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教皇国というところ

怒涛の連続更新?

 あれから俺達は姫様のもとへ向かい、旅を再開した。どうやら広域浄化魔法が作用しているのか?アンデット系の魔物は存在していなかったが。

「もう2刻ほどで、教皇国ですか」

 フレイトがそう言うも、俺は少し考え事をしていた。

「どうかなさいましたか?」

「いや、争いって会話で納められないのかなって」

 くすりと、姫様は笑う。

「集団心理の前ではそんなことはできないということは、解りきったことですよ?」

 一国の姫様の口からも、あの魔王の代理と同じような言葉が聞こえ、俺は少しだけ驚いた。

「その集団心理を作り出しているものを倒さない限り、争いは続きます。90年前の戦争で勇者が魔王を殺したように」

 その顔はとても悲しそうにも見え、少し心が痛む。

「90年前の戦争では平和を乱す者が大量にいたにもかかわらず。それらだけが生き残り今度は皇国と帝国の戦争を引き起こした。魔王が持った理想は、平和を乱す者の一掃です。そのための世界征服だったんですよ」

 そのためには、必要となる関係のない犠牲も仕方がない……そう彼女は言いたいのだろう。青臭い理想論で、その手のものが止められるとは俺も思わない。

「何故、貴方が90年前の魔王のことを?」

「私が……私が初代勇者で、今代の魔王を倒すためにこの世界に呼び出された存在だから」

 彼女の言動に、俺は思考を停止させる。

 彼女は今なんて言った?初代魔王を倒した初代勇者だと……それを再び倒すためだと!!だとしたら魔王は一体何を考えている。

「何を考えているかわからないのは、貴方達が神に仕えている人間という種族だから……私が彼の考えがわかるのは……」

 彼を殺して、一度真実を知っていしまった人間だからと彼女はそうつぶやいた。

「……ねぇ兄さん。なんで初代が魔王様に仕えたと思う?」

 弟がそう問いかけてきて、俺は少し溜息を吐く。

「わからないさ……爺ちゃんが何を考えていたか……今の俺じゃ理解できない、爺ちゃんが言ったことの意味も魔王様が何をしようとしているのかも」

 でも、今の俺みたいに理想ばかり追い求めて歩み続けているのも間違っているとは思う……世界平和というのを誤解しているであろう今の俺では……

「殿下、なぜそんなことを?」

「ふふ、彼らが昔の私に似ているからだと思いますよ」

 そう、主従二人が話しているのが聞こえる。

「平和を乱す者の定義……俺はそれをまず知らない」

 彼女の言っていたことを思いだし、ふと頭の中に浮かんだことを口に出す。そう……まず俺はそれを知ることから始めよう。



 周りがあわただしいなと、潜伏先で目を覚ます。

「選定の泉を見に来られる他国の王族とともに、魔王の反応がここら周辺で確認された」

 ワシは神官たちの言っている言葉が理解できず、目を白黒させる。魔王様が直接この地に乗り込んでくる気なのかと、思った。

 いや、今代の魔王はそんなことをしない、となると……最近復活した初代魔王様だろう、あのお方なら、さも当然のように笑いながらやらかしてくれるだろう。

「……まったくあの魔王様は今度は何をやろうと」

 まさか、今代の勇者も彼女なのか?だとしたら……なるほど、ここが正念場となるわけだ。あの方にとっては……

「だったら、わしも気張るかな?」

 そう小さくつぶやいた。魔王の真意をくみ取り、今度こそあのお方の唯一のこの世界にとっての希望であるあのお方のために……



「あぁ、お茶がうまい」

 武器屋で俺はお茶を飲みながら、そう呟いた。

「あんたいったいなんなんだ?その鎧を使えるということは、普通の貴族じゃないのだろう?」

 店主の話に俺は少し微笑む。

「……いつ貴族だと?」

「普通の旅人じゃやらない行動や、何かを知り尽くした行動をしていたからな」

 まぁいいか……真実を語っても問題はないだろう。

「この鎧は俺が作ったからな……内緒だぜ?」

 本当にお茶がうまいなぁ……いい茶葉だ。この地域から茶葉を輸入しようかなぁ。

「カーライアとは名のことだと思っていたのだが、まさか初代魔王陛下でしたか!!」

