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次の世代

 魔人と一緒だというのに、なぜこの人はのんきに寝ていられるのだろうかと私は思う。怖がりすぎだと思うが、彼らは私たちの何倍も強いからだ。

「……くかー」

 魔人の青年は空を見上げながら外の風景を楽しんでいるようにも見受けられ、正直何が何だかわからない。

 数日間このお方の付き人をやってはいたものの、陛下がなぜこのように偏った人間を目にかけるのかが分からない。

「んか……すまない……」

 ん?寝言?今までのんきな寝顔だったのに、急に険しい表情になり、額には脂汗が浮いている。

「すまないミーフェリア……君を騙していた……すまない」

 かきむしるように胸を押さえて、彼は脂汗を流しながら唸っている。

「ん?魔国の名前?なんでそんなものに……」

「多分、ミーフェリアは女性名ですから、誰か女性に謝っていると思いますよ」

 脂汗をかきながら目覚めたアルバート様を見る。

「ん……あぁまだ宿泊予定の村にはついてないのか……俺はいったい何時間寝ていた?」

「半刻ほどだと思いますが」

 まだ半刻かよとため息を漏らしながらぴたりを魔人の青年と目があった彼はため息をつく。

「……さっき、寝言で漏らしていたのは、二代目魔王ミーフェリアのことですよね?」

 そう問いかけられて、きかれていたのかと小さく彼は漏らした。

「……まぁこれは俺が墓まで持っていく話だし、他人に言うつもりはねぇよ」

 そういうアルバート様の眼は何か悲しいものを見る目をしていた。二代目勇者と彼とでは生きている時間が違うのになぜ、初代勇者の名が出てくるのだろうか?



「魔王領と人間の戦争が起きたのは、魔王軍による大破壊が起きたことが原因であると言われているが……あれは嘘だ」

「「え?」」

 魔人と兵は驚いたような声を上げる。

 今俺はエリクと兵に魔王軍のあらましを話している。

「驚くようなことか?あれ実際人間が細工したものだしな」

 なんとでもない歴史でも、ゆがめられて伝わっている部分が大量にあるなぁ……

「実際の戦争原因はその後3年間にわたる人間以外の種族の奴隷化にある。魔王が人間という話はあまりに有名だが、その人間が奴隷に対する扱いのひどさ貴族のやり口の非道さにブチギレたのが原因だ」

「それではあの戦争の原因は、すべて人間に?」

 まぁ十中八九そうだが根はさらに深いんだよと、俺はため息をつく。

「その人間を先導していた連中は誰だ?」

「人間至上主義者……教会や神……まさかかつての魔王の目的は!!」

 どうだろうなと俺はそういう。まぁ俺の口から行ってしまうのは兵士がいる関係上いろいろ問題があるからだ。

「それを知るのは魔王だけってな。確か二代目魔王は知らなかったらしいし、誰も彼の真意を知らないんじゃないか?」

 そもそも6人将に言ってないし誰も知らないだろ一人理解していたような奴がいたが。

「それで大戦がはじまったと……なんでアルバート様はしっておられるのですか?」

 兵士がやっぱり疑いの目で見てくるなぁ、さっきの寝言も効いてそうだけど。

「まぁ知ってるからだろ?つかこれぐらい調べれば資料でてくるからなぁ、一回王都の資料室いってみろ魔王軍が確認された時期が書かれた書物のこってるし」

 正直教会の観衆が入った書物など信用がならん。

「まぁ世の中嘘だらけなんだよ、自分の罪を隠したほうが都合がいいしね?」

 俺は、ゆっくりと横になる。エリクは目を細め苦笑いを浮かべていた。

「公平に物事を見たければ、公平に調べるこった全てにおいて疑問を抱き法によってそれを解結する。それが真なる公平だと俺は思うよ?」

 馬車は走っていく……立場が違う三人を乗せて……



「……懐かしい気配がこの世界に?」

 こんこんとわき出る泉のそばに身を寄せてまるで龍のような堅牢な人型はゆっくりと身じろぎをする。

「陛下が死去なされて90年あまり……ワシはここに身を隠してはいたが……まだ用事がすんどらんというのにあの陛下は……」

 あのお方が生きていることには驚きはしないがここ数日この泉が活性化していることに関係しているのだろうか?

「おっと」

 わしは人の気配がしたので、しゃがむと、十字架が描かれた白い鎧を着こんだ連中が見える。

「教会騎士……か……」

 何をやっているというのだ?

「あれは……」

 教会騎士に囲まれた場所に少女が一人立っている。

「神託の巫女……か」

 あれからまだ90年しかたたないというのに、あの神は一体何をやるつもりだ……

 まぁいい……あのお方が生きていらした以上どうせ神は死ぬのだから……

「初代魔王が復活!!本当ですかそれは!!」

 やはり先ほどの気配は陛下のものだったか……だから神は恐れているのか……

「勇者も復活。なるほど魔王亡き後、魔族たち虫けらを抑え込んでくれた勇者が復活しているのならもんだはないですね」

 ぬかしおるな教会の小娘が……ミーフェリアの御仁が何を思ってあの地を治めたのか知らぬくせに……

「教会と後継者は相変わらずか……」

 しかし魔王陛下が生きておられたということは、またここを目指すのだろうか?

