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第二話

第一話に引き続き連続投稿です。

翌朝、集合場所に行くとそこにはまだリーシャしかいなかった。


「ガイ…にサラもいるのね、おはよ」

「うむ、おはよう」

「他の奴らはまだかよ?」


時間より多少早く来たので、遅刻ということではないだろうが。


「もうすぐ来るんじゃないかしら、ほら噂をすれば」


リーシャが指をさした方向を見ると、そこには背の高い、長い金髪の男がいた。


「よぉ、お二人さんとも早いな」

「おはよ、ニック」

「おはようさん、あとはティアちゃんだけか」

「まさかまた動物の本能がとか言って寝てるんじゃないでしょうね…」


最後のメンバーの名前はティア。

彼女は、猫の獣人だったりする。

この世界には、普通の人間と比べると当然少ないが、獣人という人種が存在する。

昔は人種差別などがあったらしいが、今は特に差別もなく社会に溶け込んでいる。


「…リーシャは失礼ね、そんなに私はぐうたらじゃない」

「うわっ!ティア、来てたなら声をかけてくれればいいのに」


猫の耳と猫の尻尾を持ち、黒髪でショートの少女、ティアは眠たそうな半開きの目でリーシャの後ろにいた。

三人の中でも特に背が小さいのも、猫の獣人であるせいであって決して発育が悪いわけではないといつだが主張していた気がする。


「気づかないティアが悪いのよ…。」

「じゃあ足音を消して集合場所に、来ないでくれる?」


リーシャが困り顔で答える。


「おいおい、揃ったんだろ?さっさと行こうぜ」

「ガイの言うとおりだ、同行する警察の方々を待たせちまっても悪いしな」


ガイナールとニックの言葉を聞き、納得のいかない顔をしながらも手荷物を持つ。


「外にもう車が来てるはずよ、いきましょ」


そうしてギルド"キャッツハウス"の対魔法使い犯罪チームは、車に乗り込んだ。




「最初はティアに偵察に行ってもらうわ。ばれちゃ意味がないから最低限でいいわ、警察側が調べてくれた資料もあるしね」

「いちいち偵察なんてすんのかよ、さっさと乗り込んでブッ飛ばせば終わりだろうが」

「ガイは毎度のことだが乱暴だな。そんなことだからガールフレンドの1人もできねぇんだぞ?」

「ニック、もう任務は始まってるのよ。そういう話は仕事が終わってからにして。そしてガイ、万が一ということをできる限りなくすため…って毎回言ってるでしょ?」


茶々を入れるニックを鎮め、反発的なガイナールを説得する。

いつも任務開始前はこんな調子だ。


「基本に忠実で結構なこった。わぁったよ、さっさと終わらせろよティア」

「…うん。ガイナールは前みたいに暴れすぎて建物崩したりしないでね…」

「あれは…結局けが人もでなかったしいいじゃねぇか。建物崩壊ぐらいで怪我するようなやつぁこんなかにはいねぇだろ」


建物崩壊ぐらいで、そんなことは言えるのはある程度の実力を持った魔法使いだけだが、それほどの差が一般人との間にはある。


「私たちの中にはいなくても、警察の中にはいっぱいいるのよ。少しは気を付けてよね」

「やたらめったら壊されるとおれたちの給料も減りかねぇしな。頼むぜぇガイナール君」


リーシャに便乗するように、またもニックが茶々を入れる。


「うるせぇな、気をつけりゃいんだろ気をつけりゃ。わかったよ」


ガイナールは誰から見てもわかるとおり、かなり荒い気性をしている。

この3人がガイナールが認める程度の実力者でなかったら、とっくに暴力で解決していただろう。

本来の目的とは異なるが、チームという制度はこんなところでも活躍していた。


「話の続きをするわよ。ティアの偵察後、問題なければそのまま正面から突入。反抗してくる者がいた場合私たち4人で迎撃します。」

「迎撃ねぇ、前みたいにだましうちにあうかもしんないぜ?」


ニックの言うとおり、相手が投降するなら危害は加えないというこちらの要求を逆手にとってだまし討ちをしてきた者たちも過去にいたのだ。


「その時はその時よ。反抗を確認してから迎撃して」

「めんどくせぇな、後手にまわるのは気に食わねぇよ」

「そうはいってもしょうがないでしょ、私たちは正義の見方として来ているのよ。こっちから先に手を出したら組織としてまずいわ、それだけはやめてよね。」

「無駄な暴力はダメよ…」

「お前がそれを言うのかよ、嫌なことがあればすぐナイフを持ち出すくせに…」


ガイナールが言い終わるかいい終わらないかのうちに、ティアの手にいつの間にか握られていたナイフがガイナールの首元にあてられる。


「ガイナール、余計なことは言わないの」

「おいおいリーシャ、これは注意しなくていいのかよ」

「ガイにしかやんないしいいんじゃない?ガイが言うこと聞かないことが多いから悪いのよ、でもティア。今は任務中よ」

「うん…やめる…」


リーシャはティアには、緩いところがある。

いつだか猫好きだと言っていたので、そのせいかもしれない。


「良かったな、ガイ。お前だけにしか見せない特別な行為だ。もしかしたらティアちゃんはガイに気があるのかもしれねぇぞ?」

「それならありえねぇな。なんせ俺以外にももう1人ティアがナイフを突きつける相手がいるじゃねぇか」


ガイナールが言ってる時には、すでにニックの首にナイフを当て半目で睨むティアがいた。


「冗談じゃねぇか、悪かったよ。ティアちゃん!」

少し焦ったようにニックが言う。

ちなみに最初はガイの言っていた通り、だれかれ構わずナイフを持ち出していたティアだが、チームに入ってからはリーシャの教育のたまものでこの二人以外にはむやみにナイフを取り出したりはしないようになった。