「なんだい?俺につき従ったものの子孫よ。あぁ、おびえなくても畏まらなくてもいい。俺は今や魔王の力をほとんど失っている。ただの人間なんだ」

 俺は薬草タバコを吸い始める。体にいいとは言わないが、昔の魔王時代からのくせなのだ。

「貴方様が戻ったということは、また戦争が?」

「起させねぇよ。そのために俺は魔国から身を引いたんだ」

 そういうと、俺はゆっくりと笑う。紫煙をまき散らせながら。

「さて、そろそろ俺は行くよ。ありがとうな店長……また暇があればこっちによるよ」

「あの、あなた様のことは何と呼べば?」

「魔王って呼ばれあきたし、今や魔王の名を関するものはいる……そうだな、勇者もいるし……魔王でも勇者でもない者か……まぁ一般人だなぁまさに」

 一般人……カーライアか……ただの人だよなぁ……

「救世主……カーライア」

 俺はゆっくりと笑う。

「救世主か……おっもい名前だよなぁそれ、まぁ名前負けしないように頑張りますかね」

 くすりと笑うと、俺は過去を懐かしむように目を細める。

 かつて、神に愛されなかった一人の少年は世界を愛し、世界のために死んだことを思い出した。

 タバコを吸いながらにやりと笑う。

「ちゃっちゃと、世界を救いますかね」

 俺は活動を開始する。今度こそ俺は世界を変えようとおもう……

 彼女を救い、あいつを取り戻す。

 あわよくば、敵の殲滅もできたらいいんだがな……

 教皇国への道を歩みだす……その目にわずかな闘志をもやしながら。



「ようこそお待ちしておりました」

 教皇が出迎えてくれたので、俺達は一歩下がり姫さんの後ろにつき従う形となる。

「さっそく目的地である選定の泉にご案内しましょう。従者の方もよろしければ、どうぞ」

「よろしいのですか?たしか、選定の泉は教団にとって神聖な場所では?」

 教皇は笑う。

「いくら、聖地とはいえ、護衛なしで一国の姫を一人にはできないでしょう」

 なるほど、教皇国とはいえそこらへんはしっかしとしているようだな。

「従者の分際で質問を失礼いたしました」

「かまいませんよ。貴方の質問もごもっともだ。教団についてもお詳しいようで」

 俺はにやりと笑う。そりゃ敵だからなとは口が裂けても言わない。

「えぇ、人体実験の件についてもしっかりと知っていますよ?」

「普通の従者に思えませんね」

 姫様は、にやりとしながら笑っている。俺は首をかしげると、姫様の発した言葉に驚かされた。

「……普通の従者じゃありませんしね。知り合いよりお借りしているのですよ」

「ほぅ、そのお知り合いの方にあってみたいものですな」

 すぐに会えると思うがなぁと俺は思いながら、選定の泉までの道のりを歩いていく。

「こちらです」

 通された部屋には、室内だというのに緑が広がっていて、太陽の光が照っている。

 ひとことでいうと幻想的、俺の主観からは吐き気を催すような邪悪に見える。

「おや、姫様はこの光景に何もおっしゃらないのですね?」

「えぇ、この先に起こることが、大体わかっていますから」

 泉が輝きだし、幻想的な女神が現れる。

「お久しぶりですね?勇者殿」

「久しぶりね。女神。やっぱり私が、また勇者を?」

 ……これが、女神か……

「そこにいるのは、魔王側についた人間の子孫ね?これは……いいわ勇者そこの二人を殺しなさい!!」

 俺達はごくりと息をのむと、姫様を見る。姫様はクックと笑っていた。

「いやよ。あんたには絶対に従わない!!」

 ゆっくりと、俺達はそれぞれの武器を構える。

「信者たちよ異端者が現れたそいつらを捕まえ……」

 教皇がその場で崩れ落ちる。そこに立っていたのはトカゲのような鱗を持った男が立っていた。

「まったく無茶をする。やぁ勇者、90年ぶりだな」

 龍人?なんで龍人がこんな場所にいるんだ?亜人は入れないはずじゃ……

「久しいな、エールディン」

 神がたった一個人を知っている?しかも亜人に分類される龍人を!!なんだこの違和感。

「魔王と共に願った夢!!今代の神を殺す。お前が完全顕現した瞬間が、唯一のチャンスだ。これはワシの罪……貴様を任命してしまったわしの罪だ!!」

「やってみよ、初代神よ!!」

 エールディン……聞いたことがある。魔王とともにたった龍人の男……それが彼だと……だが?

