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第1話:すべての始まり

 要塞都市東京。

 外から隔離された都市、いや違う。外を隔離した都市。

 出るもの拒まず、しかし入るものは厳重に検査し新人類では無い事が確認でき、なおかつある程度の権力が無いと拒む。

 金や権力が無い者はとてつもなく高い税金を払えず強制的に要塞都市東京から駆逐される。

 一般人が要塞都市東京に入れる事はまず無いし、元々東京内に住んでいた一般人は税に駆逐され東京を去らなくてはならない。


 自然に要塞都市東京に身分差が現れる。

 最上位の位は要塞都市東京の王と呼ばれる者。

 次に政治を行う7人の貴族と呼ばれる者。

 その中でも身分に高低はあるが対新人類特殊警察。

 そしてその下は商人や特殊警察の家族、それに何とか税を払えている市民。



 権力が高い者は低い者を見下し横暴な行いをする。

 身分が低い者は高い者に逆らえず、要塞都市東京から追い出されるかも知れない恐怖に身を震わせ、横暴な行いに耐える。



 そんな要塞都市東京だがそこは日本で一番安全な場所だ。外は新人類が表舞台に出てから国というものが機能しなくなり無法状態。

 新人類の食事のために人類は殺され、人類は生きるために同じ人類を襲う。


 人類と新人類の運命を大きく変える少年が誕生するまで……後少し。





1




 美少女……のような顔立ちの美少年は中学3年生としての最後の学校に来ていた。


 新人類に対抗するための要塞都市東京の中には5つの中学校があるが、少年が通っている学校はその中で最も大きいが授業料が安く、主に商人やお金がギリギリな一般人が入る所だった。


 クラスは1学年7クラスで、1クラス47人。ここにも要塞都市東京の影響か身分によってクラス分けされており、親も親戚もいないその少年は、いつも最下位のクラスで、1ーG、2ーG、3ーGだった。


 

 そんな身寄りがいない少年が要塞都市東京から駆逐されない理由は貯金だ。

 

 少年には7歳前からの記憶が無く、親や親戚が存在したという記録も一切ない。

 だが、気づいた時には小学校通っていてご飯も自分で作り、住む家もあった。それに加え、税金がとてつもなく高い要塞都市

東京でも10年は暮らしていけるほどの貯金が少年の口座にはあった。


 周りの人達も何も覚えてなく、記録がないことに首を傾げいたがそれ以上追求することはなかった。



2




 「よっ、黒雨。今日で中学校生活も終わりだな」

 と、少年に話しかけたのは中学生にしては175センチと大柄で制服を着ていても分かるほど筋肉が盛り上がっている男。

 黒雨と呼ばれた美少年のクラスメイトであり親友の中学生だ。

 「やぁ、おはよう、今日も健一は元気そうだね」

 挨拶を返し、にっこり、と地球上の女をすべて魅了してしまいそうな笑顔を繰り出す美少年もとい黒雨。

 健一と呼ばれた男はいつも通りに顔を赤くしながら、お、おう、と返事をする。

 (それにしても黒雨と一緒にいられるのは今日で最後か)

 健一は心の中で呟いた。この健一も父親がいない。今から5年ほど前に新人類に餌として殺され、遺体さえも返って来ていない。

 父親がいないため働き手は母親しかおらず、高い税金を払えなくなりそうなのだ。

 そのため健一は中学校を卒業した後は働くと決めていたが、それでも要塞都市東京の税金を払えるほど稼げるかは分からない。最悪、母子共々要塞都市東京に駆逐され、強制的に外へ放り出されるかもしれない。

 そんな恐怖を感じながらも健一は諦めず今も必死で給料の良い仕事を探していた。




 「あ、くぅさんおはよー」

 挨拶して来たのは腰ほどある髪を結ばずにさらさらと風に流しながらこちらに向かって走る黒髪黒目の美少女だ。

 くぅさんとは美少年こと黒雨のことで目の前の美少女が付けたあだ名である。

 「綾乃さんもおはよう」

 黒雨はわざとやっているとしか思えない、すべてを魅了する笑顔で挨拶を返した。

 「はぅっ」

 (いつもながら強烈な笑顔っ!!)

 綾乃と呼ばれた美少女は心の中で胸を抑え悶える。


 「いつも僕が笑うとみんな顔を赤くして怒るね。

 僕は笑わないほうがいいのかな……」

 と、黒雨は顔を真っ赤にしている綾乃を見ながら寂しそうにぽつり、と呟く。


 「そ、そんな事無いよ!!」

 綾乃?


