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第三話

第二話に引き続き連続投稿です。

「確かに思ったより戦力は少なかったわね、先に私たちで倉庫内を確認…」


突然リーシャが会話を切る。

不審がり、ガイナールとニックがリーシャに目を向けた瞬間。

倉庫内から、リーシャに激しい電撃が襲う。

しかしリーシャは焦った様子も見せず、槍を払い電撃をそらす。


「ふいうちとはご挨拶じゃない?弱すぎると思ったけどまだ中にいたのね」


倉庫の中から3人の人影がでてくる。


「悪いが今日はちょっと大切な荷物が届いててね、君たちに漁られるのはまずいんだ。後日、ということでどうかな?」


人を小ばかにしたような調子ででてきたのは、長身で紫髪の男。

右手が帯電しているところを見ると、おそらくさっきの電撃を放ったのはこの男だろう。


「その要求が受けれないこと、当然わかってるわよね?」

「やれやれ強気な娘さんだ、なら無理やりにでも出て行ってもらうしかないな」

「ガイナールとニックは他の2人を、このふざけたお調子者は私がやるわ」

「個人戦か、団体戦でも僕は構わなかったけど今回はそっちの提案にのろうじゃないか。2人とも話は聞いていたな?いけ」

「「了解」」


しめし合したかのように、両脇の男たちは同時にガイナールとニックのもとへ向かう。


「さて僕の相手は君だね、いくよ!」


再び右手から電撃が放たれる。

手のひらを広げて出されたそれは、広範囲に広がり逃げ場を奪う。


「なめないでよね!」


しかしリーシャはよけない、そのまままっすぐ男に突っ込む。

電撃が直撃する直後、再び槍を振るうと電撃はまたもその場で霧散した。


「さっきから不思議な技を使うね、魔力障壁の応用かな?だったらこっちも、武器を用意しよう」


男はすこし長めの片手剣を展開。

リーシャの振るう槍に剣を合わせる。

リーシャはつばぜり合いには付き合わず、最小のモーションで槍を引き戻し再び刺突。

防がれるのを構わず、連続で刺突を行う。


「なかなかのスピードだ、でもその程度では僕には届かないな!」


高速の刺突をなんなく受け止め続けるその男に、リーシャはつぶやく。


「そう?さっきのやつらが弱かったから、貴方もこの程度かと思ってたわ」

「さっきのやつらは魔法を使えるだけの雑魚ども、一緒にしないでほしいな」

「そうね、貴方はあいつらより強そうだしまだまだ余裕そうね。じゃあもう1段階あげてみようかな」

「?」


言葉の意味が分からず、一瞬呆ける男は次の瞬間に、その言葉の意味を身を以て理解する。

簡単なことだ。刺突の速度が上がった。今までの1.5倍ほどに。


「なっ!?今までのは本気じゃなかったということか!?」

「今までの?何を言ってるのかしら、まだ平気そうだしもう1段階あげるわね」


1.5倍の次は2倍。言葉で言うのは簡単だが、その速度は尋常ではない。



「く…」


必死で対抗するが、とうとうその速度に抜かれる。


「はい、君の負け。じゃあね」


槍の胴の部分で思いっきり頭部を横なぐりし、意識を奪う。


「ふぅ。2人とも!そっちは終わった?」

「ったりめぇだ、おいしいとこ持って行きやがって」

「そ、じゃあもうさすがにいないだろうし中に入りましょうか」

「めんどくさ…と、そういえばあいつら今日は大事なもんがあるとか言ってやがったな」

「気になるわね、一応増援の可能性を考えてガイはティアのほうに行って。ニックは私と倉庫漁りよ」

「あいよ」

「りょーかいりょーかい」




ガイナールが戻ると、戦闘の音で警戒したのか、警察たちとティアはまだ待機場所にいた。


「ガイナール。何かあったの?」

「残党がいたんだよ、もう片付けたから迎えに来たとこだ」

「…そ。じゃあもう平気なのね、行きましょ」


もう問題ないことを確認し、ティアとガイナールは最後尾で警戒しながらアジトへ向かった。




「さてニック、2人が帰ってくるまでにちゃきちゃき調べちゃうわよ」

「まじめだねぇ、もうすぐで大勢の警官様方がくるんだからそれに任せりゃいいじゃないの」

「さっさとやればさっさと帰れるわよ、ほら働く働く」

「ほいほい、さてお宝さがしと行きますかね」


リーシャとニック、それとついてきていた警官2人は案外狭いアジトを分担して調べる。


「なるほど、金に換えやすそうなものばっかりだな」

「盗んでみたものはルートを知ってないと換金できないことが多いらしいわよ。

犯罪を犯してまで食料なんかをを盗んできて、結局全部自分たちで食べることになりました、じゃ笑い話にもならないものね」

「そりゃ間違いないな、ただまぁこれと言って珍しいものはなさそうだな」

「別に珍しいものを探す必要なんてないわよ。私たちの仕事は盗まれたこれらをチェックして、元の持ち主にスムーズに返せるようにリストアップするだけだもの」


もとの持ち主がわからなく、結局放棄することになるものもあるという。

