にませんでした。東から黒馬に乗りぼろぼろの上着を着て胸には蓮の花。全身は真っ黒。あぁ私は死神さんも来てしまうほどなのね。そう思ったオリーブの木ですが死神が倒していくのは怪物たちでした。そしてすべての怪物を倒した死神は言いました。僕は死神さだけど君の命は取らないでも木だから退屈だろう?僕が一緒にいてあげるよ。そして死神が上着を脱ぐと天から光がいっぱいに降り注ぎました。死神は光をもたらす人だったのです。そしてオリーブの木と死神はいつまでもいつまでも暮らし続けました』」
思い出した。確かに母親が読んでくれた話だ。懐かしいなぁと思う。そうだ。確か死神怖いーてルーの部屋に駆け込んで一緒に良く寝たのだ。だからルーは懐かしいと言ったのか。納得した。胸にまた新たな覚悟をして騎士団部屋へと向かうのであった。
「おーう来たか団長様皆お揃いだぞ」
「ノア今日は参謀としてよろしくおねがいします」
「あぁ任せておけ絶対に皆を家へ帰す」
「えぇ任せました」
二人とも静かに覚悟をしている事は痛いほどに分かった。そして騎士団員の顔つきも違う。誰も死ぬとは思っていない。かといってもう諦めてる訳でもない。己が手で生き残るのだ。その戦士の顔がそこにはあった。
「王より連絡!全員国境にて決戦の準備を!」
連絡員が教えてくれる。どうやら戦いの場は国境のようだ。
「よし!皆!聞いてほしい!私は皆に何も教えてあげられていない!それどころか私のほうが教えられてしまっている!でも今日だけは一つだけ言いたい!この決戦を生きて戻ってくるぞ!」
「おぉー!」
騎士団員はもう声が裂けんばかりに声を上げる。家族を置いてきた。また会うには勝って戻るしかない。
「では全員国境へ向かう!」
城を出る。もう戦争をするのは町民全員が知っている。騎士団を見送る。リヴィはルーを探したが人ごみのせいで見えなかった。そして決戦の場へ向かう。
「王より連絡!敵が進撃を開始!5分後にここまで迫る模様!」
「皆!装備の確認及び列を正せ!」
ざっざと足並みのそろった音がする。耳を澄ませば敵も足並みをそろえてやってきているのがわかる。今日の天気は曇り。雲に音が反射して遠くの音まで聞こえるのだ。
「見えた!全員迎撃準備!」
敵の足が蹄の音がする。接触まであと幾ばくか。とその時東から別の蹄の音がした。
「監視員より連絡!東より黒馬が接近!乗馬者は黒い鎧に襤褸を着て胸に蓮の花を挿している模様!」
「!死神?!あれか!皆!一応迎撃準備を!」
「うおおお!我が名は死神である!このたびオリーブの木より参上奉った!」
兜を被っていた為声がくぐもりあたかもこの世の者ではない声が戦場いっぱいに響く。
「オリーブの木!?皆!あの黒は味方よ!迎撃やめ!」
「隊長様よ儂はあの黒鎧の中の男を知っておる昔見たまんまだ」
「誰!?誰なの!?」
「あの右腕を見てみろまるで力が入ってないではないか」
「!右腕!?じゃああの中には・・・」
「あぁルーカスだろうあの黒馬はリフィアだ」
こちらに向かってくる黒馬。そしてリヴィの隣で止まった。
「兄さん!?兄さんなの!?」
「あぁ俺だルーカスだ」
「何で・・・なんで来たんですか」
「けっけっけ妹は俺が守らないとな!・・・ノア久しぶりだな」
「あぁお帰り死神」
「ただいま長らく待たせたな」
「監視者より連絡!接触まであと一分!」
「距離で500mかさて用意しよう」
「・・・えぇ私が先陣を切ります」
「いーや俺だねお前は俺の切り残しを頼むぜ」
「・・・分かりました」
「ノアお前は団員を先導してくれ頼んだぞ」
「頼まれたわ任せておけ」
「よし!行くぞ!」
「えぇ!皆!行くぞ!」
「おぉー!」
ついに戦いの火蓋が切られた。先陣を駆ける黒い光とその後ろに続く団長。二人とも修羅の如き表情だった。敵方の先鋒は壊滅。騎士団は層が厚い中へと入っていく。と敵がルーの右を取った。
「貰ったー!」
「兄さんー!」
すらっと右腕が動き敵を真っ二つにした。これで両手には黒い剣が二つ。
「よし!さすがおっさん!このからくり最高だぜ!」
「!動くんですね!やった!」
「うおおおりゃああ!」
「懐かしいのう・・・皆の衆!あの黒い鎧に続け!大丈夫じゃ!儂が保障する!」
「おぉー!」
「あとは大将だ!乗り込めー!」
「行きますよ!兄さん!」
「あとの後始末は儂らに任せろ!大将の首とって来い!」
「ノア!皆を死なせんなよ!」
「頼みました!」
「あぁ!任せろ!」