 だとすれば、神があわて始めるのも理解できる。彼は唯一、神を殺すことのできる力を持っているのだから。

 そして、陛下は必ず来るだろう、奴は人間からの信仰を得ようとゲスイ手を使いまくっているからな。

 だが、この世界で普通の人間として復活した以上、魔王陛下には勝ち目はないはず……

「だからわしがここにいるんじゃが……」

 だけど……だけどもし、魔王陛下が神を倒すことができれば、あのお方は本当の神になることができる。ワシの後継者として最もふさわしいものが神になることができるのだ。

 じゃがまぁワシが失敗したら後はよろしく頼むとするかのぅ……



 村についた俺は、怯えた顔の村長に迎え入れられる。

「御心配を彼は私の客人で、良識ある者ですので……」

「解るのですか?」

 俺はうなずく。

「えぇこの村には魔族との交流がないみたいなので、自分以外の異質なものを恐れるというのは承知していますよ?」

 そう笑いかけると村長は驚いたように目を見開くとため息をつく。

「……お主は怖くないのか?」

「えぇ怖くないですよ。襲われなければ人間と同じですし、たとえ襲われても力の強い人間程度に思えば全然」

 なんか一般人ではそうはいきませんってツッコミが入りそうだが……

「それに私の付き人の兵は、陛下より貸し出された魔国に入国するための護衛、魔人と対等に渡り合えるだけの戦力を保有しています」

 兵の何その無茶ブリ!!といった表情が面白い。

「ねぇねぇお兄ちゃん、お兄ちゃんはどこから来たの?」

 怖がる大人たちに対して、子供たちは純粋な笑顔でエリクの周りをかこっていく。

「……俺はどうすれば」

 あわてて親が止めようとするもののエリクにビビッて近づいてこりゃしない。困り切ったエリクを見て俺は少し苦笑する。

「暫く子供たちと遊んでろ。はたから見てて面白れぇから」

「ちょ、他人事だといたいいたい引っ張らないでくれ~」

 俺はケタケタ笑いながら村長を見る。

「な?子供相手に右往左往して、子供だからと強く出られない魔人のどこが脅威かな?」

 ケタケタと村長に笑いかけると、村長は落ち着いた様子で苦笑いを返してきた。まぁまさか、子供相手に強く出れず割とぼこぼこにされながら右往左往している若者を見て、化け物扱いはできないだろう。

 願わくば、村の誰かが間違いを起こさないように……



「お父様?」

 私は急に入ってきた陛下に対して声を上げる。この体の元の持ち主の呼び方がこうなのか、その呼び方にひかれたのだろう。しかしまたなんで、死んだはずの私が生まれなおしてしまったのだろうか。

「もういいのかい?フレイア?」

 私はこの体の名を呼ばれ、えぇとうなずく。この体の不具合を過去の記憶をもとに、探っていく。

「魔力は安定したのか!!よかった」

 陛下に抱き着かれ私は軽く挙動不審になる。

「え?」

 魔力が不安定になっていた?

 まさか私が表層に出ないから、この体が安定しなかったとでもいうの……

「安定した理由などは?」

「まったくわからんな、いつ安定するかもしこのまま安定せずに……と医者が言っていたから……」

 それでこんなに……心配してくれる親がいるというのはうれしい。

「お父様……私、外の世界を見てみたいです!!」



「助けてくれー」

 完全に子供になつかれ、朝から引っ張りだこになっているエリクを見て少しかわいそうだなと思うが、村人たちは安心したように彼に笑いかけている。

「世界ってこんな単純なものなんだよなぁ。子供はいい意味でも悪い意味でも純粋だからか、割と勉強になるなぁ」

 かつて見たことのない魔族と人との交流を見て、俺はこんなに単純なことなのになぁと思う。

「……不思議ですわい、父親から聞かされたにくい人間の敵という言葉が嘘のようじゃ」

 俺はゆっくりと笑う。人間の寿命は短いもので彼は戦争が終わってから生まれた世代なのだろう。だからこそ、ゆがめられて育ってしまったからこそ、恐怖に支配される。

「まぁあれも大体初代魔王が原因だし、あいつ等から見れば俺等人間の方が憎い敵なんだぜ?寿命が長いから大戦争前の奴隷時代の記憶を持っている奴もいるしな」

 少し申し訳なさそうに村長は顔をそむける。彼のあの姿を見て、自分たちがどれだけ偏見を持って最初に接したかを思い出し、悔いたのだろう。

「アンタ等の責任じゃねぇよ。悪いのは貴族と教会だ」

 少し笑うと、エリクにってまねき。

「こいつはそんな時代を知らない魔族でも次代を担う存在だ。俺たちもそろそろ偏見を捨てて、次代を担わなければいけない……そうだろ?」

 俺はゆっくりと兵が待つ馬車へと行く。

「それでは村長さん、お世話になりました」

 俺が頭を下げると、村長さんがあわてる。貴族が平民に頭を垂れることは、そんなにないのだ。

「ねぇお兄ちゃんは、また来るの?」

 エリクは泣き出しそうな子供に向けて、苦く笑っている。

「エリクか?平和になればいつでも会えるぜ」

 俺は子供たちに短く言う。

「本当に?」

 嬉しそうな子供の笑顔に、少し顔をほころばせる。彼らの中には魔族は異物という考え自体が存在していないのだろう。

「あぁそのためには、君達の力も必要なんだ」

 少ししゃがみこみ、子供たちの頭をなでた。彼らの力が次の世代には必要だと俺は考える。

「君たち以上の力を俺は抑え込むのに忙しくて、君達に力は貸せないけどね?」

 後にその言葉は、各国の歴史書にのることになる。平和を愛した英雄が言った言葉として……魔王の名で……

追記次話すぐに投稿しようとして力尽きました。

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