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第七話

さて今回は、ちょっと今までとは違う雰囲気の話となりました。初めてのことはどんなことでも難しいですね。今まで以上に拙い文になっているかもしれませんんが、どうかお楽しみください。

「やれやれ、今回もやったら長旅だったな」

「長旅って…。まだ目的地に着いたばっかよ」


ガイナールたちは、朝にギルドを出発し昼頃ようやく目的の街についた。


「馬車の中でも話したけど、本格的に私たちが動き出すのは明日からよ。今日は警察側の事務仕事とか周りへの配慮とかがメインだから」

「周りへの配慮ってなんだよ?相手は犯罪者どもなんだろ?」

「あのねぇ、ここは街中よ?しかも見ればわかるけど結構の都会。もしものことがあるでしょ?」


めんどくさそうなガイナールに、リーシャが答える。


「じゃあ今日は俺たちはどうすんだ?なんかやることあんのか?」

「そうね、私はちょっと警察のほうと情報交換とかをしてこなくちゃいけないけど…。うん、特にないわね。適当に買い物でもして遊んできていいわよ」

「買い物だぁ?おれぁそんなことに興味は…」

「なんだ今からフリータイムかい?んじゃあちょっくら俺は遊んでくるぜ。ガイもたまには羽伸ばせよなぁー」


真っ先に街に飛び出していったのはニック。

リーシャも言ったとおり、この街はかなりの都会である。

暇をつぶすのに困ることはないだろう。

ただガイナールの興味がわきそうなものはなさそうだが…。


「ちょっとニック!もう…こういう時ばっか行動が早いんだから…。まぁそういうことだからガイたちも適当に…あ!」

「なんだ?言い忘れてたことでもあんのか?」

「ガイ…お願いだから騒ぎだけは起こさないでね…」


リーシャが心配そうにガイナールを見つめる。


「子供じゃねぇんだぞ!ったくリーシャはよぉ…」

「場合によっちゃ子供よりタチが悪いんだけどね…。そうだ、ガイはティアと買い物にいってくれば?そうすればティアに見張っててもらえるし」

「わかった…。見張っとく」

「お前らなぁ…」


自分の扱いに納得がいかないガイナールだったが、これ以上言っても無駄だろうと今までの経験論から諦める。


「じゃあ私は警察の方に行ってくるわね。ティアにサラ、ガイをよろしくね」

「うん。」

「うむ、任せておくが良い」


ちなみにサラマンドは不可視状態なので、知らない人から見れば不思議な光景に見えるだろう。

サラマンドが実体化していない理由は簡単だ。

精霊を連れているところを見られると、警戒されることが多いからだ。

珍しいことももちろんだが、精霊は普通人間になついたりはしない。

人間に連れられている精霊=武器精霊であることがほとんどなのだ。

警戒されるのも、当然といえば当然だろう。


「ほら、私たちもいくよ」

「あぁわかったわかった。行きゃあいいんだろ!」


こうしてガイナールは、ティアと買い物に付き合うことになった。




「んでなんか買いたいもんでもあんのか?」

「うん…。せっかく来たんだし服とか買いたい…。」


普段は無表情なことも多く、あまり女の子らしくないティアだが、やはり興味はあるらしい。

少し予想外の答えに戸惑いつつも、ガイナールは貰ってあった地図を広げる。


「もしかしてもう行きたい店とか決まってんのか?それなら楽で助かるんだが…」

「なんも知らない。ガイナール連れてって」

「んなことだろうと思ったよ。っても俺だって服屋なんて知らねぇから適当にえらぶぞ?」

「うん。ガイナールのセンスに期待してる…。」


ティアの最後の言葉は軽く聞き流し、ガイナールは地図を見る。

どうせわからないなら、近いところのがいい。


「んじゃここでいいか。ほら、ついてこい」

「うん」


心なしか嬉しそうに、ティアはガイナールの後ろをついていく。

が、少し進んだところでガイナールの服を端を引っ張り引き止める。


「あ?なんだよ」

「ガイナール。私はお腹がすいたわ」

「そういやそろそろ昼飯時だな」


少し早いといえば早いかもしれないが、今から買い物をすることを考えたら先に食べておいたほうがいいだろう。


「そしてそこに、私の好きなあんまんを売っている屋台があります」

「買って来いと?」

「ガイナールは頭のいい子。私は頭のいい子は好きよ」

