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進撃の後継者と黒の騎士の後悔

 森を歩いていると、全身鎧の男が俺たちの前に立ちふさがった。

「なっ!!」

 その鎧には見覚えがあるが、現在は使用できる人間があまり存在しないはず……いったい何者だこいつは?

 俺はそう思うと、弟はカマを構え、静かに息を吸い込んだ。

「兄さん、気を付けて……あれは敵だよ」

「不死者に手を出すな。俺に任せておけ」

 そう鎧の男が小さくつぶやいた。

「その鎧、魔王の手の物だろ?なぜ不死者に手をかすんだ!!」

 俺がそう言うと、鎧の男はくっくっくと笑いながら剣を構えた。

「この先の不死者を保護するように……そういわれているからだ」

 鎧の男は、それがさも当然なことのように言い放ち俺達を見た。

「……なぜ?」

「不死者を殺すすべをお前たちは持つだろうが、俺達は不死者を救いたいと考えている。どうやら彼らは騙されただけのように思えるからな」

 だから助けたいと……だがこちらには目的がある……その目的のために引くどおりはない!!

「さて、始めようか……君たちはひくきはないようだ」

「こんなところで立ち止まるわけには……行かないんだ!!」

 俺が殴りかかると、鎧の騎士はそれを軽々とよけ、俺を殴り飛ばした。

 その瞬間、騎士に対して弟の魔法が炸裂する。

「ふむ、なかなかいい判断だ。だが進撃のにはまだ及ばん」

 少し俺は驚く。こいつ爺さんを知っているのか……知っているとしたらこいつはいったい……

「とっさの魔力弾放出……だがな魔力耐性が有る敵には効かないとは習わなかったか?見極めが甘い」

 膨大な魔力の奔流で、魔力耐性のあるはずの音音が吹き飛ばされる。

「兄さん気を付けて、鎧だけの力じゃなく、あの男自力も強い!!」

 わかっている。そんなことはわかっているんだ……自力では追い付けない域にいる

「無意味と悟ったか?」

「あんたが、魔王様の力の一端を持っているというならば、俺も使わせてもらう」

 心臓が跳ね上がり、目の前が灰色になる。

「ほぅ、進撃の能力を受け継いでいたか……だが甘い」

 俺は一直線に動き、最短で鎧の男を殴ろうとする。

「兄さん!!引いて、とらえられてる!!」

 弟の声に、俺は愕然となる。その瞬間とらえていたはずの鎧の男が消えてしまい、俺の体に鈍い衝撃が走った。

「人間、何を勘違いしている?魔王様の力の一端?先代の進撃は、そんなものに頼らず私ぐらいの実力者と渡り合っていたぞ」

「くそ、この……」

 弟の大鎌が鎧の男の首をとらえ、それを切断しようとするも、男の姿が掻き消えて弟の後ろにいた。

「まったく、あまり蹂躙するのは嫌いでね?できればおとなしくしてほしいものだが……」

 弟の右手が鎌をはなし、後ろに向けられているのがわかる。

「貴様が後ろを余裕を持ってとるというのはわかっているよ。石の槍!!」

 弟の右手から、石でできた槍が飛び出し鎧の男を貫いた。

「ふむ、いい手だ。行動の先読みも素晴らしい。運が悪かったのは、私という最強の戦力がいたからかな?実にもったいないと思うよ」

 弟の体が崩れ落ちて、石の槍が掻き消える。男はゆっくりと歩みだし、俺のもとまで来るとその場でしゃがんだ。

「私はもう誰もあきらめたくないんだ。すまないがしばらく眠っていてもらおうか」

 進撃の能力をもってしてもとらえられない敵、しかし俺には読み解く力がある。風の流れを非不で理解し音を完ぺきに聞き取ればいい。

「そこだ!!」

 裏拳が鎧の男の拳を完ぺきにとらえ、そのまま押し返す。鎧の男はよろめきながらも不用意に弟がはっている魔法陣に足を踏み入れた。

 その瞬間、石の鎗が鎧の男の心臓を貫こうとする。しかしそこはうまくいかずに、男はその石の鎗の弾道をずらし、左腕を犠牲にそれを回避した。

「うっすらとした魔法陣……対象の魔力を利用して発動するため気張っていないと見えないか……流石だな」

「兄さん!!いくよ」

 俺は強化術式が駆けられた体のまま、新劇の能力を使う。それに驚いたのか、一歩も動かない鎧の男に切りかかると、金属音が聞こえ俺の剣が半ば断ち切られているのが見える。

「おいおいウソだろ」

 スピードが乗っている剣筋をとらえ、素手で剣をたたき折りやがった!!もはやそれは人間業ではなく、鎧の男がだんだん魔人かなんかにしか見えなくなってきている。