「龍の咆哮」

 吹っ飛ばされたのは龍の男だった。

「なぜワシが」

 吹っ飛ばされて、そう呟く彼は力なく立ち上がる。その瞬間、あのお方の声がこだまする。

「お前は、勇者の力が奪われないようにしておけ」

 そんな俺たちの前に、漆黒の鎧をまとい筋骨隆々な男が現れる。

「逢いたかったぜ。女神様よぅ!!」

「へぇ、魔王直々にあらわれるだなんてね?」

 陛下はにやりと笑うと、口を開く。

「名乗りをあげておこうか!!俺は救世主……救世主カーライアだ!!」

 剣を手に彼は力強く宣言する。その姿はまるで神々しく、神よりも神様だと認められるようなオーラを放っていた。

「ふきとべ!!」

 泉がえぐれ神が消滅していく。あの泉がこの世界と髪をつなぐパスだったのか!!

「お前ら二人、エールディンのじいちゃん連れて逃げろ!!」

 いきなり現れた、教団騎士によって姫さんと、その従者が捕まる。

「多勢に無勢か……いったん体勢を立て直す。さすがに彼女を巻き込む可能性があるからなぁ……」

 そういいながら、魔王様とともに俺達は逃げ出した。

 教皇国の国境沿いの森に身を隠す。

「……魔王様、これからどう……」

「お前らはエールディンを俺の領地まで連れて行ってくれ」

 魔王は元の姿に戻ると、座り込みため息をつく。人仕事を終えたといった表情に、俺達は少し首をかしげた。

「一応、神の分身たる彼女には洗脳は効かないが、彼女の従者は知らん」

 目を閉じてそういう、魔王様の姿は何かを考えているようだった。

「さてと、従者のほうは多分イモちゃんのほうが何とかしてくれるだろうし、俺は魔力を少し回復してから行くか……あのクソ女神の完全顕現は永久になくなったからな!!」

 そういうと、魔王はゆっくりと立ち上がる。そして、次の瞬間、魔王様の体は陽炎のように空間にとけて消えていった。



「おっこいせっと」

 教団関係者の服をパクリ俺は教皇国内部を歩いていく。見つからないように隠密行動をしながら

「……ここが牢か。さすがに彼女はここにはいないようだが」

 見知った顔が、牢の鍵を破壊しようと四苦八苦している。そんな彼だが、こちらに気づいたのだろうかこっちをじっと見ている。

「そこにいるんだろ?初代魔王、力を貸せ!!彼女を穢したくない」

 俺はにやりと笑い、剣を取り出すと牢屋の錠前をたたききる。そして彼に向き笑顔を浮かべた。

「やぁ、イモータル健康で元気にしてたか?」

「はっ、死なない体なのに、健康で元気もくそもねぇだろうがよぅ。久しぶりだな」

 彼は俺の唯一の心残りだったんだが、なんだか楽しげに生きているみたいだな。

「まさか、彼女とまた会えるとは思わなかったよ。なぁ初代魔王」

「今の俺は救世主だ。今回は戦争を回避しつつ、俺は神を殺す!!」

「……彼女が手伝うのなら手伝うよ」

 でもまぁ今のところは……敵対しても仕方ねぇだロウとつぶやき、互いに無言で握手をする。

「とりあえず、休戦協定だ」

 手を放した瞬間……俺は眠っている彼女の従者に魔法をかける。

「ん……あなた方は?」

「あいつの婚約者と、唯一生き残ってる初代勇者の仲間だ」

 ゆっくりと顔を上げながら、笑う。

「……さぁて、あいつを助けに行くか!!」

 俺はそう宣言すると、俺達は笑った。世界を変えるための行動……人体実験の素材にされた神父とかつて敵だった魔王とのタッグだ。もう負ける気がしない。

「轟け咆哮!!」

 建物自体が揺れて、天井をぶち抜いていく。

「最短距離で索敵で素敵だ。この野郎!!」



「そうか……進撃のは逝ったか……」