 「あ、くぅさんおはよー」

 挨拶して来たのは腰ほどある髪を結ばずにさらさらと風に流しながらこちらに向かって走る黒髪黒目の美少女だ。

 くぅさんとは美少年こと黒雨のことで目の前の美少女が付けたあだ名である。

 「綾乃さんもおはよう」

 黒雨はわざとやっているとしか思えない、すべてを魅了する笑顔で挨拶を返した。

 「はぅっ」

 (いつもながら強烈な笑顔っ!!)

 綾乃と呼ばれた美少女は心の中で胸を抑え悶える。


 「いつも僕が笑うとみんな顔を赤くして怒るね。

 僕は笑わないほうがいいのかな……」

 と、黒雨は顔を真っ赤にしている綾乃を見ながら寂しそうにぽつり、と呟く。


 「そ、そんな事無いよ!!」

 綾乃は慌てて反論する。中学校の秘宝である黒雨の笑顔を絶やしてたまるか、と。


 「そ、そう?怒ってないならいいんだけど」

 綾乃の勢いに驚きながら黒雨はまたにっこりと笑う。

 その笑顔に、卒業式に同伴していた大勢の生徒の両親が顔を赤くする。

 それを黒雨に気付かれないように綾乃は急いで手を引っ張っり校門をくぐり抜けた。



 「ちょ、ちょっと、痛いよ綾乃さん」


 「あら、ごめんなさい」

 黒雨は赤くなった手首をさすり、綾乃に抗議する。その少し頬を膨らませた顔に少なからずダメージを受けた綾乃は、それをごまかすようにそっけなく謝罪した。


 「もう、そんなに早く学校に入りたかったの?」


 「ええ、卒業式だから少しはしゃいじゃったかも知れない。本当にごめんなさい」

 あらためて謝罪する綾乃に黒雨はにっこり、と笑って許した。

 その後、後から追いついた健一と共に3人は卒業式の会場へと歩いていった。





3






 「ぐすっ」

 黒雨は涙に濡れた目をグシグシとこすり、鼻をすする。

 「確かに感動したけど、そこまで本気で泣くとは」

 綾乃は涙で光る黒雨の頬を見ながら呟く。


 卒業式の最後に本格的に泣き出した黒雨を健一と綾乃は慰めながら校門を出て帰路についていた。

 「ほら、落ち着けよ」

 健一は黒雨の肩を優しく叩き慰める。

 「ぐすっ、うぅ、ありがとう」

 黒雨はグシグシと涙を制服の袖で拭いっとった後顔を上げた。

(小学校の卒業式でも泣いちゃったし、僕って感情が爆発し易いのかな……?)

 泣き止んだ黒雨はそんな事を考え、少し落ち込んだ。


ーーーその時、

 キキキキキィッ!! と、

 アスファルトの道路をゴムのタイヤが滑り、甲高い音をあげながら黒雨の方へ向かってくる黒い乗用車。

 それに気付いた黒雨は必死に回避しようとするがその目に止まったのは自分を慰めていたせいで反応が遅れた2人の親友の姿。


 (自分のせいで!!それはダメだ!!!!)


 判断にかかった時間はコンマ1秒以下。

 

 それが正しいのかは分からない、が、確実にその判断は、自分の運命を大きく………とてつもなく大きく………周りを、世界を巻き込むほど大きく………変えた。


 両手で呆然としている2人を突き飛ばし、黒雨は目を瞑った。

 最後に見えたのはほんの少し前に迫る乗用車とその車の移動方向から大きくずれた所で倒れている2人。


 ドンッッ!!!!!!


 鼻につくゴムが焦げる匂いと共に大きな衝撃が黒雨を襲う。


 気付いたら黒雨は宙を舞っていた。血は出ていないが、体中の骨がボキボキに折れ首は180度以上回転し両腕と両足は本来曲がるべきではない場所が、曲がっていた。


 跳ね飛ばされた黒雨はアスファルトの地面に叩きつけられ2、3回バウンドした後10メートルほど滑り、止まった。



 「「「きゃぁぁあああ!!!!!!」」」

 通行人の甲高い悲鳴。

 健一と綾乃は状況が理解出来ずポカン、としていたが、すぐに理解し慌てて黒雨に駆け寄った。



 そして黒雨の親友2人と10を超える通行人が見たものは………!!