「なかなかの剣筋だ。そして兄弟という特性を生かした魔法の二段構えも素晴らしい……が!!」

 見ると、魔法強化された鎌をふるった状態で蒼い顔をしている弟が対面に見える。

「兄さん、そいつ化け物だ。魔法を素手で……かき消した」

 強い衝撃の後、俺の体が吹き飛ばされる。

「くっ」

「ほぅ、これでも眠ってくれないのか。仕方ない」

 空間に大量の魔法陣が浮かび上がる。そして弟がはったであろう防御壁が俺の頭上に現れた。

「大規模破壊魔術!!オルカニックレインか!!兄さん後は頼んだよ」

 弟が鎌をくるりと回す。

「正解だ。いい後継者を作ったな進撃は!!」

 その瞬間、まるで雨のような魔法の塊が降ってくる。一つ雨と違うことを上げると、その雨は大地を揺らしていたということだった。

「くっ……精神力が持たない」

 そんな声が聞こえ、俺はこぶしを構える。進撃の力をチャージしながら俺は薄れゆく魔法障壁を睨み付けた。

 魔法障壁が消えた瞬間……俺はこぶしを雨に向けて叩きつけ始める。拳の威力で魔法を打ち消しているのだ。あの鎧の男がやったんだ俺ができないわけがないだろうと……

「ほぅ、弟が弱体化してたとはいえ、魔法を打ち消すとはね?」

 振り終わった雨を見ながら、俺はゆっくりと男をとらえる。

「弟が繋いでくれたんだ。俺がこれぐらいやらなくてどうするよ」

「……あぁ、悪いが時間なのでね?眠ってくれ」

 いきなり俺の後頭部に衝撃が走りゆっくり体の機能が停止していく、俺は攻撃した奴を見ようと首を動かした瞬間、弟と目があい舌打ちをした。

「あの雨、洗脳効果があったのか!!」

「不用意に攻撃を喰らうからだ」

 俺の意識はそこで刈り取られてしまった。



「ふぅ危ない危ない」

 俺はため息をつくと、二代目進撃の兄弟のほうを見る。

「兄のほうが進撃を継いでいたとは思わず、少し油断していたなぁ」

 てっきり、あいつのことだから力を分割して与えているとばかり思っていたのだが……少々話が違うようだ。独自の魔法形態と俺の魔法を完ぺきに弟の方に仕込んでやがる。もしかしたら、俺の後継者にもなれるレベルだぞあの魔法の密度を見れば。

「なんにせよ。今回が他人に初めて負けた事例になってくれるとうれしいんだが……っと、そろそろ時間だな」

 俺は森の中を進んでいき、そこに立っていたシスターを見る。

「やぁ待たせたね?邪魔が入りそうだったから、先に行ってもらったけど、大丈夫だったかい?」

 はいと小さくつぶやく彼女に向けて、俺はそうかとほほ笑みを返す。

「やぁ俺の名はアルバート・フォン・フィーリス一応、この国の貴族だ」

 そういうと、不死者は俺の顔を見た。

「あんたが、カーライアの?」

「あぁ、代理人だ」

 俺はそういうと、彼のもとにひざまずき、彼の瞳を見つめる。

「なぜ人間が……この国の貴族が、代理人を?」

 俺はその言葉を聞き、少し笑う。貴族は、教会の粛正を嫌って魔族に近寄ろうともしない。それなのに、カーライアの代理人としてきた俺を疑っているのだろう。

「初代魔王カーライアは世界を征服しようとした。教会の裏の支配から解き放つために……帝国と皇国との戦争が20年前にあったろ?そこで出てきた皇国側の人体実験兵器……あれも教会から生まれたものだ」

「……魔族の関与だと……魔国がやっているという噂は!!」

 俺はにやりと笑い、彼の両の瞳をしっかりと見た。噂レベルでも教皇国に俺のことが伝わっているということが行幸だったのだ。

「君は……身をもって体験したろ?魔国は人体実験なんかせんよ。カーライアの時代からな」

 空中に魔法陣を展開し、彼を少し見る。

「きこう、人間としてお前はしにたいか、化け物として今すぐ死ぬかどっちだい?」

「人間として、彼女と死にたいです」

 俺は満足げにうなずくと、魔法を起動させる。人の意思はどんな魔法よりも奇跡を起こす俺が彼に力添えをしてもいいという気になるぐらいの奇跡を……

「じゃぁいい、旅路を……」

 俺は小さくそういうと、あたりが白い光に包まれる。大量の演算魔方陣が輝きだしたからそう見えるだけだったりもするが。

「さぁさぁ神の奇跡も真っ青な悪魔の奇跡だ。クソ女神、俺の復活に恐怖しやがれ」

 俺はカーライアとして叫び、大笑いをする。

 さぁ語ろう……このクソッタレな世界を平和にする物語を……騙ろう、世界中のすべての人々を……そして……はじめよう、諦めきられなかった過去のあの後悔の続きを!!