 わしは彼の孫から彼の最後を聞き、涙を流す。

 あやつと最初にあったのは、まだあ奴が小僧の時だったが……なかなかいい目をした小僧だった。単身、魔王城に乗り込んできて、わしらに武器を向けたことを覚えている。

 あのとき、あのお方はその少年の前に単身で出て行ったんだよなぁ……覚悟を決めた戦士には、前哨戦などいらぬだろうとか言いながら一騎打ちなされたことを知っている。

「じいちゃんを?」

「あぁ……知っている。彼が魔王様に挑み負けたこともな」

 魔王様に挑み?そう聞き返してくる、彼ら兄弟を見て少し笑った。

「そして、彼は魔王様の人となりを知った。今じゃずいぶんとお変わりになられたみたいだけどな……あのお方も」

 いや、変わっていないのかと小さくワシはつぶやいた。

「主らは魔王様を信じているか?」

「……いえ、俺達はまだ魔王様の考えが読めません。先ほども救世主と……」

 国境を越えた先の村にたどり着く。

「貴方方がカーライア様の関係者ですかな?」

 出迎えてくれたのはひとりの武器屋の親父だった。



「魔王!!さっさと、魔王化しやがれ」

 俺は彼女の従者を守りながら、剣戟を受け止め吹き飛ばす。

「かっかっか、イモータル。貴様体で剣を受け止めろよ。だから言っているだろ、俺は……魔王の時の半分以下の力しかねぇ!!轟け咆哮、響け波!!」

 建物がたわんで、敵が吹き飛ばされていく。

「我、眼前の敵を滅せん。エクスプロージョン!!」

 爆発が巻き起こり、人々が倒れているのが目にうつる。

「おい、魔王。大型魔法連発しても大丈夫か?」

「少しばかり、魂をいじっていってるからなようやくなじんできたところだ」

 俺は壁を殴ると、壁が崩れてそこにいた教皇と勇者がいた。

「なっ!!なぜここに!!イモータル裏切ったな!!」

 イモータルはその声を聴き、少し笑う。

「裏切る?人聞きの悪い……俺は元から貴様のもとについたことはない」

「え?イモータルって……しかも、見捨てて逃げたんじゃないの?カーライア」

 俺はにやりと笑うと、まるで煽るように首を横に振るう。

「誰が、見捨てたって?神の力を固定されたお前なら無事なことをわかってるし、足手まといを逃がさないといけなかったからな。後回しにさせてもらった」

「……人間が魔王だと!!なぜ、カーライアの名前を騙る!!」

 俺はクックックと含み笑いすると、魔力を練り直す。

「な、その姿は!!」

 魔力を纏い黒い鎧をまとった筋肉質の鬼が復活する。

「なじむ、なじむ……魔力がよくなじむぞ」

「何やってんだよ魔王」

 俺は後頭部をたたかれて、前のめりに倒れる。もはや漫才芸人のノリだよなイモータル。

「あんたら、そんなに仲良かったっけ?」

 彼女があきれ口調でそういうと、教皇が目を覚ます。

「はっ、貴様ら忘れたわけじゃないだろうな?勇者の従者……」

 俺はゆびぱっちんすると、従者の姿があらわになる。

「彼女がどうしたって?人質でもとったつもりか?あ?くそ神官!!」

 どんなにゲスなんだ教会の連中って……いや違うな自分が正義なのかこいつらは

「……こんなコミカルな奴だっけ?魔王って」

 そうイモータルがつぶやき、彼女は苦笑いを浮かべる。

「昔からこんなのよ」

「じゃぁ……いくぞ。追いかけてきたら、つぶす……どんな奴が相手だろうが不死者の大群であろうがな……」

 俺はそう宣言すると、彼女たちを連れて歩き出した。未来へと向かって。

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