「ほらほら、遊んでないで。着いたみたいよ。」




車は深い森の前でとまっていた。

近くにパトカーも何台かある。

車から降りると、警官の1人が近づいてきた。


「今回指揮をとらせていただくダリルです。今回はよろしくお願いします。最終打ち合わせがありますのでよろしいですか?」

「リーシャちゃん。警官様がお呼びだぜ」

「たまにはあなたが行ってくれてもいいのよ?」


そういいながらリーシャは警官と話しながら、最終打ち合わせに向かう。


「あんなこと言って俺たちにはどうせ行かせてくれないんだぜ?」

「なんだニック。お前ああいう話し合いとか好きなタイプだっけか?」

「いんや?もちろんめんどくさい。お前は当然嫌だろうしティアちゃんに打ち合わせなんてできないだろうし、結局リーシャちゃんが行くことは決まっているんだがな」

「…ニック。それはどういう意味…?」


言いながらナイフを取り出そうとするティアを、ニックが必死になだめる。

そんな光景を適当に流し見ていると、リーシャが戻ってきた。


「任務内容にとくに変更はなかったわ、改めて報告することも特になし。すぐにでも出発するわよ」

「やっとかよ、おらさっさと行こうぜ」


先頭に道案内役の警官が2人、その後ろに4人がつき、さらにその後ろに残りの警官がつく形で森を進む。


「わざわざこんな森奥に建てるたぁ迷惑極まりねぇな」

「ほんとよ、服も汚れちゃうし虫とかもいそうだし…。街中にも隠せる場所なんてあるでしょうに」


ガイナールとリーシャの愚痴に、警官が答える。


「でも確かにこういう辺境の地に構えられると、発見が遅くなってしまうことが多いんですがね…」

「しっかりしてくれよ、んでまだつかねぇのか?」

「そうですね、この辺でとまっておきましょうか」


警官の指示で全体が動きを止める。


「ここからもう少しまっすぐ行くと建物が見えるはずです。偵察の方、お願いできますか?」

「いってくるね…」


警官に返事をするでもなく、ティアは小走りで進んでいく。




待つこと5分ほど、前の草むらが揺れ1匹の黒猫が飛び出してきた。

その黒猫は淡く光を放ち、光が収まった時には黒猫がいた場所にティアが立っていた。


「こ、これはいったい…?」

警官の1人が驚きの声を上げる。


「ティアちゃんは獣人なんで、猫の姿になることもできるんですよ」


ニックの説明通り、獣人自体が少ないので知らない者も多いが、獣人は獣の姿になることができる。

獣の姿の時は一定の魔力を消費するのだが、ティアの場合猫になっていたほうが偵察がしやすい。


「特に変わったことはなかったよ…あんまりジロジロ見ると見つかっちゃうかもだからちょっとしか見てきてないけど」

「ありがと、ティア。じゃあよさそうだし行きますかね」


リーシャの言葉を聞き、警官2人が立ち上がる。

戦闘がおこるだろうということで2人以外は、ここで待機してもらうようにリーシャが事前に言ってあったのだ。

今度は隠れることもなく、正面から建物に向かう。

それは一見すると、倉庫のような建物だった。

ガシャーンと大きな音を立て、扉が開く。


「警察とギルドの者です!これより取り調べを行います!反抗がなければ手は出しません!全員その場で手を挙げて動かないでください!!」


リーシャが、いつもどおりのセリフを叫ぶ。

が、予想通り指示に従う者はいない。


「ちっ、もう嗅ぎつけてきやがった。お前ら仕事だぁ!働いてこい!!」


荷を整理していた1人が叫ぶと、リーシャの足元に魔法陣が出現する。


「ガイ!ニック!警察の方を!!」


リーシャが指示を出した時にはすでに、2人は警官を抱え後方に回避していた。

それを確認し、リーシャも後方に跳ぶ。

戦闘になった時に、建物内の荷を傷つけられることを嫌って事前に用意していたのだろう。