「使い勝手のいい人が好きの間違いだろ。あんまんだけでいいのか?」


買い物に行くと決まった時から色々と諦めていたガイナールは、特に逆らうこともなくティアの要求を聞き入れる。

ここでガイナールが断ったところで、結果が変わったとも思えないが。


「あんまん2つ」

「あんな甘いもん2つも食うのかよ」

「ガイナールには後であんまんのおいしさを教え込まなきゃダメみたいね」

「あーわかったわかった。買って来るからちょっと待ってろ」


あんまんのおいしさを語りだそうとするティアから逃げるようにして、ガイナールは屋台へと向かった。

幸い屋台は混んでおらず、スムーズに買うことができた。


「おい、ティア買ってきたぞ」

「あ、あんまんが帰ってきた」

「おい。そろそろ一発殴るぞ?」


ガイナールの沸点は低い。

いや、今まで一緒に仕事をしてきたチームの仲間でなければ、とっくに沸点を振り切っていたことだろう。

むしろ、今まで暴言らしい暴言が出なかったほうが奇跡だ。


「ガイナールはいつも通り乱暴ね。はい、あんまんは?」


しかしティアも、ガイナールの言葉を華麗に受け流し、あんまんを受け取ることに全力を注ぐ。


「ほらよ。もうちょい人への感謝をお前は覚えるべきだな」


当然ガイナールも人のことを言えたものではないが、ティアにとってはあんまんを食べることのほうが重要のようだ。

近くに空いていたベンチに座り、少し早い昼食をとる。


「あれ?ガイナールはあんまん買わなかったの?」


さっきの屋台は当たり前だが、あんまん専門店ではない。

ガイナールは、肉まんを2つ買っていた。


「あんま甘いもんは好きじゃねぇからな」

「むぅ…」


ティアは、ガイナールと自分のあんまんを交互に見る。


「ガイナールに食べてもらわないとおいしさをわかってもらえないけど、あげたら私の食べる分が減っちゃう…」


あんまんが好きなティアだからこそ、究極の二択だったらしく、あんまんを見つめ深刻な顔で悩む。


「俺は甘いもんは好きじゃねぇって言ったろうが。自分で食えよ」


未だに悩み続けているティアに、呆れたようにガイナールが言う。


「でも…。いつかガイナールもあんまん食べてね?」


ガイナールの言葉に押され、天秤は後者に傾く。

あんまんを再び食べ始めたティアを見、やれやれといった様子でガイナールも自分の昼食を食べ始めた。




「やっと終わったわ。こういう細かい仕事を少しでもガイたちが手伝ってくれればもっと楽なのになー」


軽い愚痴をこぼしながら、緑のポニーテルを揺らしながら歩くのはリーシャ。

ようやく警察との打ち合わせが終わり、昼食を食べ終えたところである。


「私もちょっと買い物でもしようかなー…ん?あれは…」


見知った人影を店内に見つけ、足を止める。

そこには、ガイナールとティアの二人がいた。


「もうとっくに逃げ出してると思ってたのに、しっかりおとなしくしてるじゃない」


素直に買い物に付き合っているガイナールを少し意外に思い、2人のいる店内に入る。


「もしかしてガイってばティアに気があったり…?」


何気なく考えたことだが、一瞬疑い始めたら止まらない。

リーシャも年頃の少女なのだ。

こういう話は大好物である。


「ちょっとだけね、ちょっとだけ…」


正義感が強い方であるリーシャは、盗み聞きすることに罪悪感を感じていたが、好奇心には敵わなかったらしい。

2人から見えず、なおかつ話が聞こえる距離まで移動する。

こっちから姿も見えないが、ギリギリ話し声だけは聞き取ることができた。


「ガイナール…。この服どう?」


最初に聞こえてきたのはティアの声。

どうやら気に入った服を、試着してきたようだ。


「んあ?あー似合ってる似合ってる。それでいいんじゃねぇか」


対する声は当然ガイナール。

セリフだけ見ればそんな悪い雰囲気ではないが、ガイナールの声に明らかにめんどくささが混じっている。


「また適当に言ってるでしょ…」


ティアの不満そうな声を聞くに、買い物に散々付き合わされて疲れたというより、最初からこんな感じだったのだろう。


「あのなぁ、そんなん俺に見せられたってわかんねぇよ。俺がファッションとかに精通してるように見えるか?」


見えない。


「うん、見えない」

「そりゃあそうでしょうよ…。でもそういうことじゃないでしょうよ…」