それはそれだけいろんなところから強奪してきているということでもある。


「あいやそうじゃなくてよ?さっきガイのやつも言ってたじゃねぇか。連中の言ってた今日運ばれてた大事な荷ってやつのことだよ」

「そういえば言ってたわね。でも単に換金率が高い、つまりは高価なものって可能性もあるのよ?」

「そりゃあそうだがよ、なんか珍しいものがあるって思って探したほうが面白いじゃあないの」

「まったく、ニックはたまに子供っぽいところが…」

「お、おい!3人とも!これを見てくれ!!」


リーシャの言葉を遮るように、警官の1人が叫ぶ。


「なんだ?」

「どうしたの!?」


警官の焦った声を聞き駆けつけるとそこには


「こ、これは…まさか…」

「あぁ。あったじゃねぇか、とんでもなく珍しいものが」




「おい、お前ら」


アジトまであと2分くらいというところでその声はかけられた。

その声を聞き、ガイナールとティアは一瞬動きが止まった。

声に聞き覚えがあったわけではないし、特に驚くような特徴がその声にあったわけではない。

2人を驚かしたのはそこではなく、警戒していた2人にまったく気配を悟らせずここまで近づいてきたということだ。


「あんた…何者だ…」

「初対面の俺に何者だとはご挨拶だな。そして名を教えるつもりもない」

「そうかい、じゃああんたの目的は何だ」

「あんたらあの倉庫にあるものを回収するのか」

「てめぇ、質問に質問でかえすたぁいい度胸じゃ…」

「そうよ、あれは窃盗品。…私たち警察とギルドが回収するわ」


ガイナールに任せていては、会話が進まないと察したティアが会話に割り込む。


「やはりそうか…。悪いが俺はあの荷の1つに用がある。通してはくれないか」

「おいおい、そりゃ本気で言ってんのか?通すわけねぇだろうがぁ!!」


会話に割り込まれ、さらに好き勝手をいう目の前の男にガイナールがほえる。


「だろうね、では交渉は決裂だ。手荒な真似をしてでも荷を回収させてもらう」

「ちっ、来るぞティア!」

「…うん。」

「サラ!もう一仕事だ!!」

「相わかった、サラマンド参る!!」


ガイナールが装甲を装備、ティアもダガーを構える。


「精霊武器か。これは珍しいものを見させてもらった」

「安心しとけ、こいつの味も今から味あわせてやるからよぉ!!」

「それはちょっと遠慮しとこうかな」


両足のブースターを最大稼働、一瞬で距離をつめる。


「わりぃが一撃でゲームセットだ!!」


拳のブースターも展開し、得意の超高速での短期決戦を仕掛ける。


「火弾拳!!」

「なかなかの速度だ」


しかし男はガイナールの拳を紙一重でかわす。


「なに!?」


かわされたことがないわけではない。

だが踏み込んだ瞬間まで動きのなかった男を見て、ガイナールは命中を半ば確信していた。

あの距離からのアクションでは、かわされないと踏んでいたのだ。


「だが一度かわされると隙が大きいようだな」


ガイナールの目に映ったのは2本の刃。

本能的に生命の危機を感じる。


「ガイナール…無茶はしないで…」


ガイナールの腕を斬り落とそうとする男に、ティアはダガーでの攻撃を仕掛ける。

ガイナールとの戦闘の虚をつき、さらに死角からの両手のダガーでの二点同時攻撃。

だがしかし、まるで来ることが分かっていたかのようにその攻撃をかわす。


「まだ…」


ティアの攻撃をかわした男に、ティアの分身が襲い掛かる。


「へぇ、こんな魔法もあるのか」


死角からのふいうちに続き、分身を使った多重攻撃。

が、しかしこれも男には届かない。


「こいつは分身ってことでいいんだな?」


つぶやくと同時に、回避で空中にあった体をひねり体を回転させる。

一周目でティアの分身のダガーをはじき、二周目で分身を切り裂き消滅させる。

そのまま着地。再び3人の間に距離ができた。


「ティア、これはちょいと本気を出さないとやばそうだ」

「最初から本気でやってよね…」


ガイナールは、再び男に突撃する。

狙いは一発目の拳をかわされてからの足払い。


「すました顔しやがって…!!」


超高速で繰り出される拳は、再び難なくかわされる。


「芸がないね、君は」

「余計なお世話だ!」


しかしさっきとはここからが違う。

勢いを殺さず、そのまま重心を下半身に。

直線だったエネルギーを無理やり回転エネルギーに変え、左足を軸に右足で相手の足に蹴りを入れる。


「なんだ、器用なこともできるじゃないか」


しかしこの蹴りすらも真上への跳躍でかわされる。

だがしかし、無防備になる空中にはあげることには成功した。


「ティア!!」

「…うん」


空中にいるその男に対して、囲むように円状に並んでいたティア達8人が一斉に地上から跳び襲い掛かる。

さらに木の上に待機していた、4人の分身も攻撃に参加させる。

下から8人、上からは4人のティアによる同時攻撃。


「…月花包殺陣(げっかほうさつじん)