4人とも建物外に回避し終わった直後、魔法陣があった場所に小範囲の、だが威力の高い爆発が起きる。

煙が晴れると、建物の前に10人ほどの魔法使いが立っていた。


「ちっ予想通り10人かよ、んでここは通しませんってか?雑魚どもはさっさと…どぉけやぁぁ!!」


ガイナールが待ちわびていたとばかりに、飛び込む。


「サラ!ようやくの戦闘だぁ!でてきやがれぇ!!」

「人使いが荒いの、我が主。精霊武器サラマンド、参る!」


サラマンドの言葉と同時に、ガイナールは装甲を装着。

敵の中央に炎を引き連れ、まっすぐ突っ込む。


「精霊武器!?」

「ひるむな!今や前ほどの力はない、数でつぶせ!!」

「私も侮られたものだの。主と私の力を見せてやるがよい」

「たっりめぇだぁぁ!!」


爆発的な速度での突撃。

しかし前回の強盗ほどの初心者ではないようで、全員が左右に散開。突進をかわす。


「まったく毎度毎度すぐ突っ込みやがって、お前のと違って俺達の武器はそんな便利に呼び出せねぇんだぞ」


やれやれとニックは腰にある四角い金属質のものを掴む。


「魔法武器展開!」


ニックの言葉に合わせ、それは軽く発光する。

収まった時には、ニックの背より少し短いくらいのスナイパーライフルに変化していた。

隣ではリーシャが派手な装飾の施された槍を、ティアは逆手持ちの武骨なダガーを両手に展開していた。


「おらぁ!てめぇからだ!!」


ガイナールの一番近くに着地しようとしていた男のもとに、その男が着地する前に超加速で接近する。


「なっ!?速い!!」

「もってけぇぇ!!火弾拳!!」


男は反射的に魔力障壁を展開させる、がその拳は障壁などなかったかのようにその男を吹き飛ばす。


「おい!こいつ想像以上にやべぇぞ!!」

「全員でまずはそいつをつぶせぇ!」


誰かの指示で、男たちの目標はガイナール1人に集まった。


「まぁ仕事はしっかりしてくれるからいいんだけどもよ」


男たちの視界から完全に外れたニックは、木の枝に飛び移る。


「さぁて俺も仕事をしねぇと…な!」


打ち出された弾は、普通の弾丸ではない。

実弾ではなく魔弾。そもそもこの世界に火薬のようなものは開発されておらず、銃などはすべて魔力がなければ扱えない。

エネルギー体のその弾は、吸い込まれるように1人の男の頭部に直撃する。


「死なねぇ程度に抑えてあるから安心しな」

「くそっ!今度は何だ!!」


視覚外からの狙撃に倒れる仲間を見て、明らかに動転する男たち。


「ガイじゃないけどほんとにこれ、私たちじゃなくてよかったわね。全然戦い慣れしてないじゃない」


飽きれたように言いながら、リーシャは戦況を見回す。


「ガイとニックだけでもどうにかなりそうね、私はここで不測の事態に備えるかな、ティアも私と一緒に…あれ?ティア?」


さっきまで、リーシャの隣にいたティアがいない。

視線を前に戻すと、ティアはそこにいた。

男たちの後ろに、そう男"たち"の後ろにだ。

残りの8人の男たち全員の真後ろに、それぞれ合計8人のティアがいた。


「弱い子は嫌いよ…」


8人のティアは同時に、ダガーの峰で首の後ろを強打し、男たちの意識を奪う。


「おぉいティア!何すんだ!!せっかくこんなとこまで来てこれだけの戦闘なんて俺はごめんだぜ!!」

「弱いものいじめはよくないよ…。私は後ろの警察の人たちに報告してくるね…。」

「なんだなんだ、ティアちゃん1人でも良かったじゃないか。こりゃ無駄働きだな、いや給料はもらえるから無駄働きではねぇか」


分身を解き、1人に戻ったティアは、さっさと後方へ行ってしまった。

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