そして敵本陣へ突っ込む。そして敵大将へとたどり着く。
「くっ!ええいっ!くそったれ!」
「いや俺はお前の命は取らない代りにそっちの王に伝えてくれ和平を結びたいそして俺が会いたいできるなら我が国へ来い出来る限りの歓迎をするそうルーカス・アルバードが言っているとな」
「・・・分かった必ず伝える」
「じゃあな」
「いいんですか?兄さん」
「あぁ」
「ふっばかめ!そう易々帰らせるかよ!」
仕込矢があったのだろう。しかしルーは避けて尚且つキャッチして持ち主に返送した。頭のすれすれ上に。
「・・・じゃあな」
「・・・化け物・・・」
「死神だからな」
そして敵本陣を後にした。この戦いは味方が死ななかった戦いとして後世に語り継がれていく。
「お帰りー!ルーカス!リフィアちゃんとしてたでしょ!?」
「おう!ルーカス!どうだその義手は!?」
「ルーカスお帰りなさいまた鎧をしっかり磨かないとね」
「皆グルですか・・・まったく」
「こいつらどころか王族までグルだぜ!俺に出動要請を出したのはじいさんだからな」
「じいさんじいさんて陛下をそういわないでください!確かにお年を召されてますが!」
「ふぉふぉふぉまぁそうかばうでない僕ももう年を取りすぎたね」
貫禄漂う厳格そうな爺がいた。この爺こそが現国王である。
「おう!じいさん!今日は宴会するぞ!さいっこうなものを用意しとけよ!」
「任せておきなさいさいっこうなのを用意しておこう!」
「おう!それまで妹と家にいるわ!」
「あぁ!用意が出来たら呼び出すからな!今夜は寝させないぞ!覚悟しておけ!ふぉふぉふぉ」
「まったく騒がしいじいさんださて家に帰ろう!」
「はい!・・・?」
ある疑問が出てきたが家に着いたらまず机に座らせられた。
「さてとまず疑問があるだろ?言ってみな」
「はい私達の姓ってアルバートじゃなくてスコッティですよね?」
「あぁ確かに俺達はスコッティだ・・・でも俺達は元を正せば隣国の王族だったんだ」
「!隣国の!?でも私達は・・・」
「拾われたのさスコッティ夫婦に・・・そしてそのせいで父さんと母さんは死んでしまった」
「!?どういうことですか!?」
「順を追って説明するその間口は挟まずただ受け止めてほしい」
「・・・分かりました」
「あぁありがとう・・・まずは俺達の血筋からだ俺達は隣国の現国王の子供として生を受けたしかしそれは不倫した妾の子だったそれで今の国境近くに棄てられたんだそこを国境警備で来ていた騎士団団長と副団長が俺達を拾い育てた」
「じゃあ私達は実の親から棄てられたって事ですか?それも私達の血のせいで?」
「その通りだ・・・俺達が生きている事を知った国王は妾の子とはいえ王を継承できる俺達を消そうとしたそこで一回攻め俺達を庇って死んでしまったんだ母さんと父さんは・・その事を知っているのはノアとじいさんだけだ」
「・・・許せない」
「いいや許すしかない」
「許せない!兄さんはいいんですか!?許せるんですか!?」
「許せるわけない!俺ならまだいい!リヴィまで巻き込んだことが許せない!・・・ごめん声を荒げたなでも少し前ある男女が来た隣国の国王と今は王妃となった妾だそしてこの話を聞いた俺は最初こいつらの首を飛ばしてやろうと思ったでも出来なかった本当の懺悔の涙が流れてたんだあんな目をした奴切れなかった」
「そう・・・なんですね分かりましたまだ蟠りはまだあります・・・けど兄さんが信じるなら私も信じます」
「あぁだから国王に頼んだこの国と和平を結びできるなら国交を結んでもらいたい」
「えぇ同じ人間です分からない事はありません」
「おうその通りだ!分からない事は話し合え!これが出来たら最高だ!」
「えぇ!そうです!最高です!」
「おーい!ルー!リヴィ!宴会の準備が出来たぞい!来なさいなふぉふぉふぉ」
「行くか!今日は酒飲む!」
「私はご飯食べます!」
「じゃあ僕は踊ろうかね!ふぉふぉふぉ」
三人で城の王室へ行く。先に二人先客がいた。
「リアン、ソフィア・・・」
「・・・来たのか国王王妃」
「えぇ久しぶりねリアンいえルーカスて名前だったわねじゃあそっちがソフィア?」
「あぁソフィアいやオリヴィアだお前達が棄てた・・・な」
「オリヴィア・・・本当に悪かったどれだけ詫びようと許されるものではないがな」
「いいんですでも聞かせてください何で私達を棄てたんですか?」