「こりゃすごいな」


しかし、これでも男は慌てない。

本来無防備のはずの空中で、男はつぶやく。


「コード:空跳(くうじょう)発動」


男はつぶやくと同時に、蹴った。

何もないはずの空中を、地を蹴るように自然に。


「なにぃ!?」


ガイナールが驚きの声を上げる。

上昇する男は空中に壁でもあるかのように、真上に駆け上がる。

一瞬で下からの分身を振り切り、さらに上からの分身より高い位置をとる。


「片付けの時間だ」


今や樹木の頂上ほどの高さにいる男は、再び空中を蹴り、今度は真下に加速する。

見失いそうになるほどの早さで、両手の剣を振るい通りすがりに上にいた分身4人を切り裂く。


「コード:衝斬(しょうざん)・散の型!」


4人の分身を切り裂いた男は勢いを少し緩め、真下の8人のティアに向けて剣を振るう。

斬撃はエネルギーの刃として、剣より放出される。

剣から放出されたエネルギーの刃は、瞬間的に分裂し無数の刃と化す。

空中にいるティア達にそれをかわす手段はない。

7人の分身は雨のような斬撃を受け、霧散していく。

ただティア本体を除いて。


「ティア!!」


体に無数の斬撃を受けたティアを、ガイナールは叫びながら受け止める。


「て、てめぇぇぇ!!!!」


致命傷は負っていないことを確認したガイナールは、ティアを地面に寝かせ男に最大加速で突っ込む。


「サラマンド!フルバースト!!炎神砕塵波(えんじんさいじんは)!!」


ガイナールは咆哮とともに、地面を殴りつける。

地面には亀裂が入り、その亀裂は一瞬でガイナールを中心に扇状に広がる。

さらにその亀裂からは、サラマンドより放出された高熱の炎が噴き上がる。


「精霊武器、確かにものすごい力だ」


素直に感嘆しながらしかし冷静に、男は最大限炎をかわし、かわしきれない炎をリーシャのやっていたように刃に魔力をまとわせ切り裂く。

かわし、切り裂き、かわし、切り裂き、2秒と掛からず男は炎の放出元であるガイナールにたどり着く。


「悪く思うなよ、というのは無理な話か」


そのままガイナールを切り裂き、そのまま背後に回りこむ。

一瞬で体の数か所を浅く切り裂かれ、さすがのガイナールもひるむ。


「殺しはしない、安心しろ」


そのまま、さっきのティアのように峰でガイナールの首の後ろを強打し、ガイナールは意識を奪われた。




「これは…精霊!?」


警官の叫びで駆けつけたリーシャは、驚きのあまり声に出して叫ぶ。

そこには専用の器具で動きを奪われ、意識を失っている精霊がいた。


「精霊は極まれに高額で取引されているって噂を聞いたことがあったけど、まさか本当だったなんて…」

「こいつはたまげた…。そりゃあ必死で守るわな」

「でも私たちからすれば必死に保護しなければいけない対象よ」


精霊の力は、精霊武器からもわかるように非常に強力だ。

もし精霊のとの友好関係が崩れれば、戦争になるおそれもある。


「とにかくこの精霊を最優先で安全な場所に運ばないと」


すると、後から来た警官達が合流してきた。

しかし、ガイナール達の姿が見当たらない。


「あの、すいません。うちのチームの2人を知りませんか?」

「あの2人なら最後尾に…あれ?おかしいな。さっきまでいたんだけど…」


リージャとニックが不審がっていると、森の方向から火山が噴火したような爆発音が鳴り響いた。


「これは…ガイナール!?まさかまだ他にも敵が!!」

「リーシャちゃん、精霊も大事だが、あれの処置は警官様方に任せて俺たちはあっちの援護にいったほうがいいんじゃねぇか」

「そうね、今の爆発音。ただ事じゃないかも…」


そのリーシャの不安は、すぐに的中する。

森の中から、ガイナールと同じくらいの背の男がでてくるのを見、リーシャは目を見張った。


「ガイ!ティア!!」


その手に、意識がないと思われる2人があったからだ。


「交渉だ。この2人を返して欲しければ、その倉庫を5分でいい。俺に明け渡せ。交渉が成立しないようなら力づくで解決させてもらう。」

「目的は何!貴方は一体誰!!」


さきほどとガイナールと同じ質問をリーシャは投げかける。


「答える気はない。交渉の答えを聞こう。」

「残念だけどNOよ!そう簡単に窃盗品を渡せるわけがないでしょう」

「そうか、では実力行使にでさせてもらう。」



次にリーシャが目を覚ました時、例の倉庫から精霊のみが持ち去られていた。

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