4



 (な、何だ??)

 黒雨は即死してもおかしくないダメージを受け重傷を負ったはずなのだが、しかし黒雨は変にスッキリとした気分を味わっていた。

 痛いには痛いのだが、それ以上に喜びが体の奥から溢れ出てくる。

 今まで押さえつけられていたものが解放されて………、

 体中がそれを喜び、祝福しているかのように脈打つ。


 ドクンッ!ドクンッ!!ドクンッ!!!ドクンッ!!!!ドクンッ!!!!!


 体が喜び終え、そして………………体の再生が始まる。



 パキパキパキパキッ!

 折れた骨が瞬時に治る。


 バキッ!

 折れた首が一瞬にして元に戻る。


 ーーー!

 傷ついた肌が瞬時に治る。




 


 (何だよ、何だよッ!これじゃまるで黒雨が……新人類みたいじゃないか!!)

 健一は心の中で叫んだ。

 (こんな再生するのは……新人類しかいない。

 お父さんの仇、お母さんがあんなに一生懸命働いてお偉いさんにペコペコと頭を下げる生活になった元凶、東京が格差社会になった元凶、新人類!!!!)


 「お前、お前ぇぇぇえええ!!」

 健一の怒りは爆発した。


 「騙してやがったのかッ!!俺を、騙していやがったのかッ!!俺に父親が新人類に殺されたのを聞いて泣いていたあの時ッ!!お前は俺をあざ笑っていやがったのッ!!」


 健一は叫ぶ。綾乃や通行人がなにやら叫んでいるが、もう止まら無い。

 目の前のヤツが起き上がった。


 「なんとか……何とか言えよッ!!」

 薄笑いを浮かべた黒雨は答えない。目の焦点は合っていなく、意識が朦朧としているのが見てとれる。


 (今目の前にいるのは親友じゃねぇ、人類の敵、世界の敵、東京の敵、そして、俺の敵だぁあああ!!)

 健一は混乱と怒りに身を右腕を構え、黒雨めがけて振り抜く。

 しかし、怒りまかせの全力の一撃は黒雨の右腕に阻まれた。

 

 






 (何だ?体が勝手に動いた?)

 まるで本能が自分の体を動かしたみたいだ、と黒雨は思った。

 自分の体に起こっていることに混乱し、親友の裏切りに怒り、自分が新人類と呼ばれていることを嘆いた。

 (これはサイレンの音……)

 遠くから特殊警察特有のサイレンが聞こえた。良くみると綾乃の手には携帯があり、黒雨を憤怒の表情で睨みつけている。


 (綾乃さんが対新人類特殊警察を呼んだ?)

 黒雨は失望し絶望した。

 さっきまで親友だったのに自分が新人類だと分かると裏切り駆逐しようとする。そんな世界に、人類に、親友に。


 (もういい、もういいよ)

 健一は黒雨を殴ろうとし続け、綾乃は黒雨を罵倒し、通行人も恐怖と憤怒をうかべ黒雨を罵倒する。

 (もういい、から止めてよ)





 サイレンの音が近づく。

 (特殊警察に捕まったらきっと殺される

 逃げないと)

 健一が振り降ろした拳をいなし、ふらふらと路地裏に入る。

 (逃げなくちゃ)

 ふらつく足を一歩一歩前に出し歩く。

 右、左、右、左、右、左。

 サイレンの音が止まった。どうやら事故があった所についたようだ。

 事故の現場から黒雨が歩いている場所までは走れば30秒もかからず辿りつけるだろう。今にも健一や綾乃、通行人からの報告で武装した特殊警察隊がやってくるだろう。

 そんな緊張や興奮、怒り、失望、絶望。それらの感情によって黒雨の意識がもたなくなり、気絶しそうになる。

 その時、

 「大変だったな。だがもう大丈夫だ」

 黒雨は後ろから声をかけられた。

 慌てて振り返るとそこには黒装束の男。

 (この服確かどこかで見たような……?)

 「だ、誰です?」


 「俺の名は[デスオアデッド]の戦闘員第3位。魔犬のフェルズだ。安心しろ。特殊警察から守ってやる」



 その言葉を聞いた黒雨は感情の爆発による精神的な疲労と肉体的な疲労により、意識をうしなった。

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