「厳密に言うと私の二点皇女の仕業だったのだ元々子宝に恵まれなかった私達に出来たやっとの兄妹を・・・棄ててしまったのだ私達は必死で探したその間に二点皇女がこの国が攫ったとして攻め込んでしまったその戦争で君達の両親を失ってしまったと聞き二点皇女を君達の所在を探したそして五年前君達がこの国で暮らしていると分かり会いに来たその時はオリヴィアはいなかったけどね・・・そしてまたこの国に対して二点皇女が攻め込めと命令してしまったんださすがに追放処分をせざるを得なかった」
「そう・・・だったんですね」
「俺達はお前達を許すつもりでいるだから今は・・・よいしょっと」
「赤い皿四つに樽?」
「これは東方の儀式で一つのたるの酒を飲み合うというものだ」
「ほうなるほどね」
「ではおれが音頭を取らせてもらうえーこの両国ならびに!我らが両親に光あれ!」
「光あれ!」
「・・・ぷはぁ!これで俺達は一つの酒を呑みあった仲だ」
「あぁいいもんだ!ふぁふぁふぁ!」
「いいんだな?私達は・・・」
「構わん!今は料理を食え!酒を飲め!語り合う!これが宴会の流儀だ!」
「まぁまぁあなた今日はルーカスのように飲みましょう」
「むそうか!では頂く!・・・ぷはぁ!いい酒だな!」
「じゃろう!僕が選りすぐった銘酒ばかりだからな!不味いわけが無い!」
「ほらリヴィも!オレンジジュースだがな!飲め!」
「ええい!いただきます!・・・ぷはぁ!」
「いえーい!俺達はもう強い絆だぜ!もう切れんぞ!」
「そうじゃ!今ここに同盟を結ぼうではないか!」
「!おお!良い!とてもよい!同盟を結ぼう!」
「じゃあ俺達が立会人となろう!リヴィ!酒だ!あと赤い皿もってこい!」
「はい!兄さん!」
「今ここに同盟を!」
「ああ!同盟を!」
「確かに見届けた!な!リヴィ!」
「はい!確かに!」
「じゃあまずこの赤い皿に注がれた酒をぐいっと!」
「・・・うまいのう!」
「実はなこれ東方で精神的に兄弟になる儀式なんだぜ」
「兄弟か!よろしくな!ふぉふぉふぉ」
「あぁよろしく頼む!兄弟!」
一日のドンちゃん騒ぎ。そして次の日正式に同盟書にサインした。元から両国に同盟すべきだとの世論が出ていたためこの決断は支持された。そしてこの同盟は未来永劫に続くことになる。そして国同士のあれやこれやが終わったあとにルーとリヴィは結婚式を挙げた。
「ふぉふぉふぉ騎士団長と元団長の結婚式か良いのう」
「あぁルーカス、オリヴィアおめでとう」
「まさか両国の総力を挙げての式とは思わなかったな」
「いいじゃないですか!私は好きですよ!」
「そうだな!じゃあ取り仕切り頼むぜ!親父!」
「・・・呼んで貰えた・・・私を親と」
「父さん!頼みました!」
「・・・あぁ!えーこほん汝オリヴィア・スコッティはこの男ルーカス・スコッティを夫とし良き時も悪き時も富める時も貧しき時も病める時も健やかなる時も共に歩み他の者に依らず死が二人を分かつまで愛を誓い夫を想い夫のみに添うことを神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
「はい!」
「よし汝ルーカス・スコッティは、この女オリヴィア・スコッティを妻とし良き時も悪き時も富める時も貧しき時も病める時も健やかなる時も共に歩み他の者に依らず死が二人を分かつまで愛を誓い妻を想い妻のみに添うことを神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
「勿論だ!」
「では指輪の交換を」
「はい兄さん」
「はいよリヴィ」
「ではベールをあげて誓いのキスを」
「・・・行くぞリヴィ」
「はい」
その姿はとても美しくさながら絵の如くだった。国民全てが祝福した。こうして光をもたらす死神とオリーブの木のお話は終わった。しかしこの二人は今もどこかで暮らしているだろう。
・・・
「はいこのお話は終わりよおやすみなさい」
「おやすみなさいお母さん」
「寝たか?元気が良くて参っちまうな」
「あなたに似たんですよあなたの昔にそっくり」
「それもそうかむ?右腕が動きづらくなってきたなさすがに五年も使ってりゃそうなるか」
「もう五年ですかそれどうやって動いてるですか?聞いた事無かったです」
「五年もたってから聞くのかよまっ俺も詳しい事は分からんおっさんに聞いてくれ」
「そうですね頭悪いですもん」
「なんだとこいつー」
「はいはい寝ましょう」
「はいよよいしょっと」
「はいおやすみなさい」
「うんおやすみリヴィ」
「はい兄さん」
FIN