「ん……兄さん」

「よう、起きたか。まったく俺たちが気絶させられるとわな……」

 兄さんは苦く笑いながら、俺の顔を見ている。

「黒の騎士は?」

「……解らない、多分俺たちの無力化が目的だったんだろうな……殺すつもりでこられていたら、秒殺だったろう」

 爺さんに持つことを許された、進撃の能力でも相手にならなかった……魔王様以外ありえないと思ったことが起きてしまったんだ。

「おやー?めずらしーですねー」

 俺たちは身構え、その男を見る。

「わーたしの、後輩がーうまーれて逃げたときいていたのでーでてくーるついでーに逢おーと思ったのでーすがー?あれの後継者にーあうとーは」

 魔力の流れが見たことある?この魔力の残滓は……

「兄さん……呪いの感覚が違うけど、そいつは不死者だ。この魔力の感覚は……魔王!!」

 不死者はその言葉を聞き、驚きに目を見開く。

「見たところ人間ですが、初代魔王を知っているのですか?」

「……いつの時代の不死者だよ」

 兄さんが声を漏らす。確かにこの不死者は少なくとも90年不死者の呪いが……あれ?だとしたら魔王様は死ぬ前に……なぜ?

「まぁいい、確かに初代魔王が復活したようだな。ということは、今代の勇者はやはり彼女か……」

 この不死者が何を言っているか俺にはさっぱり見当がつかない。

「あぁ、自己紹介をしておこうか。今代の進撃。私はイモータルという。初代勇者パーティーにいた不死者の神官だ」

 初代勇者パーティーの時代と言えば、不死者の実験が行われ始めた時代のはず。そこから……意識を……ちょっと待て?不死者の呪いをかけたのは……

「ほぅ、お兄さんの方は呪術に疎いけど、君は呪術が得意なようだ。彼は狂気に染まりかけ、自殺しに来た私を不死者の狂気から救うために、呪いの上書きをしたにしか過ぎない」

 ということは……あの黒騎士の行動も彼を送り込んだ魔王の行動もすべて見えた……

「害のない不死者を作り出そうとしているのか!!魔王様は!!」

「……いや、今回は違うみたいだよ?実際その眼で見てみるといい。90年もどこで何をやっていたのかは知らないけどね?」

 そういうと、イモータルは歩き去っていく。俺たちは言われるがまま、不死者の反応があった地に歩いて行った。

 反応があった地にたどり着くと、そこにはシスターと若い男性が倒れていて、あたりには魔術を使った痕跡があった。

「……なぁどこに不死者の痕跡が?」

「兄さん……これすごいよ」

 僕は思わず声を漏らす。倒れている若い男性の方に、呪いの痕跡が確かにあった。あったのだけど、肉体からも、魂からも呪いがはがされていたのだ。

 それも、肉体……魂の両方をキズつけておらずだ……

「……完全に解呪している……呪いでの上書きではなく完全なる解呪……」

「誰だ?」

 兄さんが突然声を荒げる。

「ふむ、もう目覚めたのだな……しばらくは起きないようにしておいたはずだが……まぁいい、彼女たちを近くの町まで運んでおいてくれ。私は帰る」

 黒の騎士はそういうと、ゆっくり歩きだしていった。

「黒騎士……なぜ俺たちに全部話さなかった!!力をかせたはずなのに」

 黒騎士は笑う。

「君達は、殺してでも進む道を選択した……違うか?」

 俺はその言葉の真意に気づき、目を見開いた。それでは……魔王の言う平和とは……

「言葉で簡単に変わる信念なら捨ててしまえ」

 真逆ではないか……世界平和など永遠に訪れない……

「永遠に平和など、訪れない……たしかにその通りかもしれないなぁ。世界の理が変わらない限り、平和など無理な話だ。君は若い故に世界を知らなすぎるようだ」

 姫さんの護衛を引き続き頑張ってくれ……そう彼は言い残し歩いて行った。

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