ため息混じりに、リーシャが小さく呟く。

どうやらこの感じでは、リーシャが思っていた感じとはだいぶかけ離れているようだ。

もう盗み聞きをしていても意味がないと判断したリーシャは、2人の前にまるで今来たかのように現れる。


「ちょっとガイ。もうちょいやる気出しなさいよ。ほんと興味ないことにはとことん興味ないのね」

「あ、リーシャだぁー」

「なんだ、もう警察との話は終わったのか」

「あなたたちができないから仕方なく終わらせてきたわよ」


さっき愚痴をこぼしてしまったのが引きずっているのか、愚痴とも嫌味ともとれる言葉をかける。

当然2人とも、まったく気にしたりはしないのだが。


「ティアはせっかく綺麗な白髪なんだし、こっちの色にしてみたら?」

「こっちのがいいかな?そうだ、リーシャもなんか買ってきなよ。私選んであげるよ」

「そう?じゃ私もちょっと見てこうかなぁー。なんかいいのあったりした?」

「うん、あったよ。こっち…」


楽しそうな女子2人とは真逆に、めんどくさそうだった顔がさらにめんどくさそうになった男が1人。


「こりゃあまた長くなりそうだな…」


リーシャが新たに買い物に加わり、ガイナールは1人ため息をつくのであった。




「そんでずっと荷物持ちをやらされてたと?はっはっは、お前らしくねぇな」


夕方になり、チーム4人は今日泊まる宿の前に集まっていた。

ガイナールの話を聞き、1人別行動をしていたニックが笑う。

荷物持ちをしているガイナール、という絵面がよほど面白かったのだろう。


「てめぇ1人で逃げ出しやがって…。そういうお前はどこほっつき歩いてたんだよ」

「おれぁ都会の若い娘たちと遊んでたよ。いやぁ久しぶりに楽しかったぜ」

「ちょっとニック、あんまみっともないことしないでよ?一応私たちは仕事できてるんだから…」


ニックの言葉を聞き、リーシャは顔をしかめる。


「ちょっと遊んでただけだって、リーシャちゃんはお堅いねぇ」

「私が自由時間って言っちゃったんだし、今日は特別に許すけど…。その代わり明日はしっかり働いてもらうからね」

「任せとけって。そういや明日は結局どんな流れになったんだ?」


ニックが言っているのは、警察との話で何か変更があったかということだ。


「そうね、そんなに特別なことはない…かな。ガイが馬鹿みたいに、やたらめったら壊しちゃうようなことがなければ特に問題はないって」

「おいおい、俺は一体警察内でどんな扱いされてやがんだ…」

「どんなって。今までの自分の行動を振り返って見ればわかるんじゃない?」


呆れたように言うリーシャに、ガイナールではなくニックが答える。


「周りの建物まで火事にしかけたり、奪われた倉庫を奪い返すと同時に全壊させたり、盗まれた荷ごと強盗をぶっ飛ばしたりと上げればキリがねぇな」

「ガイナールはやっぱり乱暴ね…」

「そ、そりゃあ…仕方なかったんだよ…」


多少なりとも自覚はあるようで、ニックから目をそらす。

ただおそらく戦闘が始まれば、いつもどおり忘れてしまうのだろう。


「とにかく今回は特に都会だし気をつけてね。一応怪しまれない程度の人払いはするつもりだけど」

「人払いったって、件の場所は地下にあるんだろ?」


今回ガイナールたちが向かう、犯罪者は社会から身を隠しているものたちの根城。

それはニックの言ったように、とあるバーの地下にある。

警察の情報によると、バーはそれほど大きくないが、地下の大きさは結構なものらしい。


「念のためよ。それで流れだけど、いつもどおり、最初はティアに偵察にいってもらうわ。」

「うん。わかった…」

「そのあともいつも通り。でも今回は精霊を発見した場合、その保護を最優先とします」

「へいへい、まぁいつもと大差はないわけだ。じゃあ細かい話は明日にして今日はもう宿で休もうぜ」

「そうね。もう宿のほうの手続きもしてあるし、入りましょうか」


明日の朝、またこの場所に集合よ。というリーシャの言葉を最後に、4人は各自に与えられた部屋に解散した。

今まで戦闘シーンだかりだったので、日常(?)シーンをぶち込んでみました。いやぁ戦闘シーンと比べて、なんか精神的に疲れました(ぇ。引き続き感想は絶賛募集中です。最後にここまで読んでくださったことへの感